弦楽器

2010年07月04日

バイオリン

さあ、弦楽器だ。
弦楽器は、曲全体の中で9割方演奏してます。まさにオーケストラの中心です。
打ち込みだと、「Strings」なんて音色でまとめてやっちゃうことも多いかとは思うんですが。
最近のサンプラー音源だと、「バイオリン」「ビオラ」「チェロ」「コントラバス」と分かれてるものがほとんどですよね。
実際のオーケストラでは、「第1バイオリン」「第2バイオリン」「ビオラ」「チェロ」「コントラバス」の5グループがあります。
5パートあるんだなってことを考えながらやると、「オーケストラ度」も格段にアップです。

じゃあ、まずはバイオリンだ。
オーケストラの中心である弦楽器の、そのまた中心なのがこのバイオリンですな。画像はこちら
メロディーを演奏する機会も一番多い。
オーケストラの場合、十数人で「第1バイオリン」「第2バイオリン」という集団をなすわけです。
なぜなら、バイオリン1台ではボリューム不足だからだ。
木管や金管、打楽器と対等にわたりあうためには、十何人も集まらないとパワーが足りないのです。
往々にして、バイオリン2は、バイオリン1より人数は若干少ないです。

バイオリン1台の音色はこんな感じ。







メゾフォルテ(上行) -> ピアノ(下行) -> スタッカート(or マルカート) -> ピチカート

という順番で各奏法を収録しております。
ちなみに、スタッカートというのは音を短く演奏することで、マルカートというのは、スタッカートを更にはっきりくっきり演奏することです。
この辺は、はっきり区別しようがないところがありますんでね。orと書きました。
ピチカートってのは、指ではじく奏法ですよ。


14人集まったバイオリンセクションの音色は







メゾフォルテ(上行) -> ピアノ(下行) -> スタッカート(or マルカート) -> トレモロ -> ピチカート

という順番で各奏法を収録しております。
トレモロってのは、ホラー映画の劇伴なんかでよく耳にしますわね。
小刻みに震えた音を出すことですよ。
時と場合によって、このバイオリン1ないしバイオリン2を更に分割することもありまして、それを「Divisi(ディヴィジ)」と申します。
人数が減りますんで、当然ボリュームは落ちます。


音域は、まあ大体このあたり。

violin

サウンドの例でも、高い音はいかにもキツそうですな。
あまりに高い音っていうのは、演奏者の腕前にもよるので、このくらいの音域で収めておくのがよろしいんじゃないでしょうかね。

余談ですけど、バイオリンは値段が高いことでも有名であります。
ストラディヴァリウスなんて楽器は、高いものは4億円だってさ。


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ビオラ

一言で言えば、ちょっとでかいバイオリンってとこですよ。
画像はこちらですけど、パッと見、バイオリンと違いがわからないくらい。
形はほぼ同じで、一回りバイオリンよりでかい。でかいので、音域はバイオリンよりもちょっと下です。体の大きい人の声が低いのと同じ原理です。
あれですよ、皇太子さまが弾くことで有名な楽器ですよ。

ビオラ1台の音色はこちら。







10人集まったビオラセクションの音色はこちら。







バイオリンほど尖った音でなく、チェロほど押しの強くない音ですわね。
高い方の音は、ちょっとくぐもった感じにも聞こえます。
控えめな30代の貴婦人といった趣です。
ストリングス軍団の中で、主役を張ることはなかなかないんですけど、3歩下がって主役を立てるような懐の深さがありますな。
バイオリンほどとんがっていなくて、優美な印象があります。

音域はこんな感じ。

viola-1

おや。この音部記号は何でしょうな。
ト音記号でもヘ音記号でもない。
こちらは、「ハ音記号」と申しまして、ビオラはこいつで記すことになっておるのです。
5線の3本目(真ん中の線)が、中央の「ド」の音になります。
ト音記号とヘ音記号で記した音域がこちら。

viola-2

ねえ。こう書いてくれればわかりやすいのにね。
ちょうど音域がト音記号とヘ音記号にまたがるんで、ハ音記号を使わないと、しょっちゅう記号を書き直さなきゃいけないんで。
だからハ音記号を使うんですな。


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チェロ

バイオリンがストリングスの生徒会長ならば、このチェロは裏番長のようなもので。
なんせ、弦楽器の中では、最も大きな音が出るのです。
でもって、メロディーも伴奏もできるし、音域も広いし。おまけに音色はエロティックだし。
何より、弾いている姿がカッコイイっすよ。バイオリンやビオラと違って、股の間に挟んで、座りながら弾きますですな。
詳しくはコチラ
かつてサントリーのCMでリベルタンゴを弾いていたヨー・ヨー・マさん、実にステキでしたよねえ。
でかくて持ち運ぶのが大変だけど、あのカッコ良さのためならそのくらいへっちゃらさ。
値段も高いけどもへっちゃらさ。

