(画像は公式サイトデジモンアドベンチャー tri.から)
無限大な夢(ゴールデンウィーク)のあとの、何もない世の中(無慈悲な現実)を見せてくれる今日この頃。先日、公開されたデジモンアドベンチャーtri.の第6章を視聴しました。2015年から約3年、全6章の本作が完走したわけです。
いろいろ思うことはありますが、今回はこの6章を、ひいてはデジモンアドベンチャーtri.の感想を書いていきたいと思います。
最新作でネタバレもガンガンやっていく上に、全ての章を視聴した前提で感想を書いていくので、未見の方はご注意を。
あらすじ
暗黒進化したテイルモンを取り込み、オルディネモンへと姿を変えたメイクーモン。その絶大な力を持って、現実世界がデジタルワールドに飲み込まれようとする。
イグドラシルの思惑通りに自体が進み、リーダーである太一もいない中、絶望的な現実が立ちはばかる。
そんな中、ハックモンが現れ、ホメオスタシスが人間界をリブートすることを伝え・・・!
6章について
結論から言うと、「ほどほどに微妙であった」という感じでしょうか。
個人的に全く期待をしていなかったので、ハードルが激的に低い状態からの視聴でもあったためか、少なくとも5章の時ほど苛立ちはありませんでした。
だからといって、面白かったかと言えば、そういうわけでもないですが。
では、個人的に良かった点と悪かった点を挙げていきましょう。
各進化体の戦闘場面
これが個人的に良かったです。
というのも、ただ究極体を並べて戦うのではなく、成熟期や完全体にもしっかり活躍場面があり、動きなども滑らかでそこそこ迫力がありました。
特にワーガルルモン、バードラモン、イッカクモン、トゲモンがオルディネモン相手に立ち回るのは、なかなか見ごたえがあり、それぞれの特性を活かした戦いが見られました。
ただやられた時の声や技名を叫ぶ場面は無いので、そこはちょっと気になったかも。加えて、動きがある時はともかくラストのオメガモンパートは別にそうでもないので・・・。
あとオルディネモンのお尻がセクシーです。さすがはテイルモンのデータを持っているだけある。(おいコラ!)
西島大吾、散る
この6章単体で見た場合、これも良い場面として外せません。
元々、選ばれし子どもであったが彼が「大人」として「先輩」として、「後輩」である太一のために命を張って、彼を救ったのはカッコよかったと思います。
「夢はでっかく!」と言うセリフもシンプルですが、血に濡れた手を挙げる場面と相まって良い感じです。
しかしこれについては、ものすごく言いたいことがあるのですが、それは後述で。
メイクーモンの真実
メイクーモンが他のデジモンの記憶データを内包しているというのは、わりと納得できました。
というのも、2章に登場したインペリアルドラモンを筆頭に、メタルシードラモンやムゲンドラモンと正体不明の敵が多かったので、その原因がメイクーモンに関係していると考えると、腑に落ちます。
まあ、5章の時点でアポカリモンのデータを内包しているとか、それらしき情報はあったんですがね。
わかりやすい尺伸ばし
ここからは個人的に悪かった点を挙げます。
中でも特に思ったのが、この点。子ども達が、声を発しないで不自然に突っ立ている場面とか、進化バンクの多用など、露骨すぎて気持ち悪く感じます。
セリフ回しにもそんな傾向がありますね。私はメタルマンのような冗長性を見たいわけじゃないんだ。
まあこれについては、デジモンアドベンチャーtri.全体を通して多かったので、今さらという感じなのですが、だったら直せよとも思います。
やっぱりワープ進化はあった方が展開にスピード感は失わなかった気がするんだけどな・・・。
伏線回収の雑さ
せっかく長い時間あった伏線や設定を半ば雑に、半ば丸投げ気味に回収したのはやはり許せません。
リブートとかはまだしも、「感染」についてなんて言及ないし(これは5章からですが)、謎の男は残ったままだし、大輔たち02組の扱いは酷いし、姫川さんは放置だし、挙げ始めるとキリがありません。
私の場合、唯一ある程度納得したのが、上述したメイクーモンの件くらいですし、これすらも納得できない人はいてもおかしくはない気がします。
続編で回収という意見がありますが、そもそも6章で一旦区切る以上、必要最低限の回収はやるべきでしょう。
セリフが説得力を欠く
メインのキャラのセリフが全体を通して、抽象的すぎな気がします。
ヤマトがハックモンに対して怒る場面とか、ヒカリの太一への反応とか、気持ちはわからなくもないですが、具体性や説明がないため、ツッコミどころが満載です。
「俺たちは俺たちのやり方で世界を救ってやる!」については、ラストで結局メイクーモンを倒す方に展開するし、
「お兄ちゃんを許さないと思う」からの「だからこそ、私も一緒に戦う」というのは、素で「え?」と口に出すほど消化不良でした。
あんまり私が人のことを言える立場ではないのですが、少なくともプロならここはどうにかにして欲しかったです。
tri.の総評
まあ、6章単体の評価はこんなところですかね。ではその上で、私からこの「デジモンアドベンチャーtri.」の総評として・・・
やりやがったな、こんちくしょう!!!
