津田大介「ブロッキング強行に高まる批判の声」
連載「ウェブの見方 紙の味方」
さらに、名指しされた3サイトが政府方針の決定に前後して相次いでサービスを事実上終了したことで、ISPがブロッキングを行う「急迫な危険・危難」は存在しなくなった。
そんななか、4月23日に国内最大の接続事業者であるNTTグループが3サイトへの遮断措置を発表し、業界に激震が走った。固定回線ではOCNやぷらら、携帯回線ではNTTドコモの契約者がブロッキングの対象となり、影響の範囲は極めて広い。すでに緊急のブロッキングが必要だという前提が崩れたにもかかわらず、政府の意をくんで実施したことに対し、業界や法学者から多くの反発の声が上がっている。
今回の件を受け、消費者団体の「全国地域婦人団体連絡協議会」と「主婦連合会」は共同で意見書を公表。NTTグループが具体的な事実や法的根拠を示すことなく、通信の秘密を侵害するブロッキングをしようとしていると強く非難している。「刑事告発を行うことも辞さない」との警告もした。もし訴訟が起こされ、裁判所がブロッキングを違法と判断したら、この問題はさらに泥沼化する。
法整備が整うまでに、どのような議論を積み上げられるのか。政府の対応を注視したい。
※週刊朝日 2018年5月18日号
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)