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5月13日、最近ひどくレベルの低い登山者が多い件について

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風薫る5月、下界は春~初夏の陽気でも、穂高にはまだまだ残雪豊富な雪山登山のシーズンです。今日、日曜の朝も7時過ぎからミゾレ交じりの雨が降りだしました。

 

そんな5月の穂高・岳沢には時としてとんでもない登山者が来たりします。

一番多いのが、夏と同じく重太郎新道を登り、普通に吊尾根を通って穂高へ行けると思っている人たち。このブログでも散々書いておりますが、この時期に前穂に登るもっとも一般的なルートは「奥明神沢」を経由するもの。ただし、登山地図などにはルートとして記載されていません。重太郎新道~吊尾根は雪壁の登下降や急な雪渓のトラバースが連続し、極めて難易度の高いルートとなり、たとえ雪山装備を持っていても通行は容易ではありません。

雪山に登らない人であれば、「そうなんだ…」と思うのもわかりますが、雪の穂高に登ろうとするならそれくらいの事前情報収集をしてくるのは当たり前のこと。いまや、ヤマレコを中心にちょっと検索すれば、そんな登山レポートがたくさん出てくる時代に、それすらしないで穂高に登ろうと来る人たちの多いこと。

 

得てして、そういう人たちは小屋に着いてから聞いてきます。「重太郎新道ってどこですか?」

 

我々はこの時期の登山者から「重太・・・」というキーワードが発せられた時点で警戒レベルを一気に上げて対処します。そう、そんな事前勉強すらしてこない登山者をここより上には上げないために。装備や、身のこなし方まで、穂高に登れる人間か細かくチェックしています。宿泊者やテント泊の方たちであれば受付時に計画を細かく聞けるので、問題ないし、仮に「勘違い」をしている人がいてもその時点で指導し、計画を修正してもらうことが可能です。

問題なのは日帰りで来る人たち。

一応、声掛けはなるべくしているのですが、それらを完全にカバーできるわけではありません。

 

さて、金曜の午後の事、単独の72歳の男性が明日は奥穂南稜へ行くと言って宿泊しました。言った言葉が「トレースが全然ないね」

直近でまとまった雪が降ったからトレースなんてなくて当然なのにこの発言、「リスク管理」の出来ていない人とすぐに分かります。さらにはバリエーションルートである奥穂南稜へ行くのに、他人のトレース頼りであること。加えて。南稜を登ったあと、吊尾根経由で岳沢へ戻ろうと言う。

通常、南稜へ登った人は穂高岳山荘方面へ抜けるのが一般的で、吊尾根で戻れるのはかなり技術の高い人たちです。実際に、無理して岳沢へ戻ろうとして遭難⇒救助要請している登山者も数多くいます。

私はこの方とは直接会話はせず、他のスタッフが話をするのを聞いていただけですが、この登山者のレベルは南稜に行くレベルではないとすぐにわかりました。もし、この日の宿泊者がこの人一人なら私が指導したかもしれませんが、この日は他に2組のガイドパティーがいたので、きっと会話の中でそっちへ発展していくだろうと、この日は特に何も言わずにおきました。小屋番風情が言うよりは、しっかりしたガイドさんのほうが説得力があるでしょうから。

 

そして翌朝、7時過ぎにこの登山者は小屋へ戻って来られました。

聞くと、ちょうど南稜へ向かうために宿泊していた山岳ガイドに追いつき、「南稜はどこから登ればいいか?」と聞いたらしい。

このガイドさんは怒って、「そんなことも知らないヤツの来るところじゃない、帰れ!」と追い返してくれたそうです。

そりゃそうですよね。放っておけば、絶対に後ろから付いてくるでしょう。ガイドさんにしてみれば、かたや経費込みで10万円くらいのお金を支払ってくれている顧客と、タダで後ろから付いてくる他人、これほどイヤなことはありません。しかも、その他人が滑落でもしようものなら、無視するわけにもいかずに救助なり救護なりする必要も出てきて、顧客の依頼を途中で台無しにしてしまう恐れだってはらんでいます。

どう考えても雪の南稜に登るには分不相応な人でしたから、このガイドさんが追い返してくれて助かったと我々は考えています。

 