リップサービス(していない)はここまでだ!悪いが、往年のデジモンファンとして、これは見ていられない気持ちの方が強かったです。全体を通して見ると、微妙と言った6章も酷く変わっていきました。
ここからは全体を通して、思ったことをぶちまけていきます。先に言いますが、批判が大半なので、ご注意を!
キャラの扱いと掘り下げ
キャラの掘り下げがあまりにも足りなかった気がします。
まず新キャラメイン格の芽心とメイクーモン。前者は全編通して、曇って勝手に悲観するフラグクラッシャーでしかなく、結果的に作中でヘイトを集めるような役割になっています。メイクーモンを大切に想っているのはわかりますが、どちらかというとメイクーモンよりも周りに迷惑かけたくないだけで、パートナーの絆を考えると・・・うーん。
これについては5章が特に酷かったです。あれは同じことの繰り返しで、本当にイライラした。引き伸ばした挙句、6章で結局メイクーモンを倒すし。
そしてメイクーモンの方は、印象付けが致命的すぎる気がします。というか、こいつをボスにするならそれ相応のヤバさを見せて欲しかったです。設定や周りに与えた被害は凄いんだけど、それに見合った恐ろしい演出があまりにも大したことない。ヴァンデモン様やブラックウォーグレイモン、ルーチェモンを見習って、どうぞ。
そりゃ、立場は仲間のパートナーデジモンだから、葛藤などが付きまとうのはしょうがないことですけど、だったら尚更メイクーモンの心理描写を生々しくやったうえで、カタルシスに繋げるとかやりようはあったじゃないですか!
結果は暴走状態が多く、掘り下げがパートナー関連だけで本人の性格面は口頭での説明か怯えているだけがほとんどですよ!
加えて西島先生と姫川さん。この2人の関係性には思わせるものがあったのですが、個人として見るとどうにも微妙なレベル。
まだ姫川さんは描写だけでも狂気的な面を描き、短いながらも納得できる掘り下げがありましたが、それにしては扱いが雑で必要性を感じない。
対して、西島先生はどうにも煮え切らないような、一手欠けるような行動や心理描写が多く、どこか舞台装置感が強い不遇な感じでした。だから前述したように6章単体で見たら良い場面も、キャラ含めてみるといまいち感情的になれないのが、残念でしょうがないです。
そして許せないのが、謎の男。暗躍や心理戦、ゲスイ言動を行うのですが、それが全体的に印象悪いだけの悪役に収まっています。魅力が全く感じないのも珍しいな、おい!
というか、単純に平田さんの演じるキャラに合っていないと思うんですよね。これではただの変態的な狂人だもの。
じゃあ、子ども達が良かったかと言えば、別にそういうわけでもありません。ファン歴長いと、彼らのメンタルの強さや性格的特徴などいくらでも見てきたんですよ。そうなると土台がある上で、成長した彼らを見るのですが、その割には成長がその土台を否定するようなものだったり、既にやっているようなものだったり、言動に唐突性を感じたりと、細かい点の方向性を見失っているような感じです。
もちろん全部が悪いわけじゃないですが、なんか二次創作のぶっ飛んだタイプのキャラを見ているような気持ちになりました。
デジモンたちの方は見ていると、いつも通りじゃんと思うのですが、忘れてはいけません。彼らは3章でのリブートで「記憶リセット」を一度行っているのです。そう考えると、一気におかしい気がします。
4章はピヨモンだけ露骨にパートナーを嫌いましたし、むしろ他のキャラでそうなるやつはいなかったのかと思います。テイルモンとか、性格的にありそうじゃん。パートナーとの絆と言われると、今度は空とピヨモンが大したことなく見えるし。
そこから5章を見ると、お前ら本当に記憶消えたのかと思いたくなるような移り変わり。なんかいろいろすっ飛ばしていませんか?
