地方空港の民営化第1号として、仙台空港の運営を2016年7月に国から委託された仙台国際空港会社が、国との協定に反し、初年度に実施するとしていた乗降客の逆流防止ゲートや監視カメラなどの保安設備を整備していないことが分かった。
仙台に続き、高松でも民間委託され、北海道や福岡、熊本でも計画が進む。空港は安全対策が重視されており、同種協定の確実な実施が求められる。
空港の民営化は、赤字が多い国管理の地方空港に民間の資金やノウハウを投入し、経営を立て直す取り組み。仙台空港はその第1号で、15年の競争入札で東急電鉄や前田建設などが出資する同社が落札した。
当初、国と同社が結んだ協定では、初年度に①旅客ターミナルビル入退場に関わるセキュリティーの強化(乗降客の逆流を防止するフラッパーゲートなど)②空港周辺への監視カメラ設置、などを実施することが取り決められた。
だが国土交通省が昨年夏に検査したところ、これらの保安設備に加え、桜の植樹、大型テレビモニターの配備、地元財界らによる経営諮問委員会の設置など計10ほどの未実施項目があった。一部は国交省の検査後に対応しているという。
朝日新聞の取材に同社幹部は事実関係を認め、「国交省と協議をしながら整備を急いでいる。航空会社との調整や技術の見極めなどで時間がかかった」と説明している。
協定には、格安航空会社(LCC)の誘致や空港ビルの店舗入れ替えなど収益力向上を目的としたもののほか、空港の防犯施設強化など安全管理上の実施事項が含まれている。空港経営が安定し、航空機の発着件数や利用客が増えれば、セキュリティーの強化も必要となるからだ。
保安設備の充実は、円滑な空港運営にもつながる。例えば、多発する滑走路内への動物の侵入などは監視カメラによる早期発見が可能となり、発着トラブルの減少も期待される。
国交省によると、協定で取り決めた事項は入札段階での選定条件で履行の義務が生じているといい、「協定で決めたことは全部やってもらう」(航空ネットワーク企画課)としている。