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アースが生んだ世界のホンダ!

放送告知の時点から荒れに荒れていた、14日にNHKが放送した「プロフェッショナル 仕事の流儀 本田圭佑」。ハリルホジッチ監督交代劇を生んだ「黒幕」として陰謀論を唱える人々は、始まる前から本田△さんとこの番組を敵視し、苛立っていました。「ハリルホジッチ監督解任にいたるまでの舞台裏」を本田△さんが告白するとした番組側の煽りもその苛立ちを加速させる要因でした。それはまるで2時間サスペンスの断崖絶壁のシーンのように、黒幕が真相を告白するものであるかのように。

しかし、フタを開けてみれば、番組内の映像素材は解任前の4月1日時点のインタビューが最後とされており、恒例の「プロフェッショナルとは」の質問もそのインタビューで行なわれていました。その時点での発言内容は「残り1ヶ月アピールする」と4月末のメキシコリーグ閉幕にも時期として符合しており、解任の舞台裏を語れるはずもないものでした。常識的に考えれば「4月1日のインタビュー」で「プロフェッショナルとは」の質問に答えているのですから、そこで番組収録は終わっているはずであり、解任を知ってから収録された映像などないと僕は思います。

それでも「世間の反応を見て最後の落とし方を変えたに違いない」「4月1日のインタビューこそが後付け」「番組の方向性を変えるために、急遽この数日で撮ったんだろ」という疑念を完全に否定することはできません。否定できるとしても収録に関わった当人たちだけですし、当人たちが何を言っても信じやしないでしょうから、きっと本田△さんへの苛立ちというのは永遠に消えることはないのでしょう。そしてこの先、本田△さんや日本代表がどうなったとしても、自分たちサイドの思惑を潰した犯人はアイツだと、敵視と軽蔑はつづくのでしょう。

それでも僕は言いたい。公開された映像たちから読み取れるものは、本田△さんはずっと前からこうだったし、これからもきっとこうなのだろうという、ただそれだけの「おなじみの内容」であったと。大きな夢を見て、それに近づけない自分に苦しみ、もがく。柳に飛びつくカエルのような夢見がちな男が、いつものようにただ自分を貫いているだけでした。それはこれまで、ときに賞賛し、ときに持ち上げてきた、いつもどおりの本田△さんの姿です。

「自分を貫く」ことはひとつの愛すべき姿であるし、そうする自由が誰にだってあると僕は思います。「監督の言うことは絶対論者(日大アメフト部ほか)」とは噛み合わないかもしれませんが、本田△さん…すなわち選手が自分の意見を貫くことは可能であるし、自分を貫いた結果が勝利につながれば評価が上がることもあるでしょう。ましてや本田△さんがそれを行なったのは親善試合。本番で急に「俺の考えは違った」をやり始めたわけではないのです。もしもそれが問題だと思うならば、容赦なく切ればいい。その覚悟は本田△さんにもあったし、過去の代表監督もそうやってチームを作ってきました。それは、相互にプロとしての責任と覚悟を背負った行為です。

本田△は自分を貫いた、監督は切った。

この番組で描かれたものは、本来それで終わる話なのです。

もし本田△さんに陰謀を企てるチカラがあるのなら、この番組で描かれたような話にはならなかったでしょう。「陰謀のチカラ」があれば、もがき、苦しみ、「自分を貫く」賭けに出る必要などないのですから。

ここに陰謀はない。最初からなかったし、やっぱりない。

そう感じられたことで、僕はまたひとつワールドカップへ前向きになることができました。

裏切り者だとか、黒幕だとか、僕は選手たちを……もちろん本田△さんを含めて、そんな目線で見たりはしません。選手はAIではなく人間なのですから意志はあるでしょう。その意志がチームと食い違うこともあるでしょう。たしなめるもヨシ、切るもヨシ。監督にはそれを処理する裁量があります。切られることを覚悟の上で選手が意志を貫くのは、それはそれで選択肢のひとつです。尊重します。それが愚かだと言うのなら、「愚か者」の謗りを一緒に受けましょう。そういう「本田△の生き様」を楽しんできておいて、今になって糾弾することは僕にはできないのです。

ということで、本田△さん新名言集を記録しつつ、荒れに荒れた14日のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」をチェックしていきましょう。


◆ワヤクチャなのはNHKで本田△さんはいつものまんまです!

