東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

日中関係改善 信頼回復へ一歩ずつ

 日中両政府は八年ぶりに閣僚級の「日中ハイレベル経済対話」を再開する。五月には日中首脳会談も予定される。関係改善の機運をつかみ取り、信頼回復へ一歩ずつ懸案の解消を進めてほしい。

 十六日に予定されるハイレベル対話は二〇〇七年から一〇年まで開催されたが、尖閣諸島をめぐる関係悪化で中断していた。

 今年は日中平和友好条約締結四十周年の節目にあたる。日中関係が長い厳冬の時代を乗り越え、実務レベルでも対話再開の機運が出てきたことを歓迎したい。

 副首相級の国務委員を兼任する王毅外相や経済閣僚が来日し、河野太郎外相らと会談し、貿易や投資面での課題を話し合う。

 日本側は中国に知的財産権保護ルールを整備するよう求めてほしい。中国が実施している東日本からの食品輸入禁止措置の解除を要請することも重要である。

 中国は、習近平指導部が進めるシルクロード経済圏構想「一帯一路」への協力を求めるだろう。

 安倍晋三首相は昨年、「一帯一路」に「大いに協力する」と前向き姿勢に転じた。隣国への経済協力は信頼性向上に有益であるのは間違いないが、構想の透明性や軍事利用の危険性などの面にも引き続き目を光らせてほしい。

 今回のハイレベル対話再開は中国側が持ちかけたという。貿易をめぐる米中摩擦が激しくなり、中国には世界第三の経済大国である日本と協力を強めたいとの思惑もあるであろう。

 習国家主席は十日、経済問題を討議する「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」で「外資企業の知的財産権を保護する」と演説した。

 日本はハイレベル対話を通じ、中国の不公正な貿易慣行の是正を求める一方、米国の保護主義的な貿易制裁の姿勢には、中国と足並みをそろえ国際社会に警鐘を鳴らしていくべきである。

 五月に東京で開かれる日中韓首脳会談の機会に、安倍首相と中国の李克強首相との日中首脳会談も予定される。自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を回避する「海空連絡メカニズム」の運用開始について両首脳間で合意してほしい。

 王外相は三月の北京での記者会見で「得難い関係改善の流れを、中国側も歓迎する」と述べた。

 好機を逃さず、経済問題だけでなく、政治的に大きなトゲとなってきた課題に解決の道筋をつけられるような条約締結四十周年になるよう期待したい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】