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[第二節【予兆】2]
「そして口実を作れたとしても協会を潰せる勢力は限られている…真っ先に予想出来るのは帝国か共和国。向こうは国内が不安定で不用意に冒険者に動かれたくないハズだ。けどそれなら国内の協会を潰せば良い。つまり君達の雇い主は…エリュシオン政府の関係者だ。そうだろう?」
「あははははは!凄いやお兄さん♪」
少女が無邪気に笑い声を上げ手を叩く。しかし次の瞬間、少女の目から無邪気さが消えた。
「尚更生かしておくワケにはいかなくなっちゃった…♪そうよね♪壱、ネーナ?」
「ああ。悪いが始末させて貰うぜ?」
「せめて苦痛が無いように殺して差し上げましょう」
三人が目付きを変えてそれぞれ構える。それを見てアルス達は悟った。勝つことは出来ないと。ならばせめて抵抗はしてやろうとこちらの三人も剣を構え--
「助太刀しよう!」
「援護します!」
「間に合ったね!」
聞き覚えのある少女三人の声が部屋に響き、雷の魔法と氷の刃が三人に飛翔する。壱達は危なげもなくそれらを避けると再び構えの姿勢を取った。
「せやあっ!」
「何ィ?」
桜が太刀を振るい壱を大きく後退させ、自らもアルス達の元へと後退する。
援護をしてくれたのは桜、ティール、スノーの三人。もしかしたら先に壱の餌食に…という心配が杞憂に終わりアルスは胸を撫で下ろした。スノーがアイコンタクトで「大丈夫?」と尋ねてくるので頷き安心させる。彼女とは学生の時、もとい幼少期から幼馴染みとして親しくしてきた。そんな彼女を危険に晒すワケにはいかないし、そんな事をすれば昔から優しくしてくれたシュヴァルツ領主に面目が立たない。アルスは壱達の方へと向き直る。
「皆、ありがとう。さて…六対四だけど…どうする?」
「ヘッ…言うじゃねえ…かッ!」
アルスの狙いとは裏腹に壱が飛び出し拳を放つ。先程の軽い一撃でもあの威力。今度は当たれば即死の一撃だろう。
「セヤァッ!」
アルスが長剣を振り応戦する。物心付いた時から鍛練を続けて来た彼の剣捌きは達人の域にも等しい。拳と剣がぶつかり衝撃波が発生した。
「くっ…」
拳のモノとは思えない威力と衝撃に押されながらも意地だけで押し返す。次の瞬間、壱の体を赤いオーラが包み込んだ。
「付いてこれるかァ!?」
壱の体が赤い残像を纏い、目にも止まらぬ速さで駆け抜ける。
「うっ…!?」
次の瞬間、アルスは背中から壁に猛スピードで叩き付けられた。背中を打った痛みと、遅れて腹部の激痛が彼を襲う。壱の体を覆っていたオーラが消え、彼の速さが元に戻った。そして壱がゆっくりと、笑みを浮かべながら歩いて来た。
「アーくん!」
スノーがアルスの元へと駆け寄りながら壱に氷の槍を何本も放つ。しかし壱はそれを予知していたかのように危なげなく、優雅に避けた。
「くっ…あちらは…!…ッ!?」
「マズそうですね…うっ…!?」
「余所見してる暇は無いよ?お姉さん達♪」
桜とティールに紫髪の少女が無邪気な笑みを上げ肉薄する。その小柄な体からは想像も出来ない程の速さでダガーを振るう彼女に、次第に二人は追い詰められていく。
「ウホッ!ウホホヘッ!」
「この猿…!」
レンは一人でティタンと呼ばれた猿の魔物に斬りかかる。しかし何かしらの術を掛けられているのか、猿の剛毛を斬り裂く事ができない。
「やりますわね」
「……」