「取材を始めたのは2月の初め、本田はこのとき過去の人になりつつあった」という語り出しから幕を開けた本田△プロフェッショナル。これまでも幾多の名言を記録してきた面白番組は、時と場合がめっちゃ合わないことによって、粗探しの戦場となっていました。「さすがに今回は何を言ってもウケへんのとちゃうか…」と僕も不安でいっぱいです。

その不安を加速させるように、番組構成はチグハグです。それはある面で仕方のないところ。NHKサイドとしては、今回の意図は「悲劇想定の損切り番組」だったのです。そのことは放送時期からも明らかです。もし本当に本田△さんを信じているならば、放送時期はメンバー発表後のはず。実際4年前に同様に「プロフェッショナル」で本田△さんを採り上げたときは、6月に入ってから2本立てという豪華編成でした。「当時のNHKは本田の代表メンバー入りにフルベットした」のです。

しかし、今回は予備登録メンバーすらハッキリとは明かされていないタイミングでの放送。ここに放送時期を置くというのは、「選ばれない可能性」を多分に考慮しているからであり、「よしんば選ばれたとしても、これ以上採り上げる気はない」という意味です。2011年から密着してきた縁もあり、ほかに採り上げるべき日本代表選手も見当たらないので、「ワールドカップ盛り上げ用プロフェッショナル」の主役には今回も本田△さんを据えましたが、NHKは本田△さんを全然信じてはいないのです。撮りためたVTRが全部オジャンになる前に放出することを念頭に、損切り前提の収録を行なったのです。

だから容赦なく、そういった映像素材が紹介されていきます。2月4日収録だというインタビューでは、メキシコリーグのレベルを勘案せず「都落ち」という言葉をぶつけて、「墜ちた英雄」の言葉を集めていきます。墜ちた英雄がもがき、苦しみ、挑戦し、たぶんダメだろうなぁという悲劇の序奏だけを鳴らして、「挑戦の決着を見届けない段階で放送しよう」という姿勢がうかがえます。率直に冷たいな、と思います。メンバー落ちが確定したあとだって、むしろそういうときにこそ、本田△さんしか持ちえない発想や哲学がこぼれてくるだろうに、そこまで見届ける気はないなんて。

そこまで見届ける気がなかったから、ハリルホジッチ監督解任という予想外の出来事に対応できず、「墜ちた英雄は誇り高い死を選んだ!」というVTRの直後に、「しかし生き返った!」とつづけるハメになったのです。このチグハグさを生んだのはNHK側の問題です。いつも言うことですが、「見届けてから放送しないからこうなる」のです。

↓「墜ちた英雄」の方向性で損切りする可能性も考慮し、「都落ち」と挑発しておいた2月収録のインタビュー!
(パチューカ移籍を都落ちととらえる人もいるのでは?と問われて)

本田△:「いや…そうっすね…」

本田△:「都落ちって言葉に対して言えば、そのとおりだと思います」

本田△:「パチューカきた、都落ちだと、そのとおりです」(※じゅんいちダビッドソンのモノマネで)

本田△:「だから何だと」(※じゅんいちダビッドソンのモノマネで)

本田△:「何か結構誤解してる人いますけど、ほんまに別になんぼでもオファーありました、ヨーロッパから」(※じゅんいちダビッドソンのモノマネで)

本田△:「ヨーロッパからオファーなかったからパチューカ行ったとか、ないわけないやんって」(※じゅんいちダビッドソンのモノマネで)

本田△:「ACミランで10番やってた選手がヨーロッパからオファーないわけないんですよ」(※じゅんいちダビッドソンのモノマネで)

本田△:「何が大事かっていうのは、自分が挑戦したいと思える環境に身を置くことで、やっぱり自分がもっと伸びると思うんです」

本田△:「ワクワクとかっていう、挑戦したいっていう野心を最優先に考えた挑戦が、いくつかある選択のうちのパチューカだったんですよ」



ハリルホジッチ氏が「10個オファーあったで」と言えば10個あったんだと思うけれど、本田△さんが「ヨーロッパからオファーあったで」と言うと1個もナイと思っちゃう!

それは俗に言う「色眼鏡」というヤツです!

多分オファーはあった!あったと思う!トルコとかから!



