楡井久さんは福島県・会津で生まれ育ち、地学分野の研究で有名な大阪市立大学と大学院で地質学を学び、1970年に千葉県庁に就職。以来30年近くにわたって地盤沈下や地質汚染、液状化などの現場に関わってきた、地質のエキスパート。
その楡井さんがいま取り組んでいるのが「千葉時代」。
地球46億年の歴史には「地質時代区分」というものがあります。「カンブリア紀」「ジュラ紀」「白亜紀」といった言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。ところが約78万年前の地質時代には、まだ国際的な名称が決まっていないんです。いわば地球46億年の中の「空白の時代」。そこを楡井さんは「千葉時代」と名付けようと活動しています。
千葉県市原市の養老川沿いに78万年前の地層がよく見られる場所があり、そこが模式地(その地質時代の最も典型的な姿が見られる場所)として国際的な会議で認められれば、そこに模式地の証である「ゴールデンスパイク(文字通り金色の杭)」が打たれるのです。ゴールデンスパイクはこれまで世界に63ヵ所。ところが日本にはまだ1ヵ所もありません。もし千葉にゴールデンスパイクが打たれれば、空白の時代は「千葉時代」「チバシアン」と名付けられることになります!
千葉県市原市のほかにイタリアに2ヵ所、候補地があって、この3ヵ所でゴールデンスパイク争奪戦を繰り広げてきました。そして今年7月末から8月初めにかけて名古屋で開かれる国際会議で「内定」が出されることになっています。楡井さんは「千葉はイタリア2ヵ所に比べても格段に素晴らしい!」と自信を持っているのですが、結果はいかに…!?
楡井さんが力を注ぐのは、日本は地質に関する理解や興味が欧米やロシア、中国などに比べてまだまだ及ばないと感じているからだそうです。地質というのは防災、都市開発、資源開発、安全保障にまでつながる重要なもの。それを一番強く訴えていきたいとおっしゃっていました。それにしても大変バイタリティーあふれる地質学者でした!
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