ネーナと呼ばれた少女のワイヤーとナイフのトリッキーな攻撃を軽々と避け、ヒサメは氷で巨大な槍を創造し投げ付ける。ネーナもそれを避け、ヒサメもまたナイフを避ける。此方の二人の力量は全くの互角。氷の剣とナイフが打ち合い、互いの喉に刃が触れる。まさに死闘が繰り広げられていた。
「手前のお仲間の頑張りに免じて教えてやるよ」
スノーを蹴散らし、アルスにゆっくりと近寄る壱。
「俺様の能力は数秒先の、限りなく近い平行世界の未来を読み取り、対処を可能とする力。そして自らの肉体に負荷を掛ける事で誰よりも速く動く力さ。まあどちらも今の状況では必要無いがな」
そしてくるりとスノーに向き直り、彼女の首を絞め宙吊りにする。
「お前…ふざけるな!彼女を離せ!」
「ぁ…ぁぁ…!」
「へっ…どうした?立ち上がってみろよ?じゃないとこいつ…死んじゃうぞお?」
ギギギ…と音を立てながら彼女の首を絞め、それをアルスに見せ付ける壱の目には罪悪感でも何でもない、喜びや楽しさといった感情が--愉悦が浮かんでいた。
「くっ…!」
立ち上がろうとするも、アルスは先の一撃を受けて動けない。その間にもスノーの命が削られていく。
『立ち上がりなさい…!』
声が、頭に響いた。聞いたことは無いハズなのに、何処か聞き覚えのある不思議な声。同時に1つのヴィジョンが頭に浮かぶ。
--血、煙、炎、死体、銃声、剣戟……様々な臭いや音が立ち込め響く中、一体の緑色の巨龍が嘆きの咆哮を上げる。そしてその足下には、無数の仲間の遺体が--
(僕はこの光景を知っている…?……なのに…なのに僕はまた仲間を見捨てるのか…?)
刹那、アルスの翠の双眸がより翠に輝き始める。
「ああ?--うぉっ!?」
「かはっ…ゲホッ…ゲホッ…」
壱がスノーを手放し後退する。スノーはようやく呼吸が出来るようになった、まだ痛む喉を押さえながらアルスを見る。
アルスの全身は翠色の輝きに包まれていた。傷は癒え、双眸は翠に輝いている。そして何より--
「翠色の…【翼】…?」
レンが猿からの攻撃を紙一重でかわしながら茫然と呟いた。それもそのはず。アルスの背中からは光で出来た翼が--妖精の羽根のような翼が生えていたのだから。ヒサメも一旦ネーナから距離を取り、美しい翼に魅入る。
「…アレが人の持つ【力】、ですか……ッ!?いや、まさか彼は…いえ、そんなワケはありませんね……」
「ケホッ…あれって…あの時の…?」
何とか痛みが引いたスノーが一人呟く。彼女はとある日の出来事を思い出していた。

--それはある雪の大晦日。当時10歳だったスノー達は、初日の出を拝むために森を越え、ボレアオネがある山の崖のところまで来ていた。
「寒いね…まだかな…?」
スノーは手袋をした手を擦り合わせる。この頃はまだ魔物がそれほど街の近くまで出没していなかったので、今では考えられない事だが子供達だけで街の外に出る事も可能だった。そんな彼女にアルスが眠たそうに苦笑を浮かべる。
「あのねスノー…まだ午前4時だよ…あと二時間もあるからもっと遅く出ようって…ふああぁ…」
「あのなあアルス、きっと創造神アルトリウス様なら俺達の初日の出への思いを汲んで早く拝ませてくれるに決まってるだろ?」
そう言うのはアルス達の親友、ドモン・バラック。ボレアオネでは珍しい黒髪をツンツン立たせたやんちゃ小僧が、こちらも眠たそうに言った。たった三人の子供のためだけに神様が時間を早めてくれるワケ無いだろ、とアルスのツッコミが飛び、三人は雪の中暖かな光景を繰り広げていた。
「--ってだからお前らは--ってうわあああああ!?」
