強行採決されそうな「高度プロフェッショナル制度」は、一億総ブラック企業従業員にする欠陥制度
のどれか一つを選べばいいのです。企業側はそもそもできるだけ低い賃金でたくさん働かせたいわけなので、4を選ぶ企業が多くなるでしょう」
しかし、対象は1075万円以上となるという話が以前からあったように、それなりに高収入の人が対象で年収400万円程度ではそれに該当しないのではないかという声も依然として根強いというが……。
◆経団連の狙いは「年収400万円から適用」
「1075万円というのはあくまでも例えであり、実際は平均給与の3倍の額を相当程度上回るものと設定されています。しかし、そもそも経団連は第一次安倍政権で高プロの元とも言えるホワイトカラーエグゼンプションが検討されたときに出された提言(参照:経団連)では、”年収400万円以上で時間の制約が少ない頭脳系職種、つまりホワイトカラー労働者をすべて残業代ゼロにすること”と記載されていたんです。最終的なゴールはいまだにそこを狙っているのは間違いありません。
それに、現在の法案でもやり方次第では理論上年収400万円以下でも適用することが可能になります。
高プロで最大限に労働者を働かせようと思ったら、365日から使用者が付与を義務付けられている休日日数104日を引いた261日働かせることができます。前述した通り、労働時間規制がないので、24時間の就業時間にすれば、6264時間働かなければならないという契約も可能になります。無茶苦茶だと思われるかも知れませんが、労働時間規制を外すということはこういうことなんです。
しかし、そんなぶっ続けで人は働けません。するとどうなるか? 使用者側にとって、控除は可能なんです。労働時間と賃金のリンクを外すなどと謳われてますが、その反面欠勤控除はそのまま。おかしいですよね?
それを前提に、年収1075万円をモデルケースにされることが多いのでその場合で考えてみましょう。まず、年収1075万円の人を6264時間働かせることが理論上可能なので、実質の時給は1075万円÷6264時間となり1716円となります。すなわち、もし1時間働けないと1716円ずつ給料が減ることになります。
高プロの年収要件はあくまでも『見込み』なので、実績などは不問で使用者側が『君はこれから年収1075万円の見込みとするので、高プロ適用になるから』と言えばそのまま適用になる。その後、欠勤などで下がって控除される分については、あくまでも『見込み』なので関係ないとされてしまうんです。
すると、単純に時給1716円の労働者となり、労基法の労働時間規制で許される労働時間、すなわち現在の適法状態の労働条件で計算し直すと年収357万7860円になってしまうんです」
◆メディアの忖度か? 「残業代ゼロ法案」という言葉も使えず
そんなに無茶苦茶なシステムなのに、なぜサラリーマンから大きな反発が出てこないのか。
「確かに、ブラック企業の問題はSNSなどでも左右関係なく盛り上がります。しかし、高プロの問題はなかなか火がつかない。それは第一に法律や制度の話なので、具体的な被害者や敵がいないため、わかりにくいという点もあるかもしれません。
また、労働組合の発信力が弱いことも挙げられます。例えば、連合のアカウントですら私個人のアカウントよりフォロワー数が少ないんです。これは連合だけの問題でなく、その他の労働組合もSNSなどでの発信を強化してほしいなと思っています。
あとはやはりメディアの問題です。先述したように、多くのメディアが法案も読まずに官僚のレクを垂れ流していたことからもわかりますが、メディアがあまりに無批判過ぎました。例えば、ある記者さんに、『残業代ゼロ法案』という呼称のほうがいいと提案したことがあるんですが、上からその呼称は使えないと言われていると返されたことさえありました」