(英エコノミスト誌 2018年3月17日号)
テクノロジーにおける米国の覇権が中国に脅かされている。
「Designed by Apple in California. Assembled in China(アップルがカリフォルニアで設計。中国にて製造)」――。
この10年というもの、米アップルの携帯電話端末「iPhone(アイフォーン)」の背面に浮き彫りにされているこの文句は、米国と中国という2大経済大国が技術分野で交わした取引を端的に表現していた。
米国が頭脳を提供し、中国が腕力を提供するという取引だ。
状況は変わった。中国が生んだ世界レベルの大手ハイテク企業、アリババ集団と騰訊控股(テンセント)は約5000億ドルもの市場時価総額を手に入れ、フェイスブックと肩を並べている。
中国のオンライン決済市場は世界最大となり、中国製のデジタル機器は世界中に輸出されている。
中国のスーパーコンピューターは世界最速で、世界一豪勢な量子コンピューター研究施設も建設中だ。今度の衛星測位システムは、2020年までに米国の全地球測位システム(GPS)と競合することになる。
米国は当惑している。現在進められている調査では、中国による知的財産権の侵害が米国企業に1兆ドル前後の被害をもたらしているとの結論がまとめられる見通しで、それを踏まえて高率の関税が導入される可能性がある。
また今年の初めには、中国の通信機器メーカー2社――華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)――と米国政府の取引を禁止する法案が連邦議会に提出されている。