本田△さんは標高2400メートルのパチューカで心肺能力を鍛えているのだ、そこを鍛えることでハリルホジッチ監督の戦術に合わせることができると考えているようだ、というNHKの見立て。その見立てを裏打ちするように、パチューカでの独走ドリブルからのゴール映像などを合間に挟んでいきます。

実際に本田△さんが何をやっているかは断片的にしか映りませんが、トレーニングを頻繁にやっていること、そして前へ裏への意識が高いことは、限られた密着のなかでもうかがい知れます。日本代表・手倉森コーチの視察においても、右サイドでのドリブルから縦にいってシュート、ドリブルから縦にいってシュート、ドリブルから縦にいってシュートの繰り返し。それはハリルホジッチ監督が要求したスタイルへ適応しようという努力であり、パチューカで見せたゴールに通じる練習でした。「手練手管と政治力で代表の座を勝ち取るチカラ」を持った人物の姿とは到底思えません。

「やるだけやりますよ。最後選ぶのはハリルなんで」

ミランで通じなかった自分を認め、弱点を克服することに注力してきたぶん長所も持てなかったことを反省し、ケガをしやすくなった身体に老いを感じ、それでもまだ自分を信じている。カカのようなドリブルはできないけれど、できないなかでもやろうとしている。「ワールドカップ優勝」をクチにした過去を、ただの意気込みではなく「約束」ととらえ、もう一度ワールドカップにチャレンジしようとしている。代表に入ることを願い、代表から落ちることを危惧し、どうすれば生き残れるかを前向きに考えている男が、ごく普通にもがく姿を番組は映し出していました。

この「もがき」すらフェイクだと言うのなら、もう脱帽するしかありません。ワールドカップの半分を中継し、巨額の放映権料を支払う立場のNHKが「落ちるやろ」と思って番組を作っているなかで、一生懸命もがいた風を演じつつ、実は裏で糸ひくことができるイチ選手がいるなんて。もしそんな選手が本当にいるのなら、一般視聴者である僕が騙されたとしてもしょうがないでしょう。

↓本田△さんの「ワールドカップ優勝」というのはマジ約束だったのか…!

ゴメン、本田△さん…話半分に聞いてたよ…!

「クスリとは縁を切ります」とかと同じ感じの努力目標だと思ってた…!


↓出てくる言葉はいつも全部冗談みたいだけど、きっと全部本気なんでしょうね!

本田△:「ホームシックにはなったことないですね」

本田△:「どこがホームなんだか」

本田△:「(ホームはどこかという)質問に対して」

本田△:「出身地はもはやもう…」

本田△:「アースっていう」

本田△:「地球出身っていう」



出身地は普通に大阪じゃないのかな!?

現在地が「アース」なんだと思うよ!

あえて言うなら!



NHKが勝手に「この時点でハリルホジッチ監督の構想外と思われていた」と墜ちた英雄感を加速させていくなか、本田△さんのもがきには光が見えてきません。ワールドカップ予選終了後、招集されない現実は焦りを生んだでしょうか。だからこそ、手倉森コーチが視察したパチューカでの試合では、味方が取ってくれたPKを決めただけのプレーであっても、「来た」「プレゼントもらった」と手応えを見せました。どんな形でも、得点と勝利に絡む。それが自分の「持ってる」という不思議な長所だと言わんばかりに。

そして「番組後半 代表監督交代の契機となったヨーロッパ遠征の舞台裏が明らかに」とわざわざNHKが事前煽りに関する説明字幕を入れてきた、マリ・ウクライナと戦ったヨーロッパ遠征へと話は移ります。例の「ハリルホジッチ監督解任の舞台裏」という煽りは、要するにヨーロッパ遠征で本田△さんがどう過ごしていたかという話だったのでしょう。そんなこったろうと思いました。

そこで本田△さんは「悔いのないようにやれ」と自問自答しながら、勝負に出ます。監督には確固たるやりたいサッカーがある、しかし日本代表はそれを実現できていないし、自分も落ちるんじゃないかという状況にある。だから、ここで勝利、得点に絡む結果を出せば本田△という選手の価値も認められるだろう、できなければダメだろう、それは覚悟の勝負だったはずです。やることはやってみたうえで、どうにもダメそうだったので、自分を信じて勝負に出た。圧倒的なチカラで代表入りをつかめなかった「実力不足」。自分を貫いたことで当然生まれるだろう「愚か者」という非難。それらを覚悟のうえで、勝負に出た。

そして、本田△さんは負けた。

番組終盤に据えられた、4月1日時点のインタビューで語ったとされる言葉は、勝負に負けたからこその言葉であり、負けたからこその強がりでしょう。そこにあったのは「監督の言うことはごもっともだが、俺の考えは違った」の時代から中身は変わらず、ただ不思議とともなってきた結果が今回は出せなかった「持ってない」男の敗戦の弁でした。

