royal_1960_01サントリーの古酒として、オールド、角瓶を飲んでいきましたが、第三弾としてローヤルを飲んでみます。

サントリーローヤルは、創業から60年を迎えるのとともに1960年発売であることのダブルミーニングとして、ラベルには大きく「’60」が描かれていました。

このボトルにおいてマスターブレンダーを務めていたのが、創業者の鳥井信治郎でしたが、2年後の1962年に亡くなったため、このローヤルが最後の作品となりました。

その翌年には、2代目の佐治敬三が、父が成し遂げられなかったビール事業の成功を夢見て再び事業化に着手することとなり、併せて社名を寿屋からサントリーと改められました。

さて、今回入手したボトルですが、ネック部分のラベルが一部剥がれていたものの、社名としてサントリー、住所として中之島の表記があることから、サントリーの社名に変更した1963年3月からサントリービルに移転する前の1971年3月のボトルだと推測されます。
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もし寿屋の表記であれば、3年ほどしか流通していない貴重なボトルでしょう。

発売当初は、「Rare Old Whisky Suntory "ROYAL"」と、ローヤルの名称は控えめに記載されていましたが、その後1980年代初頭までは、「Suntory Whisky Royal」と改められています。
「'60」の表記も、1980年代前半には「SR」とイニシャル表記に改められ、1990年代以降は幾度となくラベルデザインが改められました。

「酉」の形をモチーフにしたボトルには、当初紐による封印がされていました。これをナイフでブチっと切る様をCMで見ていてあこがれを持っていました。
現在のボトルにはそういった封印が省略されています。

今回も、現行品と比較していきます。
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まずはストレートから。
1960年代のボトルでは、グラスに注ぐと、液色は少々濃いめの琥珀色、香りはアルコールの後に青リンゴとピートの香りが続きます。

口に含むと、先にレーズンの香りが現れ、あとからカラメル、バナナ、ナシ、オレンジが続きます。
味わいは、アルコール由来の辛さはそこそこあるものの、後から酸味、ビターと続き、最後に甘さがやってきます。古いボトルならではの埃っぽさは少なく、比較的状態はいいです。

一方で現行品は、アルコール由来の刺激は割と強く、先にバナナ、次にカラメル、樽からのウッディさが続きます。シェリー樽原酒由来のレーズンの香りはほとんど感じ取れません。
味わいはアルコールからの辛さがメインで、酸味、甘さと続き、ビターは控えめです。

次にロックにすると、1960年代では青リンゴやライムの香りが立ち始め、奥からバニラ、バナナが追いかけます。
味わいは酸味がメインとなり、加水が進むほど、ほんのりとした甘さを感じやすくなります。

一方で現行品は、先にピートが感じられ、後からナシ、ライム、青リンゴと続きます。バニラ、バナナはよくよく嗅いでいかないとわからないです。
味わいはビターが強めで、その後に酸味と続きます。甘さはそれほど感じられません。

現行品も決して悪くはないのですが、1960年代のローヤルは、香りが豊かでストレートでも比較的まろやかに作られていて、1,2ランク上のボトルだと感じ取ることができます。
当時のローヤルの値段を現代の価値で換算すれば3万円以上はするわけですが、現在のボトルと比較しても響 JAPANESE HARMONYよりも上、7000~8000円くらいの価値はあるでしょう。

竹鶴政孝とともに日本のウイスキーの先駆者として走り続けた鳥井信治郎が、残り僅かな魂の炎を感じながら作り上げた渾身の一品なんだと感じられます。
50年近くたって、このボトルを飲めることに幸せを感じます。

<個人的評価>

  • 香り A: 先にレーズン、カラメル、バナナ、オレンジ。加水されるとライム、青リンゴが開く。
  • 味わい A: アルコールからの辛さは控えめ。酸味、甘さがメインで、ビターは控えめ。
  • 総評 AA: 現行品も悪くないが、香りが豊かで濃厚。鳥井信治郎の情熱がこもった十分高級、上品なボトル。