1970年代に大ヒットした東映の「仁義なき戦い」シリーズを現代に復活させた新作「孤狼の血」(東映配給)が12日から、大阪ステーションシティシネマほかで公開される。役所広司と松坂桃李が刑事役で暴力団抗争に立ち向かう。「スター2人のバディ映画。これを昭和のにおいを込めて現代的に描いた」という白石和彌監督(43)に話を聞いた。
「昭和の時代のにおいを現代に持ち込んだ」と話す白石和彌監督=大阪市内のホテル |
役所広司(中央)と松坂桃李(右)=(C)2018「孤狼の血」製作委員会 |
原作は柚月裕子の同名小説で、映画「仁義なき戦い」を見た時の興奮でそれをモチーフにして書いたという。「この原作の映画化に東映が名乗り出ないはずがなく、数社のライバル会社を押しのけて映画化権を獲得。それが僕のところに回ってきた。うれしい半面、これは大変だと思った」と出合いを振り返る。
「『仁義なき戦い』は昭和末期の広島やくざ抗争を描いており、暴力団の菅原文太さん、松方弘樹さんらが主役だった。今回は刑事が主人公で、暴力団の組織と人間たちの実態をあばいていく。何よりも役所さんが演じるハードな刑事と、それについていく若い松坂さんのアクションバディ映画で、そこに昭和の時代の郷愁を込めた」
「仁義なき-」の時代は、菅原、松方のほか千葉真一、北大路欣也、小林旭らスター俳優とピラニア軍団の川谷拓三、室田日出男など大部屋俳優がたくさん競演した。「今回も役所さん、松坂さんのほか竹野内豊さん、ピエール瀧さん、音尾琢真さん、駿河太郎さんなど大勢が役になりきって力演しており、現代版『仁義』になった。殴り込む江口洋介さんと悪親分の石橋蓮司さんの闘いも見どころ」
女優では、暴れ刑事の役所と縁があるバーのママに真木よう子が扮(ふん)し姐御肌を見せ、若手の阿部純子が松坂の刑事と訳ありになる女の子を演じている。「東映やくざ映画にはヒロインの存在も重要で、真木さんは懐かしい任侠の世界を感じさせ、阿部さんには放送禁止用語をセリフでしゃべってもらった。そこに昭和のにおいがこもっている」
ほかに中村獅童、滝藤賢一、田口トモロヲ、伊吹吾郎などが共演している。東映は早くも続編の製作を準備しているらしい。