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【悪質タックル問題】日大アメフット“悪しき伝統”


関学大QBの背後からレイトタックルを決める日大選手(関西学院大学アメリカンフットボール部提供)

 6日に行われたアメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦(東京・アミノバイタルフィールド)で、日大の守備選手が関学大選手に悪質なタックルを仕掛け、全治3週間のケガなどを負わせた問題が大きな波紋を広げている。問題の日大選手は対外試合出場禁止処分が下され、日大は予定されていた3試合が中止となるなど孤立状態。大学アメフット界をけん引する名門でスポーツの範囲を大きく逸脱した行為はなぜ起きたのか。舞台裏を探った。

 問題のプレーはパスを投げ終えて数秒が経過し、無防備となった関学大のクオーターバック(QB)に日大選手が背後から激しくタックル。しかも、プロレスでも“禁じ手”とされるヒザ裏への「スピアー」(タックル)のような形で、公式規則の「(無防備な選手への)ひどいパーソナルファウル」に該当すると判断された。

 ネット上では問題行為の動画が拡散して、批判が集中。悪質プレーを行った選手の名前も広がっている。

 この騒動を受け、関東学生アメリカンフットボール連盟は14日、6月9日に予定されていた日大―東大、同10日の日大―立大戦を中止にすると発表した。すでに中止を決めている今月20日の法大戦に続き、これで3試合中止の異常事態に。3大学から連名で日大との試合中止を求める文書が送られてきたという。

 12日には関学大アメフット部の鳥内秀晃監督らが怒りの会見を開き、日大側に厳重抗議文を送付したことを公表した。日大のチームとしての見解と正式な謝罪を求めている。16日を回答期限としているが、日大側は10日にチームのホームページ上に短い謝罪文を掲載しているのみで、返答はないままだ。関東学生連盟は10日に日大の当該選手を対外試合出場禁止処分としているが、明確な処分と対応が決まらない状況では他チームへの影響も広がっている。

 この事態に、スポーツ庁の鈴木大地長官(51)も14日の記者会見で「危険な行為で、普通ならレッドカードに値するプレーではないか。なぜああいうプレーが起きたのかを考える必要がある」と述べ、関東学生連盟に事実確認することを明らかにした。

 日大は学生日本一に21度も輝く日本アメフット界きっての強豪。1990~2000年代に低迷したが、昨年12月の甲子園ボウルで関学大を破り、27年ぶりの学生日本一となり見事に復活を遂げた。それほどの名門で「あれはどう見ても暴力」と誰もが目を背けた行為がなぜ起こってしまったのか。その背景には日大アメフット部ならではの“あしき伝統”があったという。 

 日大といえばアメフット界のカリスマ指導者として知られる故篠竹幹夫監督の徹底したスパルタ指導が有名。“サムライスピリット”と呼ばれる根性フットボールでチームを鍛え上げた。篠竹監督が亡くなった06年以降は時代に合わなくなった指導法が見直され、低迷期を脱したが、篠竹イズムは指導者や一部の選手に脈々と受け継がれているという。 

 大学アメフット関係者は「選手に『相手を壊しにいけ』とか『刺し違えろ』という指示はよくある。もちろん、ルールを無視してまで『壊せ』という意味ではく、ギリギリまで勝負してこいという意味。日本一になるために選手はそんな言葉を妄信する。プレーに入り込んでトランス状態になった選手が、その指示をはき違えて止まらなくなったのでは」と推測する。篠竹流がアダとなってサムライが辻斬りに走ってしまったということか。

 当該選手は相手QBに悪質なタックルを犯した後もプレーを続行。さらに反則を繰り返し、退場となっている。かつて関東の大学で監督を務めていた人物は「QBへのあの反則一発で普通は選手を下げて試合に出しませんよ。あの後もプレーを続けているということはなんらかの指示があったということ」と指摘。何より、試合後に日大の内田正人監督が語った「選手も必死。あれくらいやっていかないと勝てない」というまるでラフプレーを容認するかのようなコメントが、ベンチから指示があったことを暗に示している。一方で、日大をよく知る関係者からは「内田監督は律義で優しい人。あの人の指示とはとても思えない。コーチではないか」という声も上がっている。

 関東学生連盟は規律委員会を設置し、当該選手と厳重注意処分とした内田監督から聞き取り調査を行い、追加処分を検討する予定。いずれにしても、大学アメフット界の頂点に君臨する日大フェニックスは1940年の創部以来最大の危機に陥っている。

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