マライア・キャリーが、「双極性障害(バイポーラー)」であることを、セレブのゴシップ誌『ピープル』の4月23日号で告白した。
全米No.1シングルを18曲、シングル・アルバムで2億枚以上を売り上げた歌姫マライアは、2001年から双極性障害で心理療法と薬物治療を受けていたという。
インタビューによれば、マライアはずっと不眠症だったが、たんに眠れなくて寝床で悶々と過ごすわけではなく、寝ずに仕事をし続けていたという。周囲の期待に応えようとイライラしていたらしい。
そして壁にぶつかるとエネルギー切れで悲しく孤独な気分になって、自分のこれまでのキャリアに見合わないパフォーマンスしかできていないと思ったという。
寝ずに仕事をしているのが気分のアップになった躁状態、やる気がなくなった状態が気分のダウンしたうつ状態で、その交互の繰り返しだとして「双極性障害」という診断になったようだ。
皆さんは感情のアップダウンする病気として「躁うつ病」という名前を聞いたことがあるかもしれない。
ある程度以上の世代なら、作家の「どくとるマンボウ」こと北杜夫さんが自分の躁うつ病をエッセーにしていたのを記憶されているかと思う。
躁うつ病と双極性障害は、名前は異なるがほぼ同じ病状を指している。だが、ちょっとした名前の違いは実は大きな違いにつながっている。
1990年代に起きた躁うつ病から双極性障害への名前の変化をたどると、いまの精神医学の少し歪んだあり方が見えてくる。
感情がダウンしたうつ状態については、はっきりした不幸な出来事もないのに本人が気分の落ち込みに苦しみ、会社や学校を休んでいるときに、それを「病気」と見なすことには、そう不思議はないだろう。
これに対して、躁状態とは本人にとってみれば気分がアップして高揚した状態だ。何でもできると考えて、いろんなことに手を出し、多くの場合は失敗する。金銭上のトラブルで家族や周囲が迷惑を被ることも多い。
そのため、社会生活という点では躁のほうがより問題になりやすい。