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これまで1年にわたっていろいろな銘柄を飲んでいきましたが、このブログを読む方の多くは、出すにしても1000円台前半の国産ウイスキーがせいぜいだという方だと思われます。

そこで、消費税の増税でも財布にやさしい国産の1000円以下の銘柄に絞って、それぞれ比較していきます。 

1.サントリー トリスエクストラ

torys・価格:700ml 40度 1000円ほど(税抜)

戦後からサントリーの低価格ウイスキーのブランドとして長らく売られているのがトリスです。最近のハイボールブームで、角瓶とともにハイボール用のウイスキーとしても宣伝されています。

香りはほんのわずかにシェリー独特の香りがするかどうかで、ウイスキーらしい香りとは言えません。
味にしても、甘さがあるだけでウイスキーの癖はほとんどなく、わずかにウッディな雰囲気があるほどです。

モルトとグレーンだけを使っていると書いていますが、実際にはほとんど熟成をしておらず、液の色も着色しているのではないかと疑いたくなるほどです。

酔っ払えばそれでいいという人ならいいですが、ウイスキーを味わうには力が足りません。

<総合評価> (A~E)
香り:E しっかりくぐらせるようにしてやっとシェリー樽っぽい香りがやってくるが、ほとんどしない。

味わい:D とにかく甘い。ウイスキーならではの複雑な味わいがほとんど無い。

総評:D 気軽にハイボールにするにはいいものの、ウイスキーとして飲むには力不足。もっとお金を出していい銘柄を求めるべき。  

2.サントリー サントリーウイスキーレッド

・価格 640ml  39度 850円ほど(税抜)

suntoryRedニッカからコストパフォーマンスに優れたハイニッカが出されたのち、対抗するように発売された低価格ウイスキーがレッドでした。
もともとは戦前に発売された赤札という銘柄が元祖ですが、戦争が始まると生産終了し、長らく販売されていませんでした。

1989年に酒税の改正が行われるまで、サントリーの銘柄としてはトリスと並んで庶民の手の届くウイスキーとして売り上げを重ねていましたが、ウイスキー全体の価格が下がると、その人気は衰えていきました。

香りは驚くほどになく、わずかにウッディな樽の香りがするだけです。
味も アルコールの刺激からくる辛味だけで、ストレートでもトゥワイスアップでも心に響くような味わいがありません。

これを飲むくらいなら長期熟成させた甲類焼酎を飲んだほうが安くておいしいです。

<総合評価> (A~E)
・香り E:かすかにウッディな香りがする程度。ほとんど無臭。

・味 E:アルコールの刺激が強い。水割りにすると薄まるが、ウイスキーならではの味もほとんどしなくなる。

・総評 E:いまどき買うウイスキーではない。昔の価格である500円でもどうだろう...。  

3.キリン 富士山麓 樽熟50°

富士山麓・価格: 700ml 50度 1000円ほど(税抜)

最近の若い人にはあまり知られていませんが、キリンは自前で蒸留所を持ってウイスキーを作っています。
カナダのシーグラム社と提携して40年ほど前からウイスキーを製造、販売しています。

そのキリンが出しているのが、御殿場蒸留所のモルト、グレーンを中心にブレンドされた富士山麓です。

香りは、最初にバーボンのようなエステりーな香りがやってきて、後からウッディな顔がついてきます。
味わいは意外にもあっさりしていて、バーボンに比べても飲みやすい感じです。それでも50度のアルコールがガツンとやってきます。

