こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。
皆様にお知らせがあります。今回からの8回は、「一介の外科医、日々是絶筆・特別編」として毎週記事をお送りいたします。
この特別編でのテーマは、「私の医者としての本音を書いていく」というもの。私が医者として働いてきた中で、最も言いづらい部分、つまり「本音」部分を書いていきます。これまで医者が語ってこなかった内容が主になります。もちろん、ただの週刊誌的な「医者ってこんなひどい人たちなのです」などという露悪を書くつもりはありません。私が書きたいのは、皆さんに「こんな医者の本音を知っていれば、こう接したのに」「医者ってこう考えていたんだ、納得」と感じていただけるような、皆さんと医者の距離を縮めるような事柄です。
ご意見やご感想、ご質問がありましたら、ぜひお寄せください。なお、私中山のフェイスブック、ツイッターでも構いません。
1日20錠はザラ
「私の薬はなぜこれほど多いのだろう」
60歳代くらいまでのお若い方(外科医の感覚ではそうなります)は、あまり実感していらっしゃらないかもしれませんが、70~90歳代ではそう感じる方も多いと思います。
私は外科医ですが、アルバイトで内科外来をやり、2カ月だけですが内科と精神科の病院の院長を務めたこともありました。それらの経験から考えると、80歳代になると大量の薬を飲んでいる方がかなり多くいらっしゃいます。1日10種類以上、合計で20錠以上も飲んでいる患者さんも珍しくありません。薬20錠は、ご飯茶碗一杯分ほど。これでは薬を飲むだけでお腹いっぱいになっちゃいそうだな、と思います。
では、なぜ薬がそれほど多くなるのでしょうか。
実は、薬の種類が多い理由は、残念ながら医者のせいなのです。
人間も80の声を聞く頃になると、病気を患っている人が増えてきます。それも一つや二つではないことが多いのですね。例えば胃潰瘍、便秘、不眠、腰痛、花粉症……といった具合です。
そして我々医者は、病気ごとに薬を出します。皆さんもご存じの通り、医者は内科・外科・整形外科・耳鼻科などと「科」が分かれています。ですから、胃潰瘍と便秘と不眠は内科で、腰痛は整形外科で、花粉症は耳鼻科で、それぞれお薬が出る、ということが起きるのです。胃潰瘍に1日4錠、便秘に1日6錠、不眠に2錠、腰痛に3錠、花粉症に2錠と点眼薬、点鼻薬。計17錠と点眼薬、点鼻薬になります。これに、「過去に狭心症をやった」なんてあったら、さらに増えてしまいます。
複数の薬投与がもたらす身体機能への害についての最新研究などの情報も期待していないので、肩すかしをくらった。この視点はあうべき医療の方向性を考えて行く上で重要ではないか?
あえて記事の付加価値を見つけるならば、医師が薬の処方を多くすればすれるほど、医師の金銭的取り分が少なくなるという仕組みくらいか。(2018/05/14 12:39)