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日大蛮行プレーは監督とコーチの指示
複数関係者が証言

5月6日に行われた日本大学対関西学院大学の一戦で発生した日大選手による相手を傷つけるような蛮行プレーは、監督の指示であったことが弊誌の独自取材で判明した。
以下は複数のチーム関係者から得た証言を整理したものだ。

「試合に出場したかったら、1プレー目で相手のQBを壊してこい」

日大・内田正人監督が反則をしたDLにそう指示したのは試合前日だった。『壊してこい』というのは、『負傷をさせろ』という意味だ。当該選手は1年生の時から主力選手で、2年時の昨年も大活躍をしていたが、今年は試合出場機会こそ与えられていたものの干されており、精神的にはかなり追い込まれた状態だった。

そのDLに対し、内田監督は試合出場の条件として関学大のQBに負傷をさせることを指示し、コーチAは「何をしてもいいから壊してこい」と指示した。

さらに試合直前、監督から再度、当該DLに対し前日と同様の指示があった。その後、コーチAから「やらないというのはないからな」と念押しされた。

当日の先発メンバー表には当該メンバーの名前はなかった。チームが動画サイトに上げているロッカールーム内のハドルで主将が当日の先発メンバーを発表する動画でも、当該選手の名前は確認できなかった。つまり、当該選手は関学大QBを『壊す』ためだけに出場の機会を与えられていた。

「皆、俺がやらせていることは分かっている。(周囲から反則プレーについて)何か聞かれたら、監督の指示だと言え」

試合後、反則プレーについて内田監督は選手全員に対しそう促した。
反則をした当該選手は泣いていたという。

相手を故意に負傷させるプレーを行った日大DL選手は厳しく罰せられなければならない。しかし、今回の蛮行に対して、彼が自ら正しい判断、行動をすることは極めて難しい状況だったことも事実だ。

想像して欲しい。もし、自分が勤務している会社で上司から不正を強要され、「これをやらなければクビだ」と言われた時、何も迷わずに会社を辞める決断がすぐにできる人はどのぐらいいるだろうか。

彼が置かれていた状況はそれと酷似している。本来、正しいことを教えてくれるはずの監督やコーチからの指示だったということを考えれば、それ以上に正しい判断をすることは難しい状況だったと言ってもいいだろう。

フットボールは一人ひとりが役割分担をまっとうすることで成立するスポーツである。その特性上、監督やコーチの指示は基本的に絶対だ。だからこそ、監督やコーチは選手に正しいことを教えなければならない。さらに、監督自ら「自分の指示だと言え」と、選手に促しながら、地上波テレビ番組等でもとりあげられる大騒動となった14日時点になっても、内田監督からの公式な経緯説明は行われていない。結果、反則プレーを行った日大DLはSNS上で晒し者になってしまった。

『5月6日に行われた本学と関西学院大学の定期戦において,本学選手による反則行為により大きな混乱を招き,関西学院大学の選手・関係者の皆さま,関東学生アメリカンフットボール連盟,また国内外のアメリカンフットボールファンの方々に多大な御迷惑と御心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。今回の事態を厳粛に受け止め,今後はこのようなことがないよう,これまで以上に学生と真摯に向き合い指導を徹底してまいります。このたびのこと,重ねてお詫び申し上げます。』

『日本大学アメリカンフットボール部』の名前で、5月10日にホームページに掲出された『本学選手による試合中の重大な反則行為について』と題した謝罪文は、まるで今回の蛮行が当該選手一人の判断によるものと捉えられかねない内容だった。しかし、実際は監督、コーチの間違った指導が原因であり、間違った指導を徹底しても改善することはできない。

反則プレーを行ってしまった選手には、当事者である関学大と標的にされた選手に謝罪をした上で、正しい指導を受けるチャンスが与えられなければならない。一方で、間違った指導によって標的にされた選手を危険にさらし、蛮行を強要したことで未来ある有望な選手をバッシングの標的にしてしまった監督、コーチの責任は重大だ。

内田監督は5月10日付けで、柿澤優二・関東学生連盟理事長宛に謝罪文と共に、春季オープン戦のベンチ入り自粛と、8月末までの現場指導の自粛を申し入れたという。

対戦校、そして自チームの有望な学生選手の未来を奪うような指導を行い、アメリカンフットボールを安全に行うための努力を続けている多くの関係者の努力を踏みにじった責任が、たったこれだけの認識ということに強い憤りを感じている。

現在、関東学生連盟では規律委員会による調査が始まっている。また、日大の部長および監督に対して、関学大が5月10日に送付した謝罪と反則に至った経緯説明を求める文書の回答期限は5月16日である。

文責=上村弘文

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