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もう5年以上も前、この「極言暴論」を書き始めたころ、ユーザー企業のIT部門やITベンダーの幹部たちが大切にしている価値観を、私が「アホちゃうか」と遠慮会釈もなくバッサリ斬り捨てるものだから、記事を書くたびに彼らから文句を言われたり、罵られたりした。だが最近は「その通り!」という反応がほとんどで、中には「ファンです」という人まで現れるようになった。全くもって、皆さん、聞き分けがよくなったものである。
だが中には、いまだに頑として拒絶されるものがある。「SIerの幹部が『我々は何があっても絶対に逃げないのでお客様から信頼を得ている』と胸を張るのは、愚かの極み」という私の主張である。ユーザー企業の幹部が文句を言うのならまだ理解できるが、SIerら大手ITベンダーの幹部までが異議を唱える。それどころか「絶対に逃げないことが、我々のブランド価値」とまで言い切る幹部が多い。
いやはや「アホちゃうか」どころの話ではない。もはや理解不能である。とは言え、理解不能などと言って済ますわけにもいかないので、「絶対に逃げないことがブランド価値」との妄想がいかにアホなのかについて、2つの理由を挙げて明確に示す。そのついでに、できるかできないかはともかく、これからの時代にSIer、下請けITベンダーを問わず培っていくべきブランド価値について、上から目線で教えることにする。
前提として、どうしてSIerの幹部はこんな愚かな妄想を抱くのかを私なりに分析してみる。もちろん理解不能と書いたぐらいなので単なる推測にすぎないが、SIerの幹部が「絶対に逃げない」と叫ぶとき、意識しているのは彼らの重要顧客からの視線である。どんなSIerにも、経営トップが「どこまでも御社について行きます」と揉み手するような超ビッグユーザーがいる。確かにそんな重要顧客を意識すれば「逃げる場合もあります」とは言えまい。
さらに、ユーザー企業やパートナー企業(下請けITベンダーのこと)との信頼関係が重要というシステム開発の原則について、勘違いしている面もあるかもしれない。どう勘違いしているかと言うと、「絶対に逃げないことが信頼関係の大前提だ。我々は逃げないからパートナー企業も絶対に逃げるなよ」といった具合だ。これらの推測が正しいとすると……うーん、やはりアホである。