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見習いに本丸を譲渡した元審神者のもとに封印本丸の鶴丸が降ってきた話。https:...

いろは@通販してます

鶴っと審神者に復帰します。⑦

いろは@通販してます

5/3/2018 23:40
見習いに本丸を譲渡した元審神者のもとに封印本丸の鶴丸が降ってきた話。
https://iroiroirohaaa.booth.pm/items/663949
中学生になった私は入学してすぐの健康診断で審神者としての適性が発見された。
ほぼほぼ拒否権なしの審神者就任。
慣れない本丸での日々、さっぱり分からない戦に戦術。
おまけに刀剣男士は皆男士。
大人の見目の男士か、子供の見目の男士の二択。
少なくともその時点で本丸にいた男士はそうだった。
厳しく接してくる初期刀も苦手だったが、主というだけで無邪気に慕ってくる短刀たちも苦手だった。
鯰尾が顕現したのはそんな時だった。
『俺の名前は鯰尾藤四郎。燃えて記憶が一部ないけど、過去なんか振り返ってやりませんよ!』
第一印象は快活、そして次に女の子が来ただった。
まぁご存知の通り、鯰尾は男士なのだけど。
それでも私は鯰尾が来てくれて嬉しかったんだ。
『主さん、今日は遅かったじゃないですか。俺、待ちくたびれちゃいましたよ』
『それで、その学校ってのは最近どういう感じなんですか?俺も行ってみたいなー』
何事にも興味津々の鯰尾は私の現世での生活にも関心が高かった。
家族のこと、学校のこと。
目を輝かせて聴いてくれた。
『へぇ、主さんは一人っ子なんですね!俺は兄弟いっぱいいるんですよ!長兄は一期一振って言うんですけど、粟田口唯一の太刀なんです。早く主さんにも紹介したいなぁ』
『ふうん、その試験ってのがもうすぐあるんですね。じゃあ勉強しなくちゃ大変だ。大丈夫、主さんならへいちゃらですって!』
本丸に着いたらすぐに時間が惜しいとばかりに戦術や陣形の勉強を開始しようとする初期刀。
隙あらば一緒に遊ぼう、遊んでくださいとわらわらと寄ってくる短刀たち。
そんななか鯰尾は唯一と言っていいくらい、私のペースで話せる相手だった。
いや、もしかしたら私に合わせてくれていたのかもしれない。
なんてことを今になって思う。
執務室でピンと背筋を伸ばした初期刀とふたり慣れない書類と格闘しているとき、もう何度目かのもっと本丸に来られないのか口撃を受けているとき。
計ったように鯰尾は来てくれた。
『あっるじさーん、遊びましょー!!』
『そろそろお茶にしませんかぁ?あ、今日のお茶は俺が淹れてみたんですよ。感想聞かせてくださいね!』
『鯰尾、また君か!今、主は手が離せないのが見て分からないのかい?全く、少しは空気を読んだらどうなんだい?』
眉を吊り上げる初期刀にも鯰尾は動じない。
『そんなに怒ってたら、血糖値上がっちゃいますよ。そもそも俺たちに血糖値とか関係あるのか知りませんけど。主さんはどう思います?』
鯰尾がいるだけで、その場の空気が柔らかくなる。
あの頃には分からなかったけど、一見空気が読めなさそうな鯰尾は実はものすごく空気が読める刀だったんだ。
まぁまぁまぁとへらへら笑いながら怒れる初期刀と私の間に割って入る鯰尾。
ほら行きますよーと私の手を取って執務室から連れ出す鯰尾。
駆けだす私の後ろから聴こえる初期刀の怒鳴り声。
今となっては全てが懐かしい思い出だ。
私は鯰尾に感謝していた。
本丸を訪れたときに鯰尾が遠征やたまの出陣で留守にしていると分かるとがっかりするくらい、鯰尾の存在は大きかった。
私にとって鯰尾とこんのすけはかけがえのない存在だったんだ。
だからその鯰尾に感謝の念を伝えたいと思うのは当然の流れだった。
私なりの感謝、つまりは審神者である私にしか出来ないこと。
