ローマのバスで火災が多発 何が起きている?
欧州の国の首都で公共バスが炎に包まれている。しかし、ローマ市民は誰もテロだと非難していない。
ローマの人たちへきえきとしながら指差し批判しているのは、ローマの公共交通会社ATACだ。
8日に市中心部トリトーネ通りで起きた63番バスの火災は、今年に入って9件目だった。昨年には22件のバス火災事故が起きている。
あまりに頻繁に起きるので、ソーシャルメディアではATACの旧名トラムバスをもじったフラムバス(「炎のバス」の意)というハッシュタグすら生まれた。
ジャーナリストのラファエッラ・メニキーニさんはツイッターで、「市の中心部でバスが爆発した時に、テロではなく運営会社を責めるのはローマだけだ。これがこの危機的状況を示している」と書いている。
ATACは、火災は老朽化した車両が原因で、事故件数は昨年から減少していると説明している。
火災の危険性は?
ATACは声明で、8日の事故ではけが人はいなかったと発表した。しかし地元メディアによると、バス火災が起きた近くの店舗従業員が腕のやけどとショック症状で病院に運ばれたという。
これまでの事故でもけが人などは出ていない。しかし、犠牲者が出るのは時間の問題だとする声もある。
運輸コンサルタントのファビオ・ロサーティ氏は「毎日、危険性が高まって」おり、車両を交換する「緊急の計画」が必要だと指摘している。
ジャーナリストのミケーレ・ガルバーニ氏はツイッターで、市当局が「市民の命をもてあそんでいる」と批判。
「きょうの事件が大量死につながったかもしれない。こんな風にバスが爆発する欧州の都市がある?あいつらは市民の命をもてあそび、発表を繰り返している」とツイートした。
3月に5件目の火災が起きたあと、バス運転手などの労働組合「Faisa Confail」のクラウディオ・デ・フランチェスコ地域統括は現地メディア「ローマ・トゥデイ」に対し、「ATACのサービスは安全ではない。バス運転手はただ何もないことを祈るしかないし、暑い季節がやってきたらどうなるか考えたくもない。当局が問題を解決するまで待っていたら、トラブルに巻き込まれてしまう。それどころか、焼死してしまう」と述べ、利用者に警告した。
バスのどこが悪いのか
交通当局によると、トリトーネ通りで火災事故を起こしたバスは2003年製のメルセデス・ベンツ「シターロ」だと発表。市バスは「不幸にも平均製造年数がとても古い」と述べた。
現地紙ラ・レプブリカは、バスは火がつく前にショートしていたことが予備調査で分かったと報じている。
火はバスの後部で起こり、運転手は燃え広がる前に急いで乗客を非難させたという。
ソーシャルメディアに投稿された動画には、バスの後部から煙が出ており、その後バスが爆発し、大きな爆発音で見ていた人々が逃げ出すのが映っている。
消火器による初期消火は失敗したものの、直後に消防隊が駆けつけた。
バス運転手の労組は、バスは保守が行き届いていないと指摘。何度も内部調査が行われているものの、火災の発生は食い止められていない。
現地メディアは、製造から5年しかたっていないバスでも火災が起きたと報じている。
これまでの対策は?
ATACは、火災防止対策を加速させ、今年はこれまでに事故件数を4分の1減らしたとしている。
しかし、それでは不十分なようだ。
消費者権利グループ「Codacons」のカルロ・リエンツィ氏は、「数え切れないほどの」火災事故を受け、安全性が確保されないならバスの運行を差し止めるよう検察に求める方針を決めた。
「Codacons」は声明で、「あらゆる観点から緊急と思われるこの事態に対して、我々は黙ってはいられない」と述べている。
ソーシャルメディアでは、ビルジニア・ラッジ・ローマ市長の市政を非難する声も上がっている。
ラッジ市長はポピュリスト政党「五つ星運動」の出身で、2016年に就任。ローマの悪名高い交通機関に加え、長らく投資不足や汚職に蝕まれてきた水道や廃棄物処理サービスの改善を掲げていた。
地元紙ディアリーノ・ロマーノは、ラッジ市長が市の交通問題に真剣に取り組んでいないと報じ、その「2年間の失態」を批判した。
ある左翼運動家は、一連のバス火災を西暦64年に起きたローマ大火になぞらえ、ラッジ市長を当時のネロ皇帝と比較した。
この活動家はツイッターに「ネロですら、ラッジのやっていることはしなかった」と書いている。