↓このインタビューにスガシカオ被せて、「墜ちた英雄は誇り高く散った。それでも本田の人生はつづく」とかで素直に終わればキレイだったのに!
本田△:「(現在の立場は)微妙やと思うんで」

本田△:「それで自分を認めさせるには」

本田△:「勝利、得点に絡むような結果」

本田△:「ここがないと認めさせることは難しいという覚悟を持って挑んでいるんで」

本田△:「全責任、それを判断して結果を出せなかった責任はもちろん自分にありますよね」

本田△:「ただ悔いはないです」

本田△:「ハリルのやるサッカーに、すべてを服従して選ばれていく」

本田△:「そのことのほうが僕は恥ずかしいと思ってるんで」

本田△:「自分を貫いた自分に誇りは持ってます」

本田△:「まだ1ヶ月、アピールする時間はあるし」

本田△:「上手く行ってないことも多いけど」

本田△:「今の状況を楽しんでやってますし」

本田△:「その点は不変ですよね」

本田△:「いかなる状況であれその状況下で前向きに」

本田△:「やれることをやるという」

本田△:「自分の信念は不変だと思ってます」



いつもと一緒!いつもどおりの本田△圭佑さんの話!

ダメそうだけど、パチューカのラスト1ヶ月にまだ賭けている、いつもどおり諦めの悪い本田△さんです!



ここで悲愴な感じで終わればいつもと同じ本田△さんやなーで終わりだったのです。ただ、ハリルホジッチ監督解任という状況の変化があったことで、「本田△の奮闘」も「本田△の大勝負」も「本田△の敗戦の弁」もあんまり意味がなくなってしまった。「落ちる想定で番組作ったけど、状況が御破算になった…」と困ったNHKが、体裁を整えるために付け足しのように「本田の逆襲が始まった」とか最後に入れてしまったので、ヘンな終わりになっただけなのです。

そりゃあ、「墜ちた英雄」のつもりで作ってきたのに最後に「墜ちてないかも」となった構成上の捻じれと、視聴者が「監督解任で全然状況違くなってるやん」と思いながら全編を見守る違和感が重なれば、全体的に「この番組は何を言ってるんだ」となるのは当たり前のこと。それは本田△さんのせいではなく、番組制作サイドの「混乱」です。「ダメそう」と思って用意した素材を、「ダメじゃないかも」でまとめたワヤクチャのせいです。混乱をさっぴいて考えれば、中身はいつもどおりの本田△さんであり、取り立てて今さら怒るほどのものはありません。清々しいほどに。

↓そして最後に本田△さんは「プロフェッショナルとはケイスケ・ホンダ」などと意味不明なことを言い放った!
本田△:「プロフェッショナルとは、」

本田△:「…………」(考えてなかった顔)

本田△:「ケイスケ・ホンダ」

本田△:「…………」(自分で言って意味不明な顔)

本田△:「どういうことか」

本田△:「…………」(自分でもわかってない顔)

本田△:「プロフェッショナルをケイスケホンダにしてしまうんです」

本田△:「お前、ケイスケホンダやな、と」

本田△:「…………」(俺は何を言っているんだの顔)

本田△:「そういう今『は?』って思ってる人が、自然と言えるくらいの生き様を見せていきたいという」

本田△:「自分への抱負も込めてこの答えにします」



4年前の放送では「自分がしている仕事に対して真摯であること」って言ってたじゃん!

何で4年経って禅問答みたいになってるんだよ!

ワールドカップ優勝の約束だけでなく、4年前の発言も覚えておいてください!


↓さぁ、みんなでアース出身のプロフェッショナル、ケイスケ・ホンダさんを応援しよう!


『ケイスケ・ホンダのうた』

アースが生んだ
ケイスケ・ホンダ
あの日の約束守るため

ワールドカップで優勝だ
K・S・K K・S・K
自信 自信 自信

メキシコ 行くぞ
オファーを蹴って

今日もホンダは
夢を見る

アースが生んだ
ケイスケ・ホンダ
強敵「自分」を倒すため

高地で鍛えた ドリブルShoot
K・S・K K・S・K
自信 自信 自信

飛び出せ 裏へ
ボールを蹴って

今日もホンダは
夢を見る

アースが生んだ
ケイスケ・ホンダ
プロフェッショナルとは俺のこと

服従だけなら 恥である
K・S・K K・S・K
自信 自信 自信

ポカンとしてる
世間よ見てろ

今日もホンダは
夢を見る


ずっとこうだった本田△さんを上げたり下げたりしているのは、世間です!