価格は安いですが、ウイスキーらしさをしっかり持っていて損しない味です。

<総合評価> 
香り:C バーボンのようなエステル香が強いものの、案外、瓶からもそれほどの強い香りは漂ってこない。

味わい:C  バーボンのようなコーンウイスキーの味がしっかり出ている。バーボン好きなら受け入れやすいかも。

総評:C 1000円ほどで50°のウイスキーとしては安いものの、バーボンに違和感を持つ人には受け入れにくいかも。  

4.キリン ボストンクラブ 豊醇原酒

・価格: 640ml 40度  800円ほど(税抜) 

b_club同じくキリンが販売している低価格ウイスキーがボストンクラブで、豊醇原酒と淡麗原酒があります。

豊醇原酒を飲んでみると、 富士山麓のようにバーボンのようなエステりーな香りが来ますが、そのあとにアイラモルトのような磯の塩臭さを帯びたピートの香りがついてきます。

味はアルコールの刺激の後にナッツのような味を持っていますが、全体的にはビターな印象です。

容量当たりの単価は富士山麓とほぼ同じですが、奥に潜む香りと味は見分けがつくほどの違いがあり、本格的な味を求める人にも受け入れられるでしょう。

<総合評価>
・香り C:バーボンのような独特の香りがあり、アルコールも強め。そのあとでスモーキーな香りも来ます。

・味わい C:アルコール由来の刺激の後、ナッツのような甘味が感じられます。

・総評 B:1000円以下 でありながらも、濃くしっかりした味を持っていて、決して妥協のないウイスキー

5.イオン トップバリュ ウイスキー

・価格: 720ml 37度 598円(税抜)

490181055794302イオンのプライベートブランドであるトップバリュのウイスキーです。
製造は合同酒精で、かつてはコルトウイスキーを製造していました。

香りはウイスキーらしさのあるものはほとんどなく、味わいもウッディなものを多少残しただけで、ウイスキーらしさはありません。

実際、モルトとグレーンだけでなく、スピリッツ(蒸留アルコール)を混ぜているので、薄っぺらくなるのは仕方ないでしょう。
これでウイスキーだと思っている人がいたら、もっと高い銘柄を飲ませて記憶をリセットしてあげましょう。

<総合評価>
・香り E: 申し訳程度のウッディな香りで、ウイスキーらしさがない

・味わい E: ウイスキーを名乗るには恥ずかしいほどの薄い味。

・総評 F: もはやウイスキーではない。ウイスキーっぽい焼酎と見たほうがいい。

6.宝酒造 キングウイスキー 凛

・価格: 720ml 600円ほど(税抜)

rin京都の酒造メーカーである宝酒造は焼酎で有名ですが、実はキングウイスキーという銘柄を長らく手がけています。
しかしニッカやサントリーと比べると、本気度の足りない底辺の銘柄しか出していません。その点では合同酒精にも似たところがあります。

香りはバーボンのようなエステりーな香りが先にくるものの、後からナシや青リンゴのようなさっぱりした香り、最後に樽からくるウッディな香りが来ます。

味わいも酸味が中心で、さっぱりした印象が強く出ます。

ただし、これらが味わえるのはストレートで飲んだ時だけで、ロックやトゥワイスアップにしても、香りが花開くことはなく薄まっていくだけです。

味や香りの方向性は間違っていないものの、蒸留アルコールを比較的多くくわえているせいか、ロックや水割りなどにするとほとんど消えてしまう弱点があります。

<総合評価>
・香り D:バーボンらしい立ち上がりから、ナシ、青リンゴのようなさわやかさ、そしてナッツのようなフィニッシュにつながります。ただしストレートに限る。

・味わい D: アルコールの刺激は意外に少なく、ナッツやはちみつの甘みがやってきます。ただしストレートに限る。

・総評 C:ストレートがうまい。それ以外ではウイスキーらしさがなくなって味気なくなる。価格を考えればさもありなん、と思いがあるが、このレベルになるとウイスキーよりも熟成された焼酎のほうが格上。 

7.ニッカ ブラックニッカ クリア

・価格 700ml 37度 800円ほど(税抜)

137391ブラックニッカの中でも最も安い銘柄で、アルコール度数を抑えているほか、ノンピートモルトを使うことでニッカ独特のスモーキーな香りを抑えたブレンドになっています。

