2018年5月14日(月)
“BitSummit Volume 6”にて展示され、高い完成度と斬新なアートスタイルで会場内の注目を集めていた『RPGタイム! ~ライトの伝説~』。イベントの直前に情報が公開されるやいなや、インディーゲームファンの間で大きな話題を呼んだ本作について、開発を担当したDeskWorks!の藤井トム氏にお話をうかがってみた。
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▲左からゲームデザイナーの藤井トム氏。鉛筆グラフィックを担当した南場元樹氏。 |
──『RPGタイム!』はこれまでいっさい情報が出ていなかった作品ですが、まずは開発に何年かかっているのか教えてください。
藤井トム氏(以下、敬称略):今年で6年目になります。6年間引きこもって作り続けて、今年の3月からようやく、京ゆにさんなどインディーゲームの社交の場に出てこられるようになりました。
──独特で細かいグラフィックが目を引きますが、何人で制作されているのですか?
藤井:自分と、もう1人の南場という絵が描けるプランナーを合わせた2名が中心です。専門外のサウンドなど、一部外注している部分もありますので、基本は2.5人くらいで回しています。内容としてはシリーズの1作目を作ったあと、2を作っている感覚です。
──それはつまり、今の形にするまでに何回もクラッシュ&ビルドを繰り返したと?
藤井:じつは、すでに2、3年前に1回完成させているんですよ。エンディングまでできていたのですが、物足りないものを感じてしまって作り直しました。
──そうなんですか!? いったい当時は、何が不満だったのでしょう。
藤井:いろいろなインディーゲームを遊んで、自分達のゲームに物足りなさを感じたからです。とくに、チームの中ですごく衝撃的だったのが『UNDERTALE』との出会いでした。『UNDERTALE』は、親近感を感じるものがあって、先を越されてしまった意識がありました。もっと早く出会えていたら仕様の段階から影響を受けていたと思います。
本作は、自分が『UNDERTALE』の影響を受けずにRPGを作れる最初で最後の作品になったかもしれません。別の方向で自分たちの強みを生かせるような開発と調整を行っています。
──具体的に『UNDERTALE』を見て、どのあたりが同じように感じられたのですか。
藤井:ゲームの途中から、ずっと「もうやめてくれ!」と悲鳴を上げながらプレイしていました(笑)。何か展開が起きて、さらに起きて……という展開のラッシュや自分たちの想像の範疇にないものが、次々と飛び出してくる。
普通はそれが1回起きたら名作で、2回起きたら大どんでん返しのあるすごいシナリオなのに、3つ4つと立て続けに起きてどこまでやるのか、と。すべてが同じだったわけではないのですが、自分たちが目指していた方向と似ているような気がして負けていられないと思いました。
──そこで、一度はエンディングまで完成していた『RPGタイム!』を作り直す決意をされたのですね。
藤井:本当は『UNDERTALE』こそ、日本人が作るべきものだと思っています。『東方』シリーズなどに影響を受けていたこともそうですが、先を越された感じが強かったです。製作者が日本の作品に良い影響の受け方をしていて、中身もその手があったのかと悔しくて……それが、3年前のことですね。当時は世界一おもしろいゲームと言われていたのですが、実際にプレイしたら本当におもしろかったです。
──お話をうかがっていると、藤井さんはもともとRPGが大好きなんですね。
藤井:大好きですよ。もう1人のプランナーであるNAMBAもRPGが大好きだったので、今年は大忙しでした。『ファイナルファンタジーXV』から『ペルソナ5』に『ドラゴンクエストXI』。『二ノ国II』と遊んでいます。
──展示されているバージョンを遊んだ限りだと、個人的にはRPGよりもアドベンチャーに近いゲームスタイルだと感じました。製品版は、もっとRPGらしいプレイ感になるのでしょうか。
藤井:はい。RPGなのでレベルアップや装備の更新。アイテムといったひと通りの要素があります。胸を張ってちゃんとしたRPGだとは言えないかもしれませんが、けんたくん(ゲーム中でRPGタイムを作っている少年)なりのRPGということでは、大きくはずれていないと思います。タイトルで“RPG”を名乗っているからには、ちゃんとRPGをしていないとダメなので。
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──少年がノートに書いたRPGを再現しているという意味で、ゲーム内のグラフィックも鉛筆で描かれているのが衝撃的でした。グラフィックは、どなたが描かれたのでしょうか。
藤井:南場です。彼が、1人で6年間かけて1万枚以上のグラフィックを作りました。普通のアニメーションと比べても、アニメ3~4話分くらいのイラストを1人で描いています。これは、鉛筆だったからできたことでもありますね。色をつけてしまうと時間がかかってしまいますし、鉛筆なら絵がはみ出していても、ズレていても味になる。さらに、思いついたアイデアをすぐ実装しやすいのが利点です。
──それも含めて、開発の当初から鉛筆画で行こうというアイデアを想定されていたのですか。
藤井:開発当初よりも前ですね。さかのぼっていくと、鉛筆画で行くというアイデア自体は10年前から考えていました。
──10年前!?
