アルゼンチンが、4月27日から連続的に政策金利を引き上げ、40%に達した。
この金利をみただけで正常な状況ではないと判断できる。つまり、新興国の経済・通貨危機が始まった可能性が高い。
そして新興国の中でもアルゼンチンが深刻だ。トルコリラもそうであるが、アルゼンチンの通貨ペソは“史上最安値”を更新している。
アルゼンチン政府は5月8日、国際通貨基金 (IMF:International Monetary Fund)に融資、正確には融資枠(Flexible Credit Line)を申し入れ、財務大臣自らもIMFを訪問している。
10日には“米国”にも支援を要請した。この欄でも、経済危機は10年に1度起こる、と書いてきたが、まさにその正念場ということができる。
今回の経済・通貨危機は、基本的には「21世紀型通貨危機」といわれるもので、1997年から始まったアジア通貨危機と基本的には同質である。
米国を中心とした先進国が利上げをしたために、資金の逆流が発生しているのである。ただ正確には、アルゼンチンなどは、現在は97年当時のような固定相場制ではなく、変動相場制になっている。
アルゼンチンは国際経済・金融の世界では、長年、典型的な問題児といわれ続けて来た。
そもそもマクロ経済で、経常赤字・財政赤字(双子の赤字)が大きく、インフレ率も高いということで、経済のファンダメンタルズが弱い。今までも国として7回、デフォルト(債務不履行)を起こしている。
最近では、世界経済全体が良くなっていたので、アルゼンチン経済はなんとか回って来たようなものである。
今回のアルゼンチンの政策金利の引き上げは、米国の利き上げに対抗する短期的な応急処置である。資金が流れる圧力を金利によってバランスさせようと考えているのである。
金利の引き上げ、それもこれだけの金利の引き上げは、“当然”景気を悪化させることになる。つまりは、一時的な「止血剤」であり、長引くと強烈な副作用がある。
アルゼンチンはすでに固定相場制ではなく、変動相場制であり、国際通貨制度として介入などの対応は義務ではない。
一般的に為替レートの多少の下落は輸出を伸ばすとして評価される。しかし、現在のアルゼンチンの場合、問題は、為替レートの下落が早すぎることにある。すなわち資本の流出が激しいのである。
IMFとアルゼンチンの関係は良くない。2001年にIMFが融資の条件として出した経済改革をアルゼンチンがしなかったため、IMFは融資を打ち切った。結果としてアルゼンチンは同年デフォルトした。
IMFはアジア通貨危機の時にもそうであったが、融資をするときに経済改革の「条件」(Conditionality)を付ける。アルゼンチンはその条件に対応しなかった。改革のやる気がないからである。それ以降、IMFはアルゼンチンとの関係を絶っていたのである。