就活生が後悔する? 「成績重視」の逆回転
お悩み解決!就活探偵団2019

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コラム(ビジネス)
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2018/5/16 6:30
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 企業が新卒採用の選考時に、学生の成績や履修情報を評価するケースが増えている。学生の本分はそもそも学業のはずだが、これまではコミュニケーション能力やバイタリティーなど「人物本位」の評価が主流だった。背景には、学生の成績や履修情報を取りまとめる企業向けサービスの普及もありそうだ。「成績が良ければ即採用」――そんな動きすらある。

イラスト=強矢さつき

イラスト=強矢さつき

 「もっと真面目に勉強しておけばよかった」。就職活動中の明治大学4年の女子学生は不安げだ。志望する総合商社や証券会社から、3年修了時までの成績と履修科目の提出を求められたためだ。売り手市場とはいえ、大手企業の競争率は高い。「成績が合否を左右するのでは――」。そんな危機感にかられている。

 実際、成績重視を掲げる企業はここに来て増えているようだ。ではそうした企業は、学生の成績をどうチェックし、どんなふうに活用しているのか。そもそもなぜそんな動きが出始めたのか。

就活探偵団2019

就活探偵団は就活生の悩みを探偵(日経記者)が突撃取材で解決する連載企画。新就活生に必要な心構えや、就活準備に役立つ情報を掲載します。

 探偵(記者)の問いにまず答えてくれたのは、三井住友海上火災保険の採用担当者だ。同社はすでに3年前から学生の成績と履修科目の情報を、評価に採り入れている。

 「緊張して第一印象で損しがちな人も、時間をかけて取り組んできた学業であれば話しやすくなるから」という。中でも30分ほど時間をかける3次面接では、面接官が必ず学業について掘り下げて聞く。学生の持ち味をバランス良く評価する狙いがあるようだ。

 その三井住友海上が活用するのが、大学成績センター(東京・千代田)による成績と履修科目のデータベースだ。

 大学成績センターは、名前だけ聞くと公的機関のようだが、リクルート出身の辻太一朗代表が立ち上げたスタートアップだ。14年にサービスを開始。学生から成績と履修科目の登録を募り、そのデータを学生の同意を得た上で、企業に有償で提供している。

大学で何をどう学んだかを、企業が選考時の評価に活用する(写真は履修履歴表のイメージ)

大学で何をどう学んだかを、企業が選考時の評価に活用する(写真は履修履歴表のイメージ)

 学生に成績表を提出させる企業はこれまでもあったが、集計や管理が煩雑なこともあり、これまでは「ちゃんと卒業できそうかどうかを内定時に慣例的に確認する程度」(大手企業の採用担当者)。十分に活用されていたとは言い難い。

 大学成績センターのデータベースは、学生の申告を基に講義名や担当教授などを登録。データの蓄積によって「良い成績が取りやすい講義」などの傾向も見えるため、成績の客観的な評価にもつながるという。データ提供先の企業数は、就活が佳境を迎えている2019年卒の学生向けで約350社と、18年卒に比べて1.5倍に増えた。また、登録している学生数は19年卒で約16万人で、18年卒の3割増だ。

■学業を語らせる

 そもそも文系の事務職の場合、選考時には専攻科目すら話題にされないことが多い。その分、面接やグループディスカッションでの振る舞いを通じ、学生の「人となり」を見て合否を決めるやり方が一般的だった。

 辻代表はそうした風潮に疑問を感じ、大学成績センターのサービスを始めた。「学業は本来もっと時間を費やして語られるべきなのに、そんな学生は少数派で、学業を評価できる面接官もいなかった」と話す。

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