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【社説】

強い中国共産党 歓迎一色ではあるまい

 中国の習近平国家主席は自身に権力を集中させ、共産党による指導を一層強めた。豊かで強い国を目指すためというが、異論を封じるような監視強化が、社会の分断を招いていることが懸念される。

 習氏は三月の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で、憲法で定められた国家主席の任期制限規定を撤廃し、事実上の独裁体制へ道を開いた。共産党の指導が中国の社会主義の「最も本質的な特徴」とも憲法に書き込んだ。

 強い党の実現と自身の権威強化がなければ、習氏が唱える「中華民族の偉大な復興の夢」は成し遂げられないとの自負があろう。

 だが、最近の中国では習氏を「人民の領袖(りょうしゅう)」と持ち上げる呼び方も目立つ。毛沢東時代を彷彿(ほうふつ)とさせる動きである。このままでは個人崇拝につながりかねない。

 全人代に合わせ、ドキュメンタリー映画「すごいぞ、わが国」が封切られた。習氏の演説や地方視察の情景が盛り込まれた「習氏礼賛映画」といえる。中国メディアは「大ヒット」と伝えるが、鑑賞した上海市民からは「職場の動員で見た」との声も聞かれた。

 全人代では「あらゆる公職者」を監視する「国家監察委員会」が新設された。習氏一期目の反腐敗闘争は主に共産党員が対象だったが、今後は文化、教育、メディア機関幹部などにも監視と摘発の網が広がる。党に異論を唱える雰囲気はさらに失われるだろう。

 出稼ぎ農民を強制的に農村に追い返す動きが北京はじめ大都市で目立ち始めた。党・政府幹部や都市住民は、彼らを「低端(低ランク)人口」と蔑(さげす)み、社会の亀裂も深刻化している。

 礼賛映画を見て「党の指導で社会がこれほど発展した」と興奮気味に語る人は多い。一方、最近の政治状況を「独裁への動き」と批判してきた知識人らはあまりの監視強化に口をつぐみ始めた。

 共産党政権に反発する少数民族への締めつけも厳しい。十年前に僧侶らの大規模騒乱が起こったチベットでは五人以上の集会が禁じられ、僧侶の「愛国再教育」も進む。だが、騒乱以降も抗議の焼身自殺者は百五十人余。

 習氏は「先進諸国の行き詰まりが、市場経済と民主主義の限界を証明した」と述べ、一党独裁に自信をみせる。だが、改革開放政策により中国の人たちも国際社会の実情を自分で見る機会が増えた。共産党支配の強化について、受け止め方は歓迎一色ではない。

 

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