日の出の十数分前、突然崖の一部が滑落し、ドモンが崖下に落ちる。何とかアルスが彼の手を掴んでいるが、落ちるのは時間の問題だ。スノーもアルスの体を引っ張り、二人を助けようとするが雪に滑りズルズルと落ちて行く。
「二人共もう良いって!このままじゃ二人まで--」
「諦めないよ!」
それから五分。二人の限界を悟ったドモンの声をかきけすようにアルスが叫ぶ。そして彼の体が光に包まれ--
「全員生きて帰るんだよ!」 そして今と同じようにアルスに翠の【翼】が生え、ドモンを救った。その時の記憶はアルス自身無いらしく、アズナル達に話を聞いても捨てられる前に何かあったのか、はたまた先天的な何かなのか、誰にも分からなかった。
--そして今、その時と同じ現象がアルスに起きている。
「チッ!どんな手品か知らねえが…カタを付ける…!」
壱が再び赤いオーラを纏う。高速化の術を使ったのだ。そして部屋の端まで一歩で後退し、拳に焔を集め、アルスに突進する。
「新月流決闘拳、炎の型が壱…火炎拳!」
焔を纏った右手でアルスをぶんなぐる。焔を纏いし神速の右ストレートがアルスを襲い--
『ハアッ!』
「ぐおっ…!?」
アルスが翠の長剣で壱の右腕を手の甲から二の腕まで深い切り傷を作り、その反動を利用して壱の腹に突き刺した。あの神速の術よりも早く、アルスが動いたのだ。一行が目を見開く中、壱が壁に追突し、瓦礫が落下する。
『セヤァッ!』
「ッ!?速い!?」
「戦闘力が大幅に強化された…!?」
「ウホホッ!ウホ--アッーーー!」
アルスはそのまま紫髪の少女とネーナに浮遊したまま突進し、彼女達の事も吹き飛ばす。そして猿の魔物、ティタンを頭から一刀両断にし、辺りに血が撒き散らされた。彼の手の中にある長剣は、今だけは、葉脈のような、羽根のような模様が青く浮かび上がり、彼の眼と同じく刀身が以前より尚翠色に輝いていた。
「ハア…ハア…ハア…僕は…?」
アルスの体を包んでいた輝きが失せ、翠の翼も消失する。アルスは膝を付いた。
(今のは……?それにあの記憶…)
アルスは肩で息をする。心臓がバクバクと音を立て、肺が締め付けられるような痛みを感じ胸を抑える。少なくとも先程の力の再使用は不可能だろう。
「何とか形勢逆転だな!」
「良かったです…!」
「大丈夫かい!?アルス!」
「お怪我は…?」
「アーくん!大丈夫!?」
口々に賛美や心配の言葉を発しながら仲間達が駆け寄って来る。大丈夫、と手で制し、何とか立ち上がろうとするアルスの前で瓦礫が吹っ飛んだ。
「テメェ……ブチ殺すぞォ!?」
壱が全身から血を流し、殺意を剥き出しにしながらゆっくりゆっくりと歩いてくる。慌てて身構えアルスを守るように武器を取る五人を哀れむように、こちらも立ち上がった紫髪の少女が全身に切り傷を負いながらも言った。
「くしゅん…もう酷い事するね、お兄さん?でも相手が悪かったみたいだね♪特に壱は怒ると怖いよ♪さてと…」
少女の目から笑みが消え、殺意のみが残る。
「この借りは返させて貰うよ?お兄さん♪」
ボロボロのマントを捨て、ダガーを両手に一本ずつ構える。非常に過激な分動きやすそうな衣装が露になり、同時に腰に下げられているサブマシンガンがカチャリ、と音を立てた。
「秘技…エクスターミネ--」
「アルス!大丈夫!?」
『間に合ったか』
迷宮の通路の奥から二人の聞き覚えのある声とガション、ガションという振動が響く。一人は最新の機械兵を駆るスミス・アーロン。そしてもう一人は街で情報集めをしているハズのネヴィアだった。
二人の乱入に気付き、紫髪の少女が小さく舌打ちをした。そしてネーナに頷きかける。