藤井:じつは、学生時代に『RPGタイム!』の前身となる作品を卒業作品として作っていました。その作品を作った仲間と「みんなで技術を蓄えてもう1回作ろう」という話をしていて、ふたたび作り始めることができたのが6年前ですので、構想から振り返ると2006年から作り始めたゲームと言えるかもしれません。
──それはすごい! この作品のニュースに関しては『勇なま。』シリーズの山本正美さんが積極的にツイートされていましたが、山本さんとはどのような関係なのでしょうか。
藤井:山本さんは、10年前の学生時代に作っていた作品から目をかけてくださっていた方です。当時、SCEさんが“PlayStationC.A.M.P!”というクリエイター発掘支援プロジェクトを展開していたのですが、そこに『RPGタイム!』を作りたいと持ち込み、出会ったのがプロジェクトを運営されていた山本さんでした。
──その時から作り始めているのですか。“ゲームやろうぜ!”のときの制作は、おひとりだったのですか?
藤井:1人です。“PlayStationC.A.M.P!”では、私の力不足で『RPGタイム!』の製品化は叶いませんでしたが、別の企画を立案したり、他のクリエイーターさんと組んでゲームを開発していました。そこで開発エンジン“Unity”と出会い、個人的に作ってしまおうと考えました。
──そこまで時間をかけて制作している作品ですが、なぜ、6年間の間にっさい情報を出さなかったのでしょうか。
藤井:本当は、3年ほど前に東京ゲームショウ(TGS)へ出したいと思っていました。学生時代に作った作品も、TGSで賞をいただいたことがきっかけで注目されたので出すならTGSしかないと。そう思ってはいたのですが、出展の選考で受かりませんでした……(笑)。やはり、TGSはなかなかハードルが高いですね。もし受かって3年前に発表していたら、今よりも作り直す前に近かったと思います。
──逆に出さなかったことで、作り直してから発表できたということですね。ちなみに、現時点での完成度はどれくらいですか?
藤井:過去に一度完成させたものを作りこんでいるので120%と答えたいところなのですが……。具体的な進捗としては、2019年のはじめのほうにリリースしたいと考えています。ゲーム自体はひと通り実装し終わっていて、調整も85%から90%は終わっています。クオリティ的にもそれくらいではないでしょうか。
──ビットサミットの展示版は英語対応もされていましたが、海外で出す予定も?
藤井:はい、海外は狙っていきたいです。そう考えて海外向けにブラックジョークを勉強したりもしましたし、ローカライズも自分たちでやっています。たとえば、タイトル画面でベルを鳴らすと「キンコンカンコン」となる演出があるのですが、海外版ではその音がないので「ビーッ!」という違う音になっているんですよ。こういった日本との違いを調べていくのが、すごく楽しいです。ほかにも、くっつき虫という単語が海外にはなく、それを表現するにはどうしたらいいのかといった細かいことも翻訳の方と相談しています。
──実際に英語版の展示を遊んだ方も多いと思われますが、海外の方からの反応はいかがでしたか?
