劇場アニメ「
上映後に行われたトークショーには、
山田との打ち合わせで「物音の視座」というコンセプトを設定した牛尾は、舞台のモデルとなった高校で、実際に椅子やロッカーを叩いたり、窓やビーカーを指でこするなどして録音した物音を劇伴に使用したという。録音現場には山田もロケハンとして同行したが、録音中に山田がメトロノームの音に爆笑してしまったとのこと。「すごい小っちゃい音録ってるのに、すっげえうるせえなって(笑)」と牛尾が明かすと、山田は「すぐ退散しました(笑)。本当にすみませんでした」と謝ってみせた。
物語冒頭と終盤で展開される、希美とみぞれの足音が音楽に組み込まれたシーンについて話が及ぶと、「(最初は)どうやって作ったらいいかわからなかった」と山田。何度もやりとりして作り上げたというこれらのシーンを、牛尾は「山田さんが作曲されたような、僕がアニメをコントロールしているような場面になっている」と表した。さらに終盤で希美とみぞれが共に下校するシーンでは、異なるテンポで刻んでいる2人の足音が4歩だけ重なることを明かし、「狙ったわけではなく奇跡的に生まれたものだったので、すごく感動的でした」とコメント。一方の山田も「牛尾さんがコンテを読んで、三拍子の音が聞こえてくるって言ってくださったんですよ。私もずっと希美とみぞれのテンポって三拍子だと思っていて、それが伝わったのが嬉しかった」と牛尾との制作における喜びを語った。
続いては牛尾が制作した、デカルコマニーという絵画の手法を使用した図面楽譜がスクリーンに映され、そこからどのように楽曲を仕上げていったかが牛尾の口から解説された。デカルコマニーとは絵の具を落とした紙を半分に折り、もう半分に絵具を転写させるというもの。専門的な用語を交えながら解説する牛尾に、山田は感心しつつも「何言ってるかわからない(笑)」とコメントした。そして山田のこだわりのシーンとして挙げられたのが、希美とみぞれの会話中に2人の間を人が横切る場面。ここでは一度制作した音をスタジオ内で再生し、実際にマイクの前を牛尾が横切って録音したものが使われているという。会場で聴き比べを行うも、その微妙な違いに山田が「オカルト的な感じになってきた(笑)」とツッコミを入れると、「(本当に)やったんだって!」と牛尾が主張し、会場の笑いを誘った。
最後に牛尾は「山田さんの思いから始まって、ここまで繊細で美しい映画になりました。もしかしたら何も起きないと思うかもしれませんが、いろんな物語や奥深さがありますので、ぜひ末永く愛してもらえればと思います」と述べ、山田は「舞台挨拶のたびに音の話をするんですが、私じゃやっぱり言葉が足りないので、牛尾さんにお話ししてもらいたいとずっと思っていました。ありがとうございました」と牛尾に向かって頭を下げた。「リズと青い鳥」は現在公開中。