「撤退するよ、壱。お兄さん達…運が良かったね♪……けど次は無いよ?」
これ以上無いほど冷酷な声でそう告げられ、アルス達の背中を冷たい汗が流れた。一方、壱は不満気な様子で少女に怒鳴る。
「何でだよローズ!俺は今すぐアイツを--」
「壱様、此処はローズ様の仰る通りですわ。相手が彼等だけならばともかく…去年A級冒険者になり、ボレアオネでタナトス様と交戦した要注意人物に【光の将】…そしてそこのヒサメという青年も…形勢は逆転しました。我々はナルキッソスの始末には成功していますし、データも得られました。長居する必要はありません…行きますよ」
ローズと呼ばれた紫髪の少女は既に転移術を唱え撤退していた。ネーナも一行にお辞儀をして立ち去る。壱は忌々しげにアルスを睨み付けると、地面を拳で叩き天井の一部を崩れさせ、その隙に逃げていった。
「アルス!大丈夫!?」
ネヴィアがアルスに駆け寄り治癒魔法を掛ける。機体からスミスが降り、辺りの惨状を調べていった。
「猿巨人…予めこの迷宮に配置しておいたのか、或いは……」
そして一行に向き直る。豊かな顎髭をいじりながらスミスは告げた。
「詳しい話は後程聞かせて頂くとして…迷宮からの脱出は果たせなかったが、貴殿達は見事強敵に立ち向かい、仲間と守りあった。よって貴殿ら六名全員をA級冒険者に認める。おめでとう!さて…ネヴィア殿、至急地上に戻り部下に現場と王都の捜査を命じて下さい。そして諸君には少し話を聞かせて貰いたいのだが…良いかね?」
「はい--アルス!?大丈夫かい!?アルス!?」
レンが答えた瞬間、立ち上がろうとしたアルスの体がフラフラと揺れ、そのまま倒れこんだ。どうやら脈はあるようで、スノーとネヴィアが心配と安心の溜め息を付く。
その頃、アルスの混濁した意識は夢の中をさ迷っていた。
場所は木漏れ日が美しい何処かの森。そこには先程のヴィジョンに出てきた翠の巨龍と大きな鷲に美しい女性。女性は二頭に深々とお辞儀をする。
「申し訳ありません…我々エルフの総力を持ってしても、お二方の【ライダー】を未だに見付ける事が出来ておりません…」
お辞儀をした瞬間、美しい金髪が流れ、尖った優美な耳が露になる。未だ頭を上げようとしない女性に対し、巨龍が優しく、どこか悲しげに微笑んだ。
『陛下…貴女のどの行いに責任がございましょう?彼らが…アルトリウス達が失踪したのは我々の不徳の致すところ…我々があの戦いで負傷した彼らを【奴】に任せたが故…全ての責は私にあります」
優しい女性の声が直接脳内に響くように聞こえる。続いて大鷲が威厳に溢れる男性のような声で、力強く語る。
『ライダーがおらず霊力不足で我々も此処より離れられぬ故、広範囲の索敵は行えぬが…女王よ、あやつらはエリュシオンの何処かで今も生きている…そなたも感じたであろう?【鼓動】を」
巨龍が静かに頷く。そして夢は徐々に晴れていった。

「アルス!起きたのね!」
ネヴィアが彼の意識が戻った事に気付き、満面の笑みを浮かべた。アルスは今更ながら、ネヴィアの事を美人だと思った。サラサラの桃色の髪は彼女の活発さを表すかのようにキラキラと光を反射し、一方で蒼色の瞳はそんな彼女の思慮深さを表すかのように落ち着いている。
そんな事を考えていると全身を脱力感が襲う。先程の【翼】の影響だろう。自分の体に何があるのか、それだけが今は気掛かりだった。
「あ、アーくん起きたんだ」
スノーが皆を連れて部屋に入って来た。彼女の目には心配と安堵が入り混じったような、複雑な感情が見え隠れしている。
