凄腕の女地上げ師(86)チンカス・ジャーナル編・4
山岡が福村何とかという人の記事を書き続けている時、あるフリーライターが新橋に尋ねてきて、「山岡のこの記事は止まりませんですかね?」という。続けて「記事が止まれば5千万円払うというんですよ」という。
それで「それは福村から直接頼まれたの?」と聞き返すと、「いや直接ではないですけど、知り合いが頼まれたらしいんですよ」という話だった。
直接という話だったら、いっちょ噛みする気持ちもあったが、与太話の可能性もあったので、聞き流した。おそらく、この話は山岡は知らないはずである。
書き屋が知らないところで、嘘か真かこのような話が独り歩きすることは、よくあることである。マキりんが誰に頼んだのか、或いは誰がマキりんに脅迫まがいに尋ねて行ったのか、マキりんが全て山岡を通じて喋ればいい。
もしマキりんから金を貰って、「敬天新聞を押さえる」とか、「敬天記事を消してやる」とか、言って、動いた者がいたら、山岡が実名で書けばいいじゃないか?
俺の所に尋ねてきた人もいたよ、実際。電話で聞いてきた人もいた。丁重に断った。その時金が動いたのであって、金に見合った働きをしてないと思えば、その人間を警察に訴えればいいと思うよ。
弁護士以外の人に頼んでいいのか、そういう金が詐欺とか背任とかの罪になるのかは、わからないが、役所とか公的な所に相談する価値はあると思うよ。
断っておくが、俺はマキりんの側から尋ねられた人からは1円の金も貰ってないよ。マキりんから預かった金を全額ネコババしたのであれば、大津洋三郎級だね。経費として、幾らか減ったのは仕方がないと思うけどね。その人も一応努力はしただろうから。
マキリンも本当は山岡に相談する前に斎藤弁護士に相談した方がよかった話かもね。山岡が介入してくれたお陰で、記事が書きやすくなった。話題が膨らんで、より読者に注目されることになったからね。是非ともマキリン側から見た目で、記事を継続してくれ。
ただ自分だけ取材した取材したとか言うなよ。俺もしてる所はしてるんだよ。
ところで、冒頭の福村氏の話であるが、医療関係の学校法人の仕事か何かをやってて、その金を私的に流用したとか、いう話じゃなかったかな?
結論から言うと、その件で福村氏は逮捕された。山岡の勝ちである。ところが福村氏は徹底否認したために、一年以上拘留されたのであるが、裁判で結果は無罪だった。山岡の負けである。
俺はあの記事では、内容的には山岡記事に分があると思っていた。福村氏は民事で山岡に損害賠償を訴えたら、それなりの額が出たろうが、ブーメランを考え大人の対応をしたのではないか。
山岡よ、記事というのは、是々非々で書かなきゃ駄目だよ。聞いたから何でも真実ではないんだよ。その人(情報提供者)が嘘を言ってる場合もある。だから俺は最後に必ず、「事実と違っていたら、貴方を名指しで叩きますよ」と言うんだよ。
多少の誇張は仕方がない。情報提供者は被害者的立場の人が多いわけだから。ただ故意に我々を利用しようとする人もいるのは事実だからな。ただ俺の場合、話を聞いて7割本当なら、それは真実として報道する価値はあると考えているよ。お互いに言い分はあるから、10割の真実と言うのは、滅多にあるものではないよ。交通事故の賠償がいい例である。