オケの中では、比較的ベースラインを奏でることが多いです。
でも、高い音をエモーショナルに奏でると、もう聴いている方は涙を禁じ得ません。
なんでも、人間の肉声に一番近い楽器が、テナーサックスとこのチェロらしいですよ。

ということで、チェロ1台の音色がこちら。







10人集まったチェロセクションの音色はこちら。







音域が広いですねえ。

cello-1

また、わかりづらいハ音記号が出てきた。
今度のハ音記号は、ちょっと上の方に書かれておりますな。
これは、上から2本目の線が、中央の「ド」の音になります。
ハ音記号の右側「3」みたいなってる部分の真ん中が、中央の「ド」になるのですよ。
ト音記号とヘ音記号で書くと、こう。

cello-2



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コントラバス

ダブルベースともいいます。バイオリンやチェロなんかとは、若干形も違いますねえ。
弦楽器の中では最も低い音がでます。ジャズで言うところの、ウッドベースですな。
あまりにでかい楽器なので、立って弾きます。飛行機に乗るときは、楽器のために座席を一人分多く取らなきゃいけません。

コントラバスのピッチカート(弦を指ではじく奏法)は、ボゥンという実に豊かな響きを持っています。
打楽器を使うほどじゃないけど、曲にキレを与えたいときなんかに、コントラバスのピチカートを使うといいですよ。
バロックっぽい曲なんかだと、殊によい効果をもたらします。
ベースラインを弾くときは、チェロのオクターブ下を弾いて、低音を豊かにすることが多いですよ。

コントラバス1台の音はこんな。







でもって、9人のコントラバスセクションの音はこちら。







コントラバスの最低音は、MIDIで言うところの「E0」なんですけど、時と場合によっては、低い弦を1本追加した楽器を使ったり、チューニングを下げたりして、「C0」くらいの音を使うこともあります。
でもまあ、それは特殊な場合ですわな。
あんまり低い音になると、音程感が判然としませんし。
一般的な音域はこちら。

contrabass

ちなみに、コントラバスは楽譜に書くとき、実際の音よりも1オクターブ高く書く慣習があります。
(上の楽譜は、実音で記しています)
なぜなら、音が低すぎて、実音で記譜すると、実に読みづらい楽譜になっちゃうからだ。
実際にスコアを見たとき、なんだチェロと同じ音を弾いてんだなーなんて思わないでおくんなさい。
実際は、1オクターブ下の音が鳴っておるのです。



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ハープ

こいつも弦楽器に入るんだな。
なぜなら弦が張ってあるからだ。
同じ弦が張ってある楽器でも、ピアノは弦楽器でなく「打楽器」に入ります。
なぜなら、鍵盤を叩くからだ。
それはともかく。

ハープってのは、イメージ通りの形の楽器ですな。
音域は実に広いです。
こんな感じ。

harp


でも、非常に大きな制約があります。
ハープには7つのペダルがありまして、それぞれが「ドレミファソラシ」の各音に対応しています。
で、ペダルをいじることで、それぞれの音を半音上げたり下げたりするわけです。
ペダルは足で操作します。

例えば、ハ長調(C-major)の曲を演奏するときであれば、全てのペダルを「フラット」の位置にセットします。
ホ長調(E-major)の曲の時は、ド・レ・ファ・ソの音を「シャープ」の位置にセットするわけです。
従いまして、今までハ長調で演奏していたのを、瞬時にホ長調にしろと言われても、ペダルをガコガコとセットする時間が必要になるっていうわけなのですよ。
あるいは、「ド-ド#-レ-レ#-ミ-ファ-ファ#-ソ」みたいな半音階は、演奏できないってことなのです。

打ち込みであっても、半音階なんかを使っちゃうと、あーこいつハープのこと知らねえなーなんて思われちゃうわけですな。
イレギュラーな臨時記号が出てくるような曲の時は、ペダルを操作する数秒間を空けておけば、その音のペダルだけいじって臨時記号を表現することは可能です。

