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この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
以前、Appleが自社開発のArmベースのプロセッサをMacに採用するかもしれないという記事を書きましたが、その後、こんな記事が出ていました。
VR/ARヘッドセットは、いまやどこでも作れるでしょうし、実際、各社からリリースされています。AppleがVR/ARヘッドセットを作ること自体には何の不思議もありません。
上記の記事を読んでいるうちに、幾つか気になるところが出てきたので、整理してみます。
特に気になったのは、このヘッドセットのリリースが2020年の予定とされ、まだ2年も先だということ。現時点では、8K+8Kのヘッドセットを作ろうとしても、技術的にもコスト的にも無理ということです。
しかし、Appleはいまや、主要なコンポーネントを自社で開発できる能力、資金、設備を持っています。2年あれば、かなりのことができるでしょう。
もう1つは、「A11 Bionic」やMac用Armプロセッサの延長線上にある自社開発のチップです。
さきの記事では、以下のように述べられています。
今の8Kのディスプレイを2台並べてテストすることを想像すると、複数のハイエンドのGPUをつないで動かすことになる。記事によれば、これはワイヤレスで、Appleが設計したチップが動く外部システムに接続する。
A11 Bionicには、Apple製のGPUが入っています。これから2年かければ、8Kを処理できるGPUを作ることは可能でしょう。
8K+8Kのデータをワイヤレスで飛ばすのはなかなか大変そうですが、Appleはかつて「FireWire」というシリアル伝送技術を開発した実績があります。FireWireはその後、「IEEE 1394」になり、現在の「Thunderbolt」の基になっています。いろいろと技術は持っているのですよね。
そしてもう1つ、このVR/ARヘッドセットで使われるであろう「MicroLED」ディスプレイについてです。3月にこんな報道が出ています。
もう、やる気満々ですね。もちろんiPhoneがターゲットでしょうが、「Apple Watch」やVR/ARヘッドセットなど、使える分野は多そうです。MicroLEDは有機ELの次の技術ということで、Samsungなどの業績への影響も取り沙汰されています。
このように見てくると、やはりAppleはハードウェアメーカーなんだなあ、と思います。「Apple」から「Apple II」へ、そしてMac、iPhoneへと、常にハードウェアを生み出し、質感やデザインへのこだわりを見せてきたApple。ソフトウェアやサービスへのこだりも、「モノづくり」精神に根ざしているのでしょう。
資金的にも人材的にも潤沢となった今、Appleは、全てのコンポーネントを含めて自社で完結させようという考えなのかもしれません。ベースバンドのような、差別化しにくいものについては外部調達を続けるのではないかと思いますが、他社に先駆けて最先端の製品を出していこうとするなら、「主要部品は自社開発して、しかも他社には出さない」のが一番よいというわけでしょう。
こうした垂直統合のビジネスモデルは今どき流行らない、というのが最近の経営学の基本になっていますが、Appleのこの取り組みは、成功するのでしょうか?
外資系ソフトウェア/ハードウェアベンダーでマーケティングを経験。現在はIT企業向けのマーケティングコンサルタント。詳しいプロフィールはこちら。
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