政治

防衛官僚、基地環境浄化に横やり  米の前向き姿勢阻む 09年協議で 

「ウィキリークス」が公開した米機密公電。在日米軍基地を巡る環境保全問題について、米側が「柔軟な姿勢」を見せると地元の立ち入り要求と環境汚染の回復コストを招くとして、日本側官僚が慎重姿勢を求めたと記録されている

 2009年に開かれた日米両政府の局長級会合の場で、在日米軍基地の環境保全に関する新たな取り決めについて米側が「柔軟な姿勢を示せる」と前向きな提起をしたにもかかわらず、日本側の官僚が米政府に慎重姿勢を取るよう促していたことが12日までに分かった。内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米機密公電によると、当時防衛省防衛政策局長だった高見沢将林氏(現日本政府軍縮大使)がキャンベル米国務次官補(当時)に「米政府が柔軟な態度を示せば、地元がより基地への立ち入りを求め、環境汚染を浄化するコストを背負いかねない」などと述べていた。琉球新報は高見沢氏に発言の有無や意図を質問したが、回答は得られなかった。

 

米軍基地で環境事故が起きるたびに沖縄県内の市町村や県は立ち入り調査などを求めてきたが、米側が日米地位協定に基づく排他的管理権を盾に拒む事態が相次いできた。これに加え、日本政府も基地を抱える地元の意向に反するような対応を米側に促していた。

 ウィキリークスが公開している公電は09年10月15日付の在日米大使館発。米軍普天間飛行場の移設問題を巡り、10月12、13日に開かれた日米両政府の公式・非公式会合の内容を記録している。

 会合は当時の民主党政権が普天間飛行場の名護市辺野古移設計画を検証するとしていたことを受けて開かれたと書かれている。
 米公電によると、長島昭久防衛副大臣(当時)がキャンベル氏らに対し、普天間飛行場を辺野古に移設する場合は(1)嘉手納基地の騒音軽減(2)普天間の危険性除去(3)日米地位協定に関係した環境保全策の強化―を併せて進めるべきだと提言した。環境保全の取り決めはドイツや韓国が米国と締結している協定が「先進事例」になるとしていた。

 キャンベル氏らは日本が現行移設計画を進めることを前提に、これらに「柔軟な姿勢を示せる」と応じたと記録されている。

 しかしその後、長島氏らを除いた昼食会合の場で高見沢氏が米側に対し、早期に「柔軟性」を示すことは控えるよう求め、その理由の一つとして環境問題に触れ、基地立ち入りに関する「地元の要求」を高めかねないとの懸念を伝えたと記録されている。

 この発言が事実かどうかについて防衛省は琉球新報の取材に対し「日本政府としてはウィキリークスのように不正に入手、公表された文書にはコメントも確認も一切しない」と回答した。 (島袋良太)