「目が覚めたようだな、アルス殿。他の皆からも話は一通り聞いたが…君からも聞かせて頂きたい」
アルスは頷くとかいつまんで話をした。ボレアオネが吸血鬼に襲撃されたこと。【雇い主】なる人物が政府関係の者である可能性が高いこと。ナルキッソスという青年が猿に喰われたこと。壱と戦っている時に突然謎の映像が脳裏に映り、あの【翼】が生えたこと。
「--それで、襲撃された理由に心当たりはありますか?」
一通り話し終えたアルスがスミスに問う。偉丈夫は豊かな顎髭をいじりながら考え込む仕草を見せた。
「恐らくは貴殿の言う通り口実作り。反逆の使徒は冒険者上がりの者が扇動していたと聞く。そして最近反逆の使徒は動き始めたらしい…反逆の使徒候補を潰しつつ、ボレアオネの一件から察するに反逆の使徒を炙りだすのが目的なのだろう」
そして椅子から立ち上がり、部屋を出る直前、偉丈夫は振り返らずに言った。
「諸君、今日の一件、本当にご苦労であった。私も調査を独自に進める。それと貴殿達は政府関係の者に目を付けられた可能性がある…くれぐれも気を付けてくれたまえ」
偉丈夫は部屋を出ていった。残されたA級冒険者達は沈黙に包まれる。自分達は政府に目を付けられた可能性があるのだから当然であろう。
(こういう時こそ僕の出番かな)
「皆、今日はありがとう…皆がいなかったら僕は今頃死んでいた…僕は皆へのお礼も早くしたいし、明日になったら冒険者として旅立とうと思うんだけど…一緒に来てくれる人はいるかな?」
部屋の中が再び沈黙に包まれる。やっぱり僕じゃ駄目なのかな…とアルスが恥ずかしくなってきた時、ネヴィアが明るく言った。
「私はアルスを冒険者に推薦した張本人だもの…これからもよろしくね、相棒」
「さっきネヴィアさんから旅の事聞いたけど…アーくん、無茶ばかりしてネヴィアさんにまた迷惑掛けそうだから幼馴染みとして一緒に行くよ」
スノーも追従する。嬉しいような貶されたような気がして顔をしかめて見せるアルスを見て二人が微笑んだ。そんな様子を見てかレンが苦笑し立ち上がり手を差し出す。
「旅は賑やかな方が良いだろ?俺もパーティーインさせてくれ!これからよろしく!」
「ああ。こちらこそよろしく!」
差し出された右手をしっかりと握り返す。レンが来てくれて安心した。彼の行動力には先程も世話になったのだから。ティールが続いて立ち上がる。
「私も魔導杖のテストを兼ねてお供します♪よろしくお願いしますね」
「では私も…と言いたいところだが…アルス、私はそなたの剣技を見て感銘を受けた。それ故今一度自らを心身共に磨く一人旅に出る。そして私が心身共にそなたに追い付けたと感じた時は手合わせを願いたい」
桜はアルスの目をまっすぐ見つめ、アルスも頷く。たった一度だけ彼女の太刀捌きを見たアルスもまた、彼女の太刀捌きには感銘を受けていた。また会う日まで、アルスは己の修行を誓う。そして一行は黙ったままのヒサメを見る。ヒサメは立ち上がり、一行の元へと歩み寄る。
「私で良ければ御一緒します。これで男子3、女子3になるようですし。桜さん、今度お会いした時は私とも手合わせを願います」
氷の美丈夫が、一日の中で初めて目許を少しだけ緩めた。
「うん。こちらこそよろしく。さてと…皆、行こうか!」
街まで出て、桜と別れた一行。そして依頼が書かれた協会のロビーへと行く。こうして、アルス達の旅は始まるのである。

『私を見つけて…アルトリウス…』

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