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» 2018年05月12日 11時00分 公開

「透けちゃダメなものを、あえて透けさせた」 BANDAI SPIRITSがたどり着いた「常識外れのプラモデル」開発秘話(前編) (2/4)

[しげるねとらぼ]
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全ての根幹、多色成形機


稼働中の多色成形機。このバンダイホビーセンターにしかない機械なのである

――今回のフミナ先輩に関して、確実に新しいといえる部分と、以前から可能だった部分というのはどういう点なんでしょうか?

西村:以前からのつながりという点で言うと、まずバンダイホビーセンターにある多色成形機が根底にあります。フミナ先輩も、いわゆる「いろプラ」(※)も全部そうです。同時に4種類の樹脂を金型に流すことができるという機械なんですけど、それをもっと違う使い方ができないかという考え方が進んだ先がフミナ先輩ですね。

※いろプラ:成形段階で各パーツが色分けされており、塗装しなくてもキャラクターのイメージに近い完成品を作ることができるプラモデルの(バンダイでの)総称

――基礎的な質問なんですが、多色成形っていつ頃からやりだしたことなんですか?

西村:かなり昔からあったはあったんですけど、今ほど洗練されてはいなかったわけです。同時に種類の違う樹脂を金型に流すという概念はあるんですけど、じゃあ何パーツ同時に流せるかとか、パーツ自体の精度はどうかとか、異なる素材を同時に使えるかとか、そういう部分では今は段違いです。

山上:多色成形機自体がこのホビーセンター独自の技術なんで、どこでもできるわけではないんです。

――バンダイさんの多色成形技術が昔からすごい能力を持っていたのではないかというお話のために、今日はこれを持ってきたんですよ(私物のマイクロガンダムを取り出す)。


筆者私物のマイクロガンダムと、Figure-riseBustの顔面パーツ。どちらも基本的には同じ技術を発展させた結果である

西村:出た! マイクロガンダム! 買ったんですか?

山上:どこで売ってました? マイクロガンダム、社内でも貴重なんですよ。

西村:僕も勉強のためにショップを巡って買いましたもん。

――すいません、中古をネットオークションで競り落としました……。これは本当にすごい製品だと思うんですが、25年ほど前の商品ではあります。ただ、これを見てしまうとこの延長上に今回のフミナ先輩がいるというのは分かります。

西村:マイクロガンダムで使われているのがインサート成形と呼ばれている手法ですけど、あれも種類の違う樹脂を時間差で流して、片方が固まった後でもう片方がくっつかずに固まるから、あらかじめパーツ同士が組み合わさったようなパーツができる。

山上:このマイクロガンダムの黄色いところ、緑のところ、灰色のところが別々で流れているのと同じですね。マイクロガンダムの最新の発展形って、今でいうRGのキットとかにあたるんです。

西村:4種類の樹脂を流せるというところから、「パーツ単品ではなく組み合わせた形で成形できないかな」「それを動かせないかな」「設定画以外のニュアンスを出せないかな」という感じでアイデアを出していった。だから、多色成形機をどうやって使おうかと頭をひねった結果が、今のバンダイのプラモデルの技術としていろんなブランドで出力されているという感覚です。それぞれ関係ないわけではなくて、根底は多色成形機でつながっているんです。

――やっていることはマイクロガンダムもフミナ先輩も同じ、という感じでしょうか?

西村:ひとつの金型にいろんな樹脂を流すという点だけでいえば、そうですね。

山上:それをどこにどう使うか、という部分の差が大きいんです。

――バンダイさんにとって、多色成形というのは特別なものなんでしょうか?

西村:特別です。これを使うのは、やはり力の入った商品です。だから多色成形のランナー(※)って、HGでも入れたり入れなかったり、入っていても1枚。多色成形のランナーを入れることは可能か不可能かでいえば可能なんですけど、“可能”の概念って何? というと「時間とお金が無限にあれば可能」ということになってしまう。凝ったパーツを入れられるけど、それをやって1/144のガンプラで一箱6000円とかになってしまうと、それは可能とは言わないわけです。

※ランナー:プラモデルの部品がくっついている枠の部分。この部分を通って液状の樹脂が流れ込み、冷えて固まるとプラモの部品として販売される状態になる

――確かに、気持ち的に1/144のガンプラに出せる金額の上限ってありますよね……。

西村:技術的には可能だとしても、お客さんが買えなくなった瞬間に意味のないものになってしまう。このフミナのフィギュアも、無理だとされていたわけではなくて、前からやってみること自体はできたはずなんですよ。でも、それを実際にどれだけの開発期間とお金をかけて、最終的に商品をいくらで売ってそれが何個売れたらどういう数字が出るのかというのを踏まえた上で可能か不可能かという話なんです。

 今回可能だったのは、開発費の面をクリアできたとか、Figure-riseBustを展開していて技術的な下積みが既にあったとか、そういうことがあったからなんです。

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