【大相撲】稀勢7場所連続休場 名古屋場所で進退 横審・北村委員長「覚悟持って次場所へ」2018年5月12日 紙面から
横綱稀勢の里(31)=田子ノ浦=が11日、夏場所初日(13日)からの休場を決めた。7場所連続休場となり、年6場所制となった1958年以降、横綱としては貴乃花に並ぶワースト記録となった。進退に関して静観を続けてきた横綱審議委員会(横審)から「覚悟を持って次場所に」の声も上がり、和製横綱への風向きは変化。名古屋場所(7月8日初日・ドルフィンズアリーナ)への出場勧告を受ける可能性が出てきた。 春場所前の足取りを、なぞるようだった。稀勢の里が提出した診断書は「左大胸筋痛で約1カ月、激しい運動を制限する」。力強さを取り戻せないまま、古傷の不安を露呈する悪循環から抜け出せない。初の2場所連続全休が決定的となった。 「体調不十分であればやむをえない。覚悟を持って次場所に備えてほしい」 横審の北村正任委員長のコメントだ。「次」が名古屋なのか、さらに先でもいいのか明示しなかった。だが、視線が厳しくなったのは間違いない。これまでは「できるかできないか横審が判断できない」「出られる時に出てほしい」と本人に一任してきた。無期限で待つ大甘の姿勢が、ここにきて変化してきた。 注目されるのは、この夏場所後の横審の対応だ。横綱の連続休場記録で貴乃花(現親方)と並んだが、貴乃花が7場所連続で全休した2002年名古屋場所後、横審は「途中休場も含め来場所の休場はあり得ない。最後通告」と出場を勧告した。決議では一番重い引退勧告に近い位置付けだ。 もちろん、横綱の心は折れていない。休場の判断は、初めて取組編成会議当日、この日の朝まで渋ったほど。師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)も「良い稽古を見せられていないけど、本人は必死でやっているので。自分の口からはあまり、言えなかったみたい」と振り返り、涙ぐんだ。 だが、前例にのっとれば、稀勢の里は名古屋で背水の陣を強いられる。さらに、夏場所から名古屋の間には巡業がなく、相撲勘を取り戻しづらい。自他ともに「稽古で強くなってきた力士」という横綱にとって、最悪の状況が現実味を帯びる。引退危機からの復活の道は、険しさばかりが増している。 (志村拓)
|