石破茂地方創生相の移民政策推進論
2014年の秋、安倍晋三首相は後継者の一人と目される石破茂氏を地方創生担当大臣に起用し、2060年の1億人の人口目標を達成するため地方の人口減少対策に力を入れる方針を打ち出した。
人口目標を立てるのは結構なことだが、人口の自然減が深刻化する地方において移民人口を大幅に増やす移民政策を欠く人口減少対策は失敗に終わると明言しておく。
安倍首相が「移民受け入れの国民的議論」を呼びかけた国会答弁(2014年2月13日の衆議院予算委員会)を受けて、人口激減による社会消滅の危機が切迫する地域から移民を求める声を政治家にぶつけてほしい。政治家は移民を切望する地方の人たちの意見を尊重すべきだ。
わたしは、一般に広まっているイメージとは異なり、地方の人々は移民の受け入れを強く望んでいると考えている。もちろん、移民を懐に温かく迎える心は都会の住人よりも豊かである。日本人のもてなしの心の原形は田舎の住人のこころの中にあると推察している。
田舎の人々は移民が入ってくるのを好まないと考える政治家がいるとすれば、人間の心も社会の空気も読めない人だ。人が消えていく社会がどうなるのかを想像してみてはどうか。隣近所が空き家になって人気がなくなった農山村に住む人々の孤独感にさいなまれた心情に思いをいたしてはどうか。
第一次産業地帯に生きる日本人は、人がいなくなってさびれる一方のコミュニティの再生をいちずに思い、のどから手が出るほど移民の受け入れを願っている。
政府が移民鎖国政策を転換し、世界の人材を呼び込めば、地方の人々は待ちに待ったフレッシュマンを同胞として迎え入れる。移民開国で働き盛りの人材が供給されれば第一次産業の復活のめどが立つ。新しい住民からパワーをもらって地方創生の道が開ける。
ここまで筆を進めて、人口崩壊社会の脅威を肌で知る石破茂地方創生相の移民受け入れ推進発言に接した。2015年11月、「人口が減る中で、移民の方々を受け入れる政策はさらに進めていく」と決意を表明し、移民を渇望する地方の声に真摯に耳を傾けた。
石破茂大臣は「移民政策には手をつけない」という政界の禁忌を破った。しかし、安倍晋三内閣の重鎮の移民政策積極論に対して閣内からも自民党内からも野党からも批判は出なかった。地方の人々の要望に正面からこたえた正論であるがゆえに、政治家は移民反対を口にできなかったのだろう。移民政策に関する政界の空気は一変した。地方住民の気持ちをしっかりつかんだ石破移民政策推進論は政府の基本方針に発展するだろう。
2016年3月9日