学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡り、元首相秘書官の柳瀬唯夫氏(現経済産業審議官)らが、衆参両院の予算委員会に参考人として呼ばれた。

 安倍晋三政権の成長戦略の柱である「国家戦略特区」の制度を利用した加計学園による新設だが、この特区の事業者選定が正当なプロセスを経たものであるか、多くの人は疑問が拭いきれていない。安倍首相の「腹心の友」とされる加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園ありきだったのではないかと。

 柳瀬氏は10日の国会で、2015年4月2日に首相官邸で学園幹部と面会したことを認めた。これまで「記憶の限りでは会っていない」と繰り返してきた答弁を簡単に修正した。

 この面会も含め15年2月から6月上旬にかけ3回にわたり学園関係者と官邸で会い、獣医学部新設計画について話を聞いたとも証言した。

 愛媛県と今治市が同年6月に特区制度を利用して、同学部新設を国に正式提案する前から、首相秘書官が当事者の学園側と面会を重ねていたのは、どう考えても不適切、不公正と批判されても仕方がない。

 特区関係の事業者で面会したのは加計学園だけだったことから、なおさらだ。

 特区や事業者を選定する特区諮問会議の議長を務めるのは安倍首相である。特区で首相の友人が利益を受けていると、野党や世間は疑惑の目を向けてきたが、今日の証言からは加計ありき、との疑念がさらに深まった。

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 柳瀬氏は、学園側との面会は認めても、愛媛県や今治市の職員らが同席したかについては記憶が定かでないとした。学園側と一緒に官邸で柳瀬氏と会った愛媛県職員が記した文書に、柳瀬氏が「本件は首相案件」と発言したことが記されていることから、同席については認められないということなのだろう。

 「首相案件」発言は否定したが、「総理が早急に検討していくと述べている案件」と説明したという。

 他にも愛媛県文書には「死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」と述べたともあり、自治体に熱意があることが前提条件と伝えたとしている。

 「首相案件」との文書は農林水産省にも残っていることなども合わせてみると、仮に愛媛県文書の一言一句に違いはあっても、面会の話の趣旨は正確に記され、信ぴょう性はあるとみるべきだろう。

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 首相側近の証言で、17年1月まで学園の新設計画を知らなかったとする安倍首相の答弁への疑問も膨らんだ。

 柳瀬氏は、首相からの指示もなければ、首相への報告も一切ないという。学園を「特別扱いしたことはない」とも強調した。だが、15年に3回も官邸で面会していながら、報告もしないのは不自然で、特別扱いしたのを否定するのは無理がある。

 真相解明へ野党は追及を強める構えで、政府、与党も背を向けてはならない。加計氏や愛媛県関係者らも国会に呼び、究明を続けるべきだ。