口下手だった私には言葉で伝えるよりも形で伝えるほうが気が楽だった。
本当は鯰尾の弟である短刀たちと仲良くなるのが一番良かったんだと思う。
でも何振りもいる短刀たち、いつもひと塊になって主様主様と近寄ってくる短刀たちが私はどうにも苦手だった。
もっと気安く接して欲しいだとか、私は主と敬われるような立派な人間じゃないだとか理由は色々とあった。
でもそれを上手く伝えられるほど私は器用な人間でもなければ大人でもなかったんだ。
主様、主君。
そう呼ばれるたびに感じてしまう後ろめたさ。
『もっと本丸に来てください、寂しいです』
短刀たちの言葉がちくちくと私の良心に突き刺さる。
『おいおい、お前たち。大将が困ってるだろ?大将には大将の都合ってもんがあるんだ。そうだろ、大将?』
そう言って弟たちを宥める男前な初鍛刀。
だがその彼だって、弟たちの姿が見えないところでは
『あいつらももっと大将と触れ合いたいって思ってるんだ。今度時間作ってくれねぇか?なに、あいつらも大将と仲良くなりてぇだけなんだ。な?』
と言ってくる。
ひねくれていた当時の私は短刀たちと仲良くなるよりも新たな刀剣を鍛刀することを選んだ。
常日頃ろくに本丸に来れない今の状態でこれ以上刀剣を増やすのはどうかと思うと尤もらしい理由をつけて鍛刀を渋っていた、あの頃の私。
私は鯰尾に喜んでほしかった。
時間を作り短刀たちと触れ合って仲良くなれば、鯰尾はきっと喜んでくれたことだろう。
けれどもそれでは何だか初鍛刀の彼の言葉に従っただけのようで癪だと言えば言い方が悪いが、彼の望みに応えただけのような気がしてならなかった。
私は鯰尾のために何かをしたかった。
いつもお世話になっている鯰尾のために。
それが新たな刀剣の鍛刀。
こんのすけもお堅い初期刀も喜んで賛成してくれた。
狙うは粟田口唯一の太刀、一期一振。
鯰尾や初鍛刀や短刀たちから耳に胼胝ができそうなくらい聞かされた粟田口の長兄。
彼らの自慢の兄だ。
調べたところによると一期一振はいわゆる希少な刀でなかなか鍛刀しにくい刀剣なのだそうな。
もし私の本丸に来てくれたなら、初めてのレア刀剣になるだろう。
燭台切しか太刀のいない私の本丸では一期一振は大きな戦力となってくれるにちがいない。
まぁ、そもそもろくに出陣していないのだが。
それは置いておくとしても、私が一期一振鍛刀を決意したもう一つの理由。
それは一期一振や鯰尾の弟たちの存在だった。
私だって申し訳ないとは思ってたんだ。
だから鍛刀した一期一振を通じて、短刀たちとももう少し仲良くなれたらいいなと淡い期待を抱いていたんだ。
鯰尾にも短刀たちにも、他の刀剣たちにも内緒の秘密の鍛刀。
こっそり鍛刀して鯰尾を驚かせたかった。
こんのすけと初期刀を伴い、資源を投入する。
勢い良く燃え盛る炎。
徐々に形作られていく刀を前に私は頭を垂れ祈りを捧げた。
鯰尾への感謝の気持ち、彼に喜んでもらいたい、彼の弟たちとも仲良くなりたい。
そんな気持ちを込め、私は息を呑み電光掲示板をじっと見つめた。
鯰尾に喜んでもらえますように、彼の弟たちにも喜んでもらえますように。
私の感謝の気持ちがどうか伝わりますように。
そんな私の願いが通じたのか、電光掲示板に表示されたのは03:20……、なわけはなかった。
早々上手く物事は運ぶわけがなかったよね。
電光掲示板に映る数字はまさかの00:40。
鯰尾が顕現されて以来のその数字。
太刀どころか打刀ですらない。
私は鯰尾に喜んでほしかった、彼の弟たちにも喜んでほしかった。
そう願いを込め、鍛刀した。
粟田口唯一の太刀にして長兄、一期一振が来てくれることを祈って。
だが現れたのは鯰尾と同じ脇差の彼、骨喰藤四郎だった。
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