山と海に挟まれた「坂の町」神戸。三宮の北野坂やハンター坂など観光客にも名高い坂のほかにも、息をのむような急勾配で人々に愛される坂が幾つもある。インターネット上には、そんな“伝説の坂道”を厳選したサイトがあり、行政も新しい観光資源と捉えてPRを始めた。ブームの兆しもあるきつい坂道の魅力って、いったい-。(上田勇紀)
「#ジェットコースターみたい」。会員制交流サイト(SNS)のインスタグラムでこう紹介される坂道がある。愛徳学園中学・高校(神戸市垂水区歌敷山3)の東側、市道西垂水249号線は「愛徳坂」の愛称で親しまれる。
坂を上りきって南側を向くと、遠く明石海峡が見渡せる。「海の見える風景がネットなどで人気を呼び、最近は区外でも知名度が上がっています」と垂水区役所の担当者。昨年秋には区の魅力発信のポスターに採用し、今年2月には広報誌で愛徳坂の特集を組んだ。
市の道路台帳平面図によると、愛徳坂の勾配は17・3%。平地で100メートル進むと、17・3メートル高くなる意味だ。8%以上は急な坂に分類されるというが、その2倍以上もきつい市内屈指の坂道。愛徳幼稚園の河内屋幸子園長(71)は「学園の子どもたちは毎日上がるので、体力がつきますよ」とほほ笑む。
愛徳坂と並び、「神戸一の急坂」との呼び声も高いのが同市灘区の「長峰坂」だ。高台にある長峰中学校(同市灘区長峰台2)付近まで約600メートル続く。「神戸市内でも特に坂が急な学校として有名です」と同校の西川千津教頭(52)。
灘区役所はこの長峰坂を区のホームページで紹介。公募で区内の観光名所や歴史資源を選んだ「灘百選」に唯一、坂道として選出されている。最高勾配は愛徳坂をしのぐ18・5%。ハイキングでこの坂を通る人も多く、坂の上からは海沿いの市街地が一望できる。
愛称などは特にないようだが、地元住民が「こんな急な坂はほかに知らない」と評する坂もある。同市垂水区塩屋町3の「しおやこども園」沿いの坂で、勾配は20・2%。上る負担が和らぐためか、まっすぐでなくジグザグに上っていく人の姿がしばしば見られる。
さらに、明治末期~大正時代の地図にも掲載されている山陽電鉄山陽須磨駅(同市須磨区)近くの「きつね坂」。名前の由来は謎だが、道路台帳の勾配を見て驚いた。坂の途中にあった数字は何と42・6%。市の担当者が「何かの間違いでは…」と目をこするほどの急勾配だった。
市によると、道路台帳に全ての坂の勾配が記されているわけではなく、統計も取っていないため、どの坂が一番急なのかは不明という。神戸ナンバーワンの急坂は、まだまだ地域に眠っているのかもしれない。
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