(英エコノミスト誌 2018年5月12日号)
米ニューヨークのトランプ・タワーで、ドナルド・トランプ次期米大統領との会談後に報道陣の取材に応じるソフトバンクグループの孫正義社長(2016年12月6日撮影)。〔AFPBB News〕
成功しても失敗しても、孫正義氏はハイテク投資の世界を変えていく。
今から2年前に、テクノロジーの分野で最も影響力のある人物を挙げるよう専門家に頼んだら、聞き覚えのある名前がいくつか出てきただろう。
アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)氏、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏といったところだ。
今日ならもう1人、名前が挙がるだろう。日本の携帯電話・インターネット会社ソフトバンクを創設した孫正義氏である。
孫氏が立ち上げた巨大な投資ファンド「ビジョン・ファンド」は現在、世界トップクラスの有望な新興企業に次々と出資しており、投資先の業界と他の資金提供者の両方を混乱に陥れている。
このファンドは、孫氏とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の2人が2016年に手を組んだことから生まれた。
一風変わった取り合わせだが、自己主張の強いサルマン皇太子が、サウジアラビア経済を多角化させる試みの一環として孫氏に450億ドルを預けたのだ。
すると、この金額の多さに他の投資家も引き寄せられ、アブダビ首長国やアップルなども資金を出した。ソフトバンクも280億ドルを拠出した結果、孫氏の軍資金は1000億ドルに達している。
これは2016年に世界中のベンチャーキャピタル(VC)が調達した資金の合計640億ドルをはるかに上回り、過去最大のプライベート・エクイティ・ファンドの規模の4倍に相当する。