じゃあ、音を聴いてみましょうかね。







実に優雅ですね。
でも、多くの人がイメージするハープの音って、こういう感じじゃないでしょうか。







こういうのをグリッサンドと申します。
指を滑らせることでバーッと弾いたり、あるいは専用の爪で弾いたりします。

ハープは結構、使いでがありまして。
グリッサンドで盛り上げるのはもちろん、アルペジオで伴奏したり、メロディーを弾いたりと、いろいろ使えます。
ちなみに、実際のハープでは、右手左手どっちを使うかは奏者が勝手に決めます。
ピアノは楽譜に右手左手指示されてますけども。

優雅な音なんで、たおやかな女性をイメージしたりしますけども。
実際、女性の奏者が多いですけども。
弦がかなりきつく張ってありますんで、弾くにはそれなりにチカラがいりますよ。
重さも30キロくらいありますし。
値段もグランドピアノくらいします。安いグランドピアノよりも高いです。



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弦楽器の組み合わせ・オーケストレーション

弦楽器の場合、「弦楽器」っていう大きなひとつの楽器を扱っているような感じで考えるといいっすよ。
金管のときと同じように、各楽器そんなに音色の差はないので。
木管や金管の時と違うのは、交叉させたり包み込んだりオーバーラップさせたりっていうことは、あんまり考えないことです。
トランペットが3人いたら、3者それぞれ別の音を吹いたりってことをやることも多いんだけど、バイオリンが12人いるからってそれぞれに別の音を割り当てたりはしないわけよ。
なので、「バイオリン1」「バイオリン2」「ビオラ」「チェロ」「コントラバス」っていう5パートで考えますよ。

どの楽器グループでも同じことですけども。
みんなで同じ要素(パッドとかフィルとか)を演奏してもいいし、それぞれがバラバラなことをやってもいいし。
2分割してもいいし3分割してもいいわけですよ。
大事なのはバランスですわな。

例題は、木管金管のときと同じベートーベンのピアノソナタ「悲愴」第2楽章の冒頭部分。
ちょっとね、ビオラをハ音記号で書くとわかりづらいので、ここはヘ音記号で。
あと、コントラバスは実音で書いています。
楽譜が見づらかったら、クリックででかくなるんで。

じゃ、例1。

st_ens1







この例では、バイオリン1がメロディーで、残りは和音を奏でているだけ。
コントラバスは、弓で弾くとちょっと重たすぎる感じになっちゃうので、ここではピチカートで。
まあ、これでも結構なりたってますわよね。
弦の場合、こうやってするーんと和音を弾くだけっていう曲も結構あるのですよ。

次の例。

st_ens2







こちらは、バイオリン2とビオラをセットにしまして、うにょうにょと動かしています。
前にお話ししました「前・中・後」でいいますと、このうにょうにょは「中」に当たりますわな。
ここにこういったアルペジオを持ってくることで、なんとなく動きが感じられますな。

もいっちょ。
ビオラの音が高めなので、今度はト音記号にしてみました。
こうやってしょっちゅう記号を入れ替えなくていいように、ハ音記号があるわけなんですけども。

st_ens3







ハープをちょいと足してみましたよ。
で、メインのメロディーはチェロです。
今度は、コントラバスは弓で弾いています。
バイオリン2とビオラは今回もタッグを組んでいまして、前半はトレモロ奏法ですな。
バイオリン1は、高い音をひっそりとずっと弾いています。
和音がなんであるかに関わらず、しばらく高いEフラットの音を弾いていまして、こういうのをペダル・ポイントというのでしたな。
いろんなものをてんこ盛りに盛り込んでアレンジしてみましたよ。

弦楽器だけの曲を参考に挙げておきます。正直、打ち込むのと楽譜を作るのが面倒だったんでして。
マーラー交響曲第五番の第四楽章
コチラのページで聴けます。
(「Mahler」でページ内を検索すると早いっす。「Symphony No.5 - IV ; Adagietto」というところをクリックすれば聴けますんで。コロンビア大学のサイトなので、違法なものじゃないっすよ)
楽譜もコチラにあります。
弦とハープだけで、実に美しい曲になっておるわけです。
あまりに美しいので、映画「ヴェニスに死す」でテーマ曲になっておりますな。

機会がありましたらお聴きいただきたいのが、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズというイギリスの作曲家の「トマス・タリスの主題による幻想曲」という曲。
弦だけのオーケストラを2組使って演奏される曲でして、これもまあ美しい曲ですよ。
このウィリアムズさん、まだ亡くなってそんなに時間が経っていないので、勝手に楽譜を作ってアップしちゃうわけにいかないので、そこはスマンってことで。
映画でもたびたび使われるので、お聴きになったことがあるやもしれません。

というわけで。
弦楽器はひとまずオシマイ。


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