通信事業者は特定の通信を有利(または不利)に扱ってはいけない――いわゆる「ネットワーク中立性(Network Neutrality)」と呼ばれる原則だ。
米国では、連邦通信委員会(FCC:日本では総務省に相当)がこの原則を廃止する決定を下したことが大きな議論を巻き起こしている。
ネットワーク中立性がなくなると、理屈の上では特定の通信を優遇(あるいは差別)することも可能となる。そのため「OTT(Over-The-Top)」と呼ばれるネットサービス事業者は規定の廃止に反対している。一方で、ネットワークを“使われる”側である通信事業者は、中立性廃止に対して表立って賛成も反対もしていない(参考記事)。
翻って日本では、ネットワーク中立性に関する議論はあまり盛んではない。しかし、昨今の米国における動きを受けて今後議論が起こる可能性はある。
そんな中、NTT(日本電信電話)の2017年度通期決算説明会の質疑応答において、ネットワーク中立性に関する質問が出た。同社の鵜浦博夫社長はどのように答えたのだろうか。
―― 米国ではネットワーク中立性を緩和する方向に動いている。(それを受けて)米国の通信事業者ではコンテンツとネットワークをを融合する流れもできつつある。
今後、通信事業やISP事業の役割を含めて、日本においてネットワーク中立性がどのように変化していくべきと考えているか、将来展望を利かせてほしい。
鵜浦社長 今、(ネットワーク中立性を巡って)いくつかの議論が起こっている。米国でネットワーク中立性の考え方を一部変更する動きがあることも承知している。
私は、ネット中立性というより、ネット上のビジネスが健全に発展していくにはどうあるべきかを考えるべきだと考える。誰かの(一方的な)負担の中でビジネスをやるのではなく、コンテンツ業界、ネット業界、そして私たち通信事業者が“Win-Win”の関係でやっていける、基本的にはサスティナブル(持続可能性のある)なものでなくてはならない。
そういう意味では、私にも長い先を展望したスコープのようなものはあるが、健全なビジネスとして、さまざまな業界が“Win-Win”になるような取り組みであってほしいと思うし、これまでもこれからも、そのような趣旨で主張はしていきたいと思っている。
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