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SIE WWSの吉田修平氏と「がんばれ森川君2号」の森川幸人氏が語るゲームとAI。BitSummit Vol.6のトークイベントをレポート
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印刷2018/05/14 13:54

イベント

SIE WWSの吉田修平氏と「がんばれ森川君2号」の森川幸人氏が語るゲームとAI。BitSummit Vol.6のトークイベントをレポート

 BitSummit Vol.6の2日めとなる2018年5月13日,ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏と,グラフィックスクリエイターでAI研究者でもある森川幸人氏のトークイベントが開催された。森川氏は,もちろんプレイステーション用ソフト「がんばれ森川君2号」を手がけた人物であり,昨年にはAIに特化した新会社,モリカトロンを立ち上げたばかりだという。

吉田修平氏(左)と森川幸人氏(右)

 そんな2人による今回のトークイベントは,「AI and Consoles」と題して,ゲームとAIの関係を語るというもの。ビジネスの世界におけるAIでは,ディープラーニングやマシンラーニングといった,大量のデータをサーバー側で処理する手法が主流だが,ゲームAIはそうした流れとは違ったところで発展してきたと切り出した吉田氏。

 森川氏はそれに同意しつつ,一般的に言うAIは物事の「正しい/正しくない」を学習させることが目的だが,ゲームAIに求められるのは“正しい”ではなく「楽しい」という答えであるのが大きく異なる点で,それゆえの難しさがあると指摘。また,ゲームAIは1/30秒,1/60秒という瞬間での判断を求められ,大量のデータを蓄積し,高性能のワークステーションで時間をかけて計算されるAIとは違うハードルの高さがあるという。

 モリカトロンでは,すでに開発が進んでいるゲームで,スクリプリトで動いているキャラクターをもっと生物的に動かすために,AIに乗せ換えるといった仕事をしていると森川氏は続ける。スクリプトをAIに変更することで,ゲームがどう面白くなるのかという吉田氏の問いには,スクリプトの場合はそれを書いた人の限界がそのキャラクターの限界だが,AIを使えば開発者の予想を超えた動きが生まれて生き物らしさにつながり,遊ぶ側はもちろん,作り手にとっても面白くなると答えた。


 その,開発者の予想を超えた動きの例として,森川氏はとある開発中のゲームで,AIがこちらからの攻撃が届かない場所に陣取って攻撃してきた事例を挙げた。その安全地帯は開発者でも気づかなかった場所で,AIがデバッグしてくれた例とも言えるだろう。

 吉田氏はこの話を受けて,SIEのオープンワールドゲーム「Horizon Zero Dawn」の開発においても,開発チームとデバッグチームが協力して,スタッフが全員帰った夜間にオートでBOTを走らせ,処理落ちやコリジョン抜けのデバッグを行っていたことを明かした。とかく,「心を作る」ことばかりにスポットライトが当たりがちなAIだが,疲れたり,文句を言ったりしないという特性を生かして,ゲーム開発そのものに役立てることもできるのだ。


 これまで,ゲームはグラフィックスのリアルさを追求する方向で進化してきたが,キャラクターの“心”は置き去りにされてきた。しかし,いよいよ心の部分もリアルにしていかなくてはならない時代になり,AIがそれに大きく貢献するだろうと熱弁を振るう森川氏に,吉田氏は深く同意。個人や小規模のチームがAIを活用するにはどうすればいいのかという吉田氏の質問に対し,森川氏は現在はかつてのようなフルスクラッチをせずとも,さまざまなAPIが公開されており,モリカトロンとしても,今後はUnityやUnreal EngineなどにAIのツールを提供していくことを検討していると回答した。

 AIというと,大手のデベロッパにしか手が出せないものと思いがちだが,インディーとAIは非常に相性がいいと森川氏は話しており,両氏は共に,あっと驚くようなAIの使い方をしたゲームが登場してくることへの期待を述べて,トークを締めくくった。

BitSummit Vol.6公式サイト

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