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愛知県環境調査センター トピックス 雨と放射線

○愛知県の放射線量

 愛知県では当センターのある名古屋市北区で、1972年から継続して環境放射能の測定を行っています。ここでは、そのうち、大気中の空間放射線量率(ここでは「空間線量」と表現します)と降雨との関係についてご紹介します。

 

○黒い雨

 「黒い雨」というのは、原子爆弾投下後に降る、放射性を持つばいじんなどを含んだ黒っぽい雨のことです。1965年、広島への原爆投下を題材に井伏鱒二が「黒い雨」という題名の小説を書き、1989年、今村昌平監督、田中好子主演により映画化もされました。

 ところで、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響は雨にどう現れたのでしょうか?

 

○原発事故と雨

 次のグラフは、3月12日から31日までの空間線量の変化を示しています。

 赤色の折れ線が、千葉県市原市のデータです。3月15~16日に水素爆発などに起因した放射性物質が北~北東の風に乗って飛来したため空間線量レベルは急上昇していますが、速やかに吹き抜けて線量レベルは一旦低下しています。しかし、21日には再び内陸向きの風向となり、この時は降雨があったので(黒色の棒グラフ)、放射性物質が雨とともに降下し、地面に沈着したため、空間線量レベルは雨があがってもすぐには低下していません。

 一方、青色は愛知県の空間線量を示しています。愛知県でも、21日に降雨があり、線量が上昇していますが、雨があがったあと、すぐに通常レベルにもどっています。これは、線量が上昇した原因が千葉県とは異なるからです。

グラフ

○通常の雨と放射線

 雨の降った時に空間線量が上昇するのは、普段からよく観測される現象で、自然由来の放射線によるものです。

 太古の昔から、地中にはウラン238(238U:半減期45億年)が微量ながら広く存在しており、常に崩壊し続けています。これがラドン222(222Rn:半減期3.8日)になると、気体として空気中に出て行きます。雨は大気中のラドン222を集めて降ってきます。ラドン222は崩壊して、ガンマ線を出す鉛214(214Pb:半減期27分)やビスマス214(214Bi:半減期20分)となります。、そのせいで雨が降ると空間線量は上昇するのです。しかし、鉛214やビスマス214は半減期がとても短いので、すぐに減少してしまい、空間線量は速やかに低下するのです。

しくみ 図

 一方、3月21日頃に関東・東北地方で空間線量が上昇したのは、雨に含まれたセシウム137や134(137Cs:半減期30年、134Cs:半減期2.1年)に起因したと考えられます。放射性セシウムは半減期が長く、崩壊により消失するのには長期間かかるため、空間線量が速やかに低下することはありませんでした。実際には、放射性崩壊によって放射性セシウムの量が減ったというよりは、それらが雨に流されるなどして流出し、空間線量は下がっていったのだと考えられます。(2011年11月時点の千葉県市原市における空間線量は、約40nGy/h)

 

○周辺地域より空間線量の高い箇所

 事故後、原発から100km以上離れた関東地方などで、狭い範囲で周辺より高い空間線量が観測される箇所が見つかっています。これは、放射性セシウムなどを多く含む雨が、降った後、流れ込んだりしみこんだりして貯まっている場所だと考えられます。

 愛知県名古屋市では、千葉県のように降雨後の空間線量の上昇が長期間にわたって続くことはありませんでした。また、下表のように1か月間に降下した放射性セシウムの量も低い値を示しており、放射性セシウムなどを多く含む雨は降らなかったと思われます。

 このように、空間線量の上昇という現象が起こる仕組みを考えると、愛知県ではこうした狭い範囲で周辺より高い空間線量の高い箇所ができる可能性はほとんどないと考えられます。

表

問合せ

愛知県 環境調査センター
電話: 052-910-5489
E-mail: kankyo-c@pref.aichi.lg.jp

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