最後に大輔たち02組ですがね、6章で取り上げたのは、わりと悪手だと思いますよ。なまじ、それっぽさを匂わせていた場面はありますが、それにしてはこれまでの無印組の彼らへの心配や想いが無さすぎます。
むしろ彼らは全く触れられない方が良かった気がしますね。下手に匂わせて期待させたのはダメだと思います。
特に大輔なんか、太一たちとの繋がり強いし、タケルとヒカリに至っては同級生ですよ。賢だって学校遠いけど、二人の同級生だし、京と伊織は02の時点ではタケルと同じアパートだったし・・・というか、タケルとヒカリ!共に冒険した仲間なんだから、キミらはもっと心配しなさい!
人気のごり押し
デジモンは息の長いコンテンツ。となれば、必然的に人気のものも出てきます。
デジモン自体は、無印に出ていたデジモンたちは人気あるし、オメガモンなんかは今でも最高峰のカッコよさ。
曲では「Butter-Fly」なんて、デジモン詳しくない人でも知っているし、ファン歴長い人はAiMさんの曲や挿入歌「Brave heart」もよだれものです。
しかしそれに頼り切ってはいけません。いくらリメイクしても、過去の栄光だけでは面白い作品は作れません。
そしてtri.では、これがちょっと顕著だと思います。
劇中で何度も流れる「Butter-Fly」や「Brave heart」、とりあえず出しておく感のあるオメガモン、脈絡なく出てくる人気デジモンのアルファモンやインペリアルドラモンと、人気あるものを使ってのゴリ押し感がありました。
加えて、どうでもいい小ネタも押していきます。特に光子郎のウーロン茶ネタ。あの手のは知っている人が思わずニヤリとする程度だから良いのであって、目につくレベルで押すようなものじゃないんですよ!
製作者さん、とりあえずファンが喜ぶだろの精神でぶち込むのはやめてくれ!そういう透けて見える演出を視たくないんだ!
あとデジモン全体に言えるのですが、ちょっとはオメガモンやロイヤルナイツを使わずに、物語を盛り上げてほしいです。
同様にイグドラシルもですね。はいはい、どうせあの世界樹がまた悪役でしょ?となるし。
本当に必要な展開か?
3章でリブートが行われるとなったとき、私はショックを受けました。というのも、あれはデジモンアドベンチャーでの冒険がデジモン側ではすべてなかったことになると思うと、悲しくて悲しくて・・・。
じゃあ、4章で行われたパートナーとの絆の再構成が盛り上がったかというと、予想通りの展開をちょっとご都合感あふれる演出で行い、どこか消化不良。
次に、5章ラストで太一が行方不明になるも、彼の経歴や立場を知っているし、次回予告やアイキャッチを見ると生きていることはまるわかり。
そして6章でメイクーモンの件で、太一もデジモンの記憶も戻る・・・。
さてここまで書くとわかるのですが、圧倒的に「チープな茶番っぽさ」が出てくるのです。おかげで必要性の感じない、盛り上がらない、胸に響かない展開へとなります。
加えて、不必要とも思える演出もざらにあります。そこをキャラの掘り下げや伏線回収に使えよ・・・。
ただ、これは個人の趣味嗜好がもろに現れるので、一概には言えません。
最後に
個人的に、本作はデジモン史上最大の残念な作品でした。
物語を全体的に見ると、広げすぎた風呂敷をたたみきれないような展開で、キャラの掘り下げも中途半端で、テーマがあやふやの退屈な作品。ぶっ飛んだ面もないので、ネタにもならないです。
「僕らのウォーゲーム」のような起承転結がしっかりした王道でもなく、02の「黄金のデジメンタル」のような芯のある雰囲気映画でもない。
たぶん、期待しすぎたのはあるんでしょうね。こんなに文句出るのだって「お前の期待通りじゃなかっただけじゃん」と言われれば、それまでなんですが、本当に思い入れのある作品の続編だったので・・・。初めてデジモンを「惰性」で見ましたよ。
細かく見れば、良かった点はあります。ゴマモンの丈への気遣いやヘラクルカブテリモンの覚悟、ホーリードラモンの登場などがそうですね。声優の演技も嫌いじゃなかったし、リメイクされたOPやED、挿入歌においては最高レベル。
しかしそれを上回るように、上記の点が致命的だった印象です。
謎の男の発言や黒い箱、02組の生命維持装置が5つある(可能性あるなら遼か?)件など続編も期待されますが、正直このまま終わらせてもいいし、仮に続編が来ても「デジモンアドベンチャーtri. 」としての評価は私の中では変わらないと思います。
とりあえず監督と製作者には「完走お疲れ様です」と思っても、それ以上の感情がわいてきません。
まあでも、思いっきり感情を吐きだして、スッキリしました。ちょっと言い過ぎたことを反省しつつ、これで一緒にレンタルしたガンダムオリジンの方を見れるな!
とりあえず最後、私なりにこの作品を一言で締めたいと思います。
「今、冒険を進化させてくれ―」