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愛知

鳥の調査「五十年の記録」発刊 県と野鳥の会

県と日本野鳥の会県支部がまとめた野鳥調査の「50年の記録」

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 県と日本野鳥の会県支部が、一九六七年から続く鳥類生息調査の成果を「五十年の記録」としてまとめ、発刊した。野鳥は自然環境の変化が増減などに影響しやすく、野鳥の会メンバーは「鳥たちの貴重なメッセージに耳を澄ませてほしい」と願う。十日からは、愛鳥週間。

 調査は鳥獣保護行政の一環で林野庁が全国で始め、間もなく都道府県が引き継いだ。野鳥の会県支部によると、一度も中断せず続けているのは愛知のみ。新実豊支部長(62)=名古屋市天白区=は「歴代会員が積み上げた貴重な資料。保全と魅力発信につながれば」と話す。

 「五十年の記録」では、県内二十二カ所の調査地点ごとに特徴的な野鳥数種を選び、写真と観測羽数の経年変化を示すグラフを掲載。渡りや繁殖に関する論文も収録した。高度成長期以降に蓄積されたデータだけに、開発の歴史と自然環境の変化の相関がはっきり見て取れる。

 碧南、西尾両市に及ぶ調査地点「矢作川河口」では、県内で最も身近な水鳥のシロチドリやハマシギ、コアジサシが、堤防建設や埋め立てが進んだ八〇年代以降、いずれも減少。餌場や休憩場所となる干潟の消失が原因とみられ、特にコアジサシは数羽から数十羽しか見られない年もあった。

 担当した西三河野鳥の会の高橋伸夫さん(68)=西尾市=は「三十年前なら、いなくなることが『あり得ない』と思えた水鳥が、このままでは本当に消えてしまう日が来る」と危惧する。調査と並行して地元企業の保護活動にも協力し、繁殖環境を守ろうと尽くしている。

 数を減らした種ばかりではない。例えばウグイス。もともと標高の高い山地が繁殖地だが、農林業に携わる人が減った影響で、里山や平地に営巣場所となるササ類の植物が増加。分布も、さえずりを聞く時期も大幅に拡大し、古くから和歌に詠まれた「春を告げる山の鳥」ではなくなっている現状を明らかにした。

 中国原産で「侵略的外来種」に指定されるソウシチョウも、二〇〇〇年ごろから県内での繁殖拡大が確認され、巻末で特集した。

 A4判フルカラー、百四十二ページで、県内の公立図書館に置く他、希望者には県庁で先着七十人に無料配布する。県ホームページでも全文を公開。「愛知県鳥類生息調査」で検索する。(問)県自然環境課=052(954)6230

 (安藤孝憲)

 

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