crossover1_今回は、5月23日に新発売した、ブラックニッカ クロスオーバーを飲んでみます。

ブラックニッカ クロスオーバーは、ブレンダーズスピリットに次ぐ限定品の第二弾になります。
キーモルトとして、余市のヘビーピート原酒と、宮城峡のシェリー樽原酒を使用し、性格が大きく異なる2種類のモルトをぶつかり合わせるブレンドとなっています。

北海道の場合、距離的なハンデのため、東京などに比べて2日遅れでの販売となってしまいます。
amazonで予約したものの、やはりこの日数を超えることはできませんでした。

ここ最近の新しいボトルの多くが、余市のヘビーピート原酒を使うことが多く、個人的には食傷気味になっているのに加え、ブレンダーズスピリットが60年物の原酒を使っていたこともあり、今回はそれほど良くはないだろうと予想しています。

今回は比較対象として、限定ボトル第1弾のブレンダーズスピリット、そして同じくヘビーピート原酒を主体としたレギュラーボトルのディープブレンドも飲んでいきます。

まずはストレートから。
グラスに注ぐと、液色は少々濃いめのアンバー、香りは焼き立てのパン、そしてマスカットと続きます。

口に含むと、まずライムとナシの香りが先に立ち、あとからタール分を感じさせるピートが追いかけます。最後にはパン、レーズンが締めます。
味わいは瞬間的にしびれるほど辛く、後々から酸味、甘さが続いてきます。

続いてはブレンダーズスピリットです。
こちらはクロスオーバーに比べると香りは丸く落ち着いた雰囲気で、レーズンの香りが先に訪れ、その後にピート、その後に青リンゴ、カカオと続きます。
味わいは辛さは控えめで、酸味、ビター、そして甘さを感じます。

最後にディープブレンドです。
こちらはライムが先に現れ、その後にバニラ、ナッツ、カカオが追いかけます。
味わいはこちらも辛さは控えめで、酸味がメインとなっています。
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次にロックで飲んでいきます。
まずはクロスオーバーから。
香りは先ほどと一変してレーズンが表に出てきて、ピートは少々落ち着いた感じです。あとからライム、ナッツ、カカオへ続きます。
味わいはストレートでの強烈な辛さが消え、酸味とビターが舌を支配します。

続いてブレンダーズスピリット。
香りはナシ、青リンゴが先に現れ、ピートはほのかに感じるほどになります。その後はゴム、マスカット、ナッツ、ウッディがやってきます。
味わいは酸味がメインですが、その後は甘さがやってきます。

最後にディープブレンド。
香りは青リンゴ、ナシが前に来ますが、ピートはしっかり立っていて、後にモルト、ナッツが続きます。
味わいは甘さが少々勝った印象で、ビター、酸味がそれを引き立たせる感じです。

そして今度はハイボールで飲んでみます。
まずはクロスオーバー。
香りはほのかにピートが来た後、軽くライムを感じた後、レーズン、青リンゴと続きます。
味わいはビターが少々目立ち、渋い印象にあります。

次にブレンダーズスピリットです。
香りは、軽くナシ、柿、バニラが感じられ、ピートはだいぶ薄れた印象です。
味わいは甘みと酸味が交互に感じられ、飲みやすくなります。

最後にディープブレンド。
香りはレーズンが先に感じ取られ、後に柔らかくバニラが包み込む印象です。
味わいは甘さが先に立ち、こちらもかなり飲みやすい印象です。

駆け足で3種類を比較しましたが、クロスオーバーはアクの強さを前面に出した印象で、かなり人によって好き嫌いが激しく分かれる印象です。

ストレートでは若い原酒を使っているせいか、辛みが強い印象です。
ウイスキー2に対して、水を1の割合で加水すれば、辛さが幾分収まって、ヘビーピートとシェリーの調和がバランスよくとれる絶妙なハーモニーを感じ取れます。が、多面性ではブレンダーズスピリットよりも劣ります。

おそらくは、連続テレビ小説「マッサン」に惹かれ、本格的なスコッチ由来のウイスキーを飲みたい、というユーザーを反映したブレンドにしたように思えますが、いろいろなスコッチのシングルモルトを飲んだ身としては、コレジャナイ感がありました。

ピートを効かせるにしても、原酒が若い故に深さや力強さが足りず、薄っぺらくなってしまうのは仕方ないでしょう。仕える原酒が絶対的に足りない現状では、苦肉の策なのかもしれません。

佐久間チーフブレンダーは、マーケティングの要望に頭を抱えたに違いない、と、あえて擁護させていただきます。

とはいえ、レギュラーのディープブレンドに比べればプレミアム感があるのは間違いなく、ジャパニーズウイスキーが好きな人には悪い印象を与えにくいと思います。

700mL、アルコール度数43度、価格は2000円ほど。値段を考えれば悪くないですが、ブレンダーズスピリットを飲んだ人が期待すると、痛い目に遭うでしょうね。

<個人的評価>

  • 香り B: 先にライム、ナシ、その後にタール感の強いピート、その後にレーズン、ナッツ、カカオ。
  • 味わい C: ストレートでは辛い。軽い加水で絶妙な酸味と甘さがやってくる。
  • 総評 B: ストライクゾーンを理解すればとびきりうまい。しかし癖が強めで万人受けとはいえない。