香りはノンピートモルトを使っているにもかかわらず、樽の内側の焦げから来る香りによってスモーキーさをのこしているものの、敬遠するほどの煙臭さを感じさせないようにしています。

味においても単に甘いだけで終わらず、ウイスキーらしいビターな味わいをある程度残すようにしているため、ロックであっても最低限に楽しめる余裕を残しています。

低価格のウイスキーとしては物足りないとは思えないレベルに仕上げているため、お財布にやさしいウイスキーとしては合格点に思えます。

<総合評価>
香り:D それなりのスモーキーフレーバーとウッディな香りがするが、上品とはいえない。
 
味わい:C ウイスキーとして最低限の味わい。ハイボールにしてもしっかりと残るレベル。飲みやすいとは言い切れない。
 
総評:B 低価格のウイスキーとしては及第点。多少の癖があるため、万人受けではないが気軽に飲める範疇に収まっている。 

8.ニッカ ハイニッカ

・価格: 720ml 39度 900円ほど(税抜)

hinikkaブラックニッカクリアが発売されるまでは、ニッカの低価格ウイスキーを背負ってきた銘柄です。
2級ウイスキーとして発売された当初は、酒税法でぎりぎりの割合までモルト原酒を使いつつも低価格で提供していました。
現在はスピリッツを使っていた分をカフェグレーンウイスキーに変えています。

香りは樽からくるウッディな香りがしっかりと漂いつつも、若い原酒ならではのアルコールの刺激は抑えられています。

味にしても辛さは意外にも少なく、モルトの味わいが最低限、舌に飛び込んできます。 水割りにしても味が完全に消えることはありません。

晩酌用ウイスキーとして開発されていますが、単体で飲むにしても必要最低限に味わえるボディを持たせています。

<総合評価> 
・香り C:嗅いでみるとアルコールが強く感じられるが、実際に飲むと抑え目。樽からのウッディな香りが支配する。 

・味わい C:華やかさはないものの、甘味、渋みは最低限あり、ウイスキーだと自覚できるレベル。

・個人的評価 B:晩酌用と銘打ちながらも、しっかりウイスキーらしさを残した絶妙なブレンド。1000円以下のウイスキーの中でもトップレベルのうまさ。  

まとめ

さて、この中で勧められるものを挙げるとなると 、
  1. ハイニッカ
  2. ブラックニッカクリア
  3. ボストンクラブ 豊醇原酒 
  4. 富士山麓 樽熟50°
  5. キングウイスキー 凛
  6. トリス エクストラ
  7. サントリーウイスキーレッド
  8. トップバリュ ウイスキー
という順になります。

ウイスキー単体として飲めるものとなると、1~4位が合格ラインで、5位からは水割りやハイボールで何とかごまかさないといけないレベルにあります。

キングウイスキー 凛はストレートではある程度の香りと味わいがありますが、加水するとそれらが消えてしまう残念なブレンドになっています。
サントリーの2つの銘柄とトップバリュは、単体では飲めないレベルで、ウイスキーと名前を付けるには恥ずかしいレベルに至っています。

お財布のひもをきつく縛らないといけないときには、上位4銘柄を選ぶのがいいですが、もう少しお金が出せるのであれば、1000円台前半のスコッチやバーボンを中心にあたってみるといいでしょう。


<2014/11/29 追記> 
トップに挙げたハイニッカは、最初に書いていた時点では酒屋さんでも手に入りにくい幻のウイスキーになりかかっていました。下手をすれば消えていても仕方ないレベルだったのです。

しかし「マッサン」の放送が開始されてからニッカウヰスキーが注目されるようになり、メーカー側も本腰を入れて本物のウイスキーの味を持つハイニッカをスーパーなどに再び売り込み、店頭に並べるようになりました。

竹鶴政孝が晩年に晩酌用に熱心に飲んで味を確かめ続けてきた逸品をぜひとも味わっていただきたいと思います。