テレビアニメの時からの印象、「明るくていい子!」「だけど鈍感」
一年の時に辞めてしまったとき、みぞれには声をかけなかった。
「みぞれ頑張ってたじゃん。そんな人に一緒にやめようとか言えるわけない」。
みぞれがどれほど希美を慕っていたかにも気づかずに。この時点では確実に「気づいてなかった」のでしょう。希美を演じる東山奈央さんも、よく希美のことを「まっすぐすぎてちょっとおバカ、鈍感」と評してました。2期終了時点では確実にこのような印象の娘だったと思います。
しかし、そうではなかった。
傘木希美、強豪校の部長を務めるだけありましたね。ただのおバカではありませんでした。リズと青い鳥で、希美の深い部分を覗き見することができました。
上手くできるか分かりませんが、少し書き綴ってみようと思います。
果たしてどこまで「気づいてなかった」のか
さて、私はずっと疑問だったことがあるのですが、果たして「希美はどこまで気づいてなかったのか?」ということです。
最初見た時、うまく腑に落ちない部分が何箇所かありました。「気づいてないなこの子…」と思ってた部分も希美、結構「気づいてる」んです。
それが出てきたのが、優子と夏紀に「私本当に音大行きたいのかな…」と吐露するシーン。
希美「楽器続けたいと仕事にしたいは同じじゃないし」
優子「それ、みぞれには言ったの?」
希美「言ってないよ。なんで?」
このシーン。なんで?が
すごくわざとっぽいんです!!!!
答えはわかってるように聞こえるというか。「なんでそんなこと聞くの?」と口では言ってるけど、言葉の裏に「私が行かないって言ったらみぞれもやめるって言うのなんかわかってる。私、わざと言ってないんだよ。」
「だって正直、ちょっとみぞれ、めんどくさいんだもん。」まで聞こえてきそうでした。
優子「一年の時だってみぞれに黙って部活やめて、それでやっぱりやりたいたから戻ってきますって言って…」
このシーンの「一年の時だってみぞれに黙って部活やめて、」の時に希美が手をぎゅっとするんです。さらに
優子「みぞれをどれだけ振り回してると思ってるの!?それで仕事にするのはやっぱり違うから音大行くの辞めますって何!?」
(セリフは曖昧ですすみません)
この時なんかついに優子の目も見ずに親指の爪をいじってるんです。まるで親に「勉強しなさい」と言われた子が「そんなの分かってるよ、いちいちうるさい、めんどくさいな」というみたいに。優子はのぞみぞの母か。
あの数秒で
「え、おい希美気づいてるじゃん」
って思ったんですよ。みぞれがどれだけ希美を好きか。自分がいなくなったらどれだけヤバイか。
希美はただの鈍感じゃなかった!!!!
チクショウ傘木このやろう!!!!
と思ったわけです。口が悪くてすみません。でもそうやって分かってると結構辻褄が合わないんです。自分の判断が全部みぞれを振り回すんだと、もし今までもずっと気づいてたとすると、希美めっちゃ嫌な子になりませんか?
- みぞれに黙って部活を辞める
- みぞれがもらったパンフレットを見て、この音大受けようかなと言う
- それを夏紀と優子に話した時、「希美が行くから私も…」というみぞれに「何本気にしてるの2人とも!みぞれのジョークじゃん😄」と言う
- みぞれに何も言わず音大いくのやめようとする
これら、もし全部みぞれの愛を全部分かってたのにやってたら結構嫌な子ですよね?
みぞれのこと嫌いじゃん?くらいまで来ませんか。でも希美は決してみぞれのこときらいなんかじゃなかったと思うんです。
「わざと気づかないようにしてた」
わたし的に一番腑に落ちたのはこれです。「気づかないようにしてた。」
みぞれが自分を慕ってくれてるのは分かってるけどだってそれは中学の時からの親友だからだもんね〜〜!😄くらいの感じ。
でも優子に指摘されて、「やっぱりそうだよね、薄々感じてたけど、どこからどう見ても、みぞれって私のこと好きすぎるよね。分かってたよ。」が出ちゃったんだと思います。
・みぞれに黙って部活を辞める
→この事件が和解したあたりで、みぞれの愛の重さにはうっすら気付き始めたのでは。
・みぞれがもらったパンフレットを見て、この音大受けようかなと言う
→みぞれの「私も!」に対して返しが「え?」だったので、このときは「え、進路まで私と同じにしたいの?」だったのではないでしょうか。「わかってたけど、そこまでか」というか。
・それを夏紀と優子に話した時、「希美が行くから私も…」というみぞれに「何本気にしてるの2人とも!みぞれのジョークじゃん😄」と言う
→なんとなくジョークじゃない気はしているけど気づかないふり
・みぞれに何も言わず音大いくのやめようとする
→みぞれが傷つくのなんか絶対わかってる
ちゃんと、段々、みぞれの愛の重さをわかってきてるんです。希美は。
「むしろ軽蔑されるべき」
さて、希美はその「うすうす分かってたみぞれの愛情」をどう思ってたか?
もちろん嬉しい気持ちもあったと思います。でも、正直「重い」と感じる部分もあったのではないでしょうか。「あそこまで自分のこと好きな人」って普通怖くないですか? 私がやるからやる。私と進路同じにする。たまにこういう女の子いますけど私は結構怖いです。
だって彼女が好きなのは「幻想の私」であって私じゃないんです。みぞれって希美の全部が見えてるというより「希美が好きすぎて希美の全部を肯定してしまう」、いわば宗教的かつ盲目的な「好き」ですよね。
行き過ぎて「希美の中の希美」と「みぞれの中の希美」が違う人みたいになってしまってる時があると希美は感じている。だから「みぞれが思ってるような人間じゃないよ」。 「なんでそんなに言ってくれるのかわからない」。
「私、みぞれが思ってるような人間じゃないよ、むしろ軽蔑されるべき」
この一言にそれが詰まってましたね。今までみぞれの愛情に見ないふりをしてきたこと、あまつさえそれを重いとまで感じてしまってたこと、心のどこかでみぞれを見下してたこと(これについては今回述べてませんが後日また書きたいと思います)。
でも希美の希美たる部分って、「みぞれにそういう感情を抱いてしまう自分は最低だな」だと思ってるんだろうなってところ。だから「軽蔑されるべき」という言葉が出てしまう。
やっぱりいい子なんですよね、傘木希美。
物語の結末として
みぞれは青い鳥になれたけど、希美はリズにはなりきれませんでした。
「私、みぞれのソロを支えられるよう頑張るから。それまで、ちょっと待ってて。」
鳥かごは開けたけれど、手放しで「行ってらっしゃい」とはまだ言ってあげられてないんです。そもそもふたりでソロなんだから「支えられるよう」ってのもおかしな話なんですけどね。楽器の技術に自信がなくなっちゃったばかりだからちょっと卑屈になっちゃってる、という感じでしょうか。
映画はまだ続きます。久美子二年生編。そこで、希美がみぞれに「行ってらっしゃい」と言えるのか、楽しみですね。楽しみすぎて死にそうです。