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スイングするフリージャズの衝撃 ドラマー森山氏 ドラマー森山威男ジャズを語る(上)

2018/5/12

 1970年代前半に山下洋輔トリオで活躍したジャズドラマーの森山威男(たけお)氏が再び脚光を浴びている。一定のビートを感じさせないフリースタイルのドラム奏法が今の聴き手にも衝撃として伝わる。当時の奏法を分析した著書も出版した。フリージャズとは何だったのか。ジャズの基本スタイルのフォービートに回帰した今も息づく「スイングするフリー」の魅力を追った。

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 ピアニストの山下洋輔氏を中心とした「山下洋輔トリオ」はメンバー交代をしながら1966~83年に活動した。森山氏が山下トリオで活躍したのは初期の67~75年。74年には山下氏、森山氏、サックス奏者の坂田明氏の3人で西ドイツのメールス・ニュージャズフェスティバルに出演し、フリースタイルのドラム奏法が欧州で高く評価された。ビートに従属せず、大音量で音数多く、自由かつ感情の赴くままに数十分間たたき続ける森山氏のドラム。その圧倒的なエネルギーに欧州の聴衆は震え上がったという。

何拍子か分からない連打に衝撃のアクセント

 しかし75年に山下トリオを退団して以降、森山氏は77年結成の「森山威男カルテット」などを通じてフォービートジャズに回帰した。異様な不協和音と爆音で駆け抜けた山下トリオ時代の森山氏のフリー奏法とは何か。熱烈なファンの一人、経済学者で東京大学名誉教授の松原隆一郎氏が監督・構成して1冊の本が生まれた。それが2017年12月初版発行の森山威男著「森山威男 スイングの核心」(ヤマハミュージックメディア)だ。

 彼のフリー奏法を解析したDVD付きのこの本を見て聴いて読めば、森山氏のドラム演奏の現在を知りたくなる。そこで4月20日、岐阜県可児市在住の森山氏が横浜市でライブをするというので、現地に向かった。JR桜木町駅から数分歩くと、いくつもの小路に飲食店が並ぶ昔ながらの繁華街、宮川町にたどり着く。小さなビルの2階に有名なライブハウス「ジャズスポット ドルフィー」がある。リハーサルのため店内に入ってきた森山氏は人当たりのいい好好爺(こうこうや)といった感じ。しかしひとたびドラムを前にすると、変拍子の洪水のような強烈な連打を響かせる。彼のフリー奏法は健在と確信した。

 「基本となるのは2と3の組み合わせ、5連音符の単位だ。(普通の4拍子や3拍子に聞こえないため)テンポがカウントしにくい。それがフリーには非常に適していた」と説明し、フリースタイルのビートのパターンをたたいてくれた。何拍子か分からず、ビートとも思えない連打。「それでもスイング感がある」と松原氏は指摘する。シンバルやバスドラムを加えていき、「ハイハットを衝撃の音として使う」と森山氏は言いながら苛烈なアクセントを加える。ジャズよりは交響曲に近い劇的で壮大なシンバル音。東京芸術大学音楽学部器楽科に在学中から山下トリオに参加し、進化していったフリー奏法について、リハーサルを前に森山氏にインタビューした。

 
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