ドイツが徴兵制をやめたのは冷戦が終結したからであって海外派兵をやるからではない

徴兵制とは軍事的には、防衛計画上必要な戦力を志願制だけで保持できない場合に必要になる制度です。

以前、「冷戦末期から兵員数を半分に減らした上で徴兵制を廃止したドイツと一貫して兵員数を変えていない日本では事情が異なる」で書いたように、1990年時点で52万人の軍隊を抱えていたドイツは、18.5万人まで兵員数を削減しました。
冷戦が終結したことにより防衛上、大兵力が不要となって徴兵制が廃止になったわけです。
同時期にドイツは海外派兵を行うようになりましたが、冷戦終結に伴う兵員数削減により、志願制でも賄えるようになったからにすぎません。

翻って、日本の場合は1990年以前から一貫して22〜25万人の兵員数で推移しています。この上、海外派兵の任務が追加された場合に自衛隊は必要になる兵員数を志願制で賄えるのかどうか、一考の余地があります。

ドイツが海外派兵を積極的に行うようになって以降に徴兵制を廃止している、とのみ主張するような論者*1は、読者に誤った因果関係を植えつける意図があるか、論者自身が誤った因果関係を信じているかのいずれかでしょうね。

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  • den

    >日本の場合は1990年以前から一貫して22〜25万人の兵員数で推移しています。
    >この上、海外派兵の任務が追加された場合に自衛隊は必要になる兵員数を志願制で賄えるのかどうか、
    >一考の余地があります。

    海外派兵に必要な兵力数の見積もりがないとか、
    現状の自衛隊への求人倍率は4〜10倍だとか、
    派兵した場合の求人率の落ち込み具合がどれくらいになるのかの想定もないとか、
    確かに一考の余地はあると思います。

  • Teru

    >現状の自衛隊への求人倍率は4〜10倍だとか

    コメント書く前に「記事一覧」クリックして、
    「志願」で検索してみると、既に、ここの筆者が検討済みの話を書かなくても済みますよ。

    自衛隊は志願者が多いので徴兵制は不要と主張する論者が言及しないこと
    http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140718/1405705378

    >幹部を目指す応募者は確かに多く、軒並み10倍以上の倍率ですが、
    >一線で働く下士官・兵卒レベルを希望する人は倍率10倍未満で
    >特に兵卒レベルである自衛官候補生を希望する人は3.4万人しかおらず倍率は3.4倍程度です。

    >自衛官候補生の倍率3.4倍は、併願を考慮すると実態としてはもう少し低いでしょう。

    既に、待遇が低く(いわゆる契約社員扱い)、
    国策の影響を受けやすい(入隊時2-3年の契約で、雇い止めされるだけの)立場になるほど、
    志願率が下がるという傾向は読み取れるのではないかと。

  • den

    >Teruさん
    >「志願」で検索してみると、既に、ここの筆者が検討済みの話を書かなくても済みますよ。

    派兵兵力の見積もりが無く、どんな部隊の派遣を想定しているのかわかりませんので、
    >自衛官候補生の倍率3.4倍は、併願を考慮すると実態としてはもう少し低いでしょう。
    という結論はあまり意味をなしません。

    後方支援に徹して輸送パイロットや医官の増強を図るということであれば、
    現状の倍率で何の問題もないという判断になりますし、
    現地展開する一般歩兵を展開するということであれば、確かに仰る通り今の倍率では
    きついかもしれません。

    「法律が緩和されても展開できる兵力ないんだったら、
     そもそも大規模な派兵やらないよね?」
    という楽観主義はいけませんかね?