そして土曜日に起きたもっとお粗末な事件。

我々が岳沢パノラマからの帰りにすれ違った若者3人組。

私は雪面をサーッと滑り降りたので会話はしませんでしたが、新人君がなにか話をしていたようです。「前穂にはどう行けばいいか、雪の状態はどうか」とか・・・

小屋に戻ってからこの話しを聞いた瞬間に「ヤバいなあ」と思いましたよね。

こういう質問をする輩はしっかり諭して、お帰り願った方が賢明ですが、新人君にはまだそれだけの知識もなければ会話もできません。

結果・・・

それから2時間後、警察へ救助要請が入ったそうです。

松本署からの情報に寄れば、3名のうちの2名は奥明神沢から前穂へ向かったが残る1名はなぜか重太郎新道でも奥明神沢でもない尾根か沢を登り、途中で進退窮まったので「助けてくれ」と救助要請。他の2名はどうしたかと聞くと、連絡がつかないのでわからない、という。つまりは3人組の一人がバラバラな行動(ルートでもなんでもない場所を登った)を取り、登るも下るもできないような場所へ行ってしまったようです。

結局この男性Aは怪我もないのに、午後1時過ぎにヘリで救助されました。

 

もちろん病院などには向かわずに松本空港で下ろされ、警察官にこっぴどく事情聴取と説教を受けて、そこで解放されたことでしょう。

 

さて、残る2名の動きは?

こっちも気になるので、仕事の合間に外で双眼鏡を覗いて動向を探ろうとしますが、手掛かりはまったくありません。

そんななか午後3時前にまた松本警察署からの連絡が…

 

残る2名は前穂の山頂まで行ったが、女性Bがすっかりバテテしまい、また下りの急な雪面に怖気づき、下山できないとの救助要請が入りました、と。

 

まあ、なんていうかお粗末の至りとしか言えない遭難ですよ、これ。

そもそも遭難なのそれって!?

 

担当警察官には、「そんなヤツら放っておけよ!」と言いましたが、「本当にそうなんですけど、これで自力下山させて怪我でもされたら困るので…」と本日2回目のフライトが岳沢上空に飛来してきました。

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残る男性Cは自力で下りるということで、しばらくすると奥明神沢に姿が見え、時間も午後5時を過ぎていたので小屋に寄って泊まるかな?来たら思いっきり説教してやろうと思ってたのですが、どうやら小屋は素通りして下りて行きました。おそらくは午後7時を過ぎて、上高地も夜間通行止めの時間に入っていたはず、どうやって仲間を迎えに行ったかはわかりません。

 

まあ、こうした件にはいろいろな意見があるかもしれませんが、あまりにもひどい事例。しかも救助ヘリを2回も飛ばさせたわけで、それも怪我をしているわけでもないのに。

 

数年前、「岳」(漫画のほう)が流行ったときに、安易に救助要請する登山者の話しが何度も書かれていましたが、きっとそれでも読んで、山で困れば110番とでも思っていたんでしょうね。あのマンガには本当に困ります、漫画としてフィクションの話しなら問題はないのですが、設定が槍穂を中心に妙にリアル過ぎて、ああいう話しがリアルな世界だと思う人間が多くなってしまいました。

話しがそれてしまった・・・

 

今回の3名を始め、ヘリで救助するのにどれだけのリスクがあるのか!?分かってない人が多いんでしょうね。

この界隈の人間としては長野県の防災ヘリや東邦航空の輸送ヘリが、松本空港関連では春に小型チャーター飛行機が立山周辺で墜落した事故もあったりと、かかわる航空機が一年に3基も墜落する事故が相次ぎことさら神経質になっている中でのこのブザマな遭難事件。

この程度の遭難ではTVニュースはおろか、新聞記事になることなく消えていくことでしょうが、あまりにもひどいこの事件、「こんなヤツらもいるんだ!」 「こういうことにならないように気を付けなければ!」という反面教師的材料としてご紹介させていただきました。

こんな轍を踏まないように、登山計画は慎重に、山での行動はさらに慎重にお願いしつつ、楽しい登山をどうぞ。

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