藤井:開場してから、一番、二番に来て遊んだ方は海外の方でした。なるべく日本語でしか伝わらないギャグは使わないようにしているのですが、そもそも中身自体がコテコテな日本の教室で、コテコテな黒髪の少年が出てくるゲームなんですよね。そこを差し引いても、良い反応がいただけています。
たとえば、ゲームを遊んでいた中国の方に聞いてみたのですが、どこの国でも子どもはノートに落書きをしてゲームを遊んでいると言われました。その最高峰として、海外の人もこのゲームをやってみたいのではないかと。
──なるほど。ちなみに、年齢層としてはどこをターゲットにしているのでしょうか。
藤井:老若男女幅広くとは言いませんが、実際の子どもにも楽しんでもらいたいですね。どちらかと言えば、見た目が子どもっぽいので、大人はそれだけで見てくれないのではないかという心配がありました。
ですが、ふたを開けてみたら大人の方のほうが懐かしんでくれているようです。ちょうどよい感じで、オジサマになる年齢層が熱烈に歓迎してくれているのを感じました。ゲームキャストさんというサイトでも取り上げていただけたのも、そういった理由が大きいのかもしれません。。
──実際に遊んでみましたが、確かに大人のほうが新しさやパワーを感じやすいかもしれません。
藤井:6年分のパワーをぶつけていますから、そこを感じてもらえたのならうれしいです。ほかの仕事の合間を縫って作っていますが、開発資金も使い切ったので今はすっからかんですね。2019年にリリースするために、今は、ほかの会社に出向しながら作っていますが、どこかのパブリッシャーさんが資金を出してくれるなら、より早く出せるかもしれません(笑)。
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──プレイ時間的には10時間くらいを想定されているのでしょうか?
藤井:はい。そこはこだわりがあって、RPGと名乗るなら最低でも10時間以上は遊ばせるようにしたいと思っています。分岐があるとはいえ、一方通行といえば一方通行ではありますが、盛りだくさんにイベントを用意しています。さっぱりしたところもあれば濃密なところもあるので、終始飽きないように作れたと思っています。
──試遊できた範囲でのイベントは、どちらかというとあっさりした感じですか?
藤井:はい、そうです。そこが少し不安ではあったので、PVではよりゲーム的なところを映しています。
──今回、初めて情報も公開したことで、これから先はいろいろなイベントに出展してゲームを見せてくれるのを期待してもよろしいでしょうか。
藤井:それはもう、出られるならばどんどん参加していきたいです。今回、これが世に聞くイベントの大変さなのかと実感していますが……(笑)。去年から調べていたので、インディーのイベントには耳年寄りみたいになっている部分があるんですよ。今回、ようやくみなさんの仲間入りができた形になってうれしいです。発売は2019年を目指していますが、もう1年を切りましたし、それくらいのスケジュール感でいけると思います。
──リリースはiOS、Android、Steamを予定しているとのことですが、コンシューマハードへの移植などは考えているのでしょうか。
藤井:現在は、その3ハードです。個人でできる範囲の限界がそこだと思っているので、パブリッシャーさんに声をかけていただければいいなと思っています。個人的にはPS Vitaでも出したかったのですが、グラフィックでかなり性能を使い切っているので、なかなか難しい部分も……。グラフィックは2Kで制作しているので、メチャメチャでかい鉛筆で書いているんですよ。拡大しても大丈夫なように作っているので、原画もかなり大きいです。
──そのこだわりがあるからこそ、デジタルなのにアナログゲーム感をしっかり再現できているんですね。
藤井:そこはこだわりました。たとえば、キャラクターが歩くアニメーション1つをとっても、すべるように歩くとデジタル感が出てしまいます。なので、すべてのコマで完全に足が地面へつくようなアニメーションを作りました。パラパラ漫画の手法ではあるのですが、手間はかかっています。
──今回は小学生のけんたくんが作ったRPGを遊ぶという内容ですが、たとえば別のパターンなども考えておられるのでしょうか。
藤井:別のパターンも欲しいという話は、チームでもしていました。今回のゲームマスターである少年は、言ってしまえば優等生なんですよ。作っている物量が物量なのですぐには無理なのですが、女の子がゲームマスターとして進行してくれたり、いじめっ子や先生がゲームマスターになったりと、DLCなどで違うバリエーションも展開できたらと思っています。ですが、まずは本編を1本作ることが先決ですね。
──価格的にはいくらぐらいになるのでしょうか。
藤井:『Cuphead』の値段よりは安いくらいを想定しています。あとはパブリッシャーさんから声をかけていただいて、パッケージにできれば最高ですね。
『RPGタイム!』は、おそらくゲームの歴史に名を残せるようなエンディングを作れたと自負しています。言い過ぎかもしれませんが非常にやりきったなという感触がありますし、エンディングを見ると「これがRPGタイムだ!」という感じを受けると思うので、ぜひお楽しみに!
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ネプRe;Birth1+ / DQビルダーズ2
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