企業様と取り組みをご一緒していて、いまだにKPI設計には難しさを感じます。
KPI設計は、事業内容やビジネスフェーズによっても、組織やポジションによっても、異なって当然ですし、変化もしますし正解もありません。ある意味「生もの」です。
そのような中でも、KPIに「質の指標」を選ぶか「量の指標」を選ぶかは、意識している視点の一つです。少し紹介してみます。
「質の指標」は効率や割合、「量の指標」は規模やインパクトを評価する
「質の指標」は、割り算で算出される指標です。「○○率」や「%」、「△△あたりの○○」といった表現になります。状況の効率や効果、割合、比率を評価する指標です。
一方「量の指標」は、規模やボリュームを表す件数や数量の指標です。「○○数」や総額金額といったものです。状況の規模やインパクトを評価する指標です。
大まかには次のように割り当てられます。
- マネージャーは「量の指標」を含むが、担当者は「質の指標」軸
- プロジェクトの導入期から成長期にかけては「量の指標」、成長期から成熟期は「質の指標」
- チャレンジや拡大、非連続的成長なら「量の指標」、改善や連続的成長なら「質の指標」
- 「量の指標」は体力が重要。予算やリソース、工数
- 「質の指標」は頭を使う。工夫や調整
もちろん、実際のプロジェクトはこんなに単純ではないので、すべてこうなりませんが、「このプロジェクトはいまどのフェーズで、ゴールはどこを向いているのか」「誰がこのKPIを追うのか」をもとに、指標をピックアップします。
著名な権威の書籍などによれば、KPIは「質の指標」を重視すべきとあります。概ねそう思う一方で、「量の指標」でも良いと感じることもありますし、複数の指標を選ぶ際に「質」と「量」の両方を選んでも構わないと思っています。
「質の指標」の方が、仮に状況が好転してその面倒を見ることをやめても、効果が持続するものが多いです。
いまこのフェーズで一番重要な指標は何か (OMTM)
ただ何より、「いまこのフェーズで一番重要な指標は何か (OMTM: The One Metric That Matters)」を考えたときに、その指標が「質の指標」か「量の指標」かによって、プロジェクトは大きく左右します。
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※上記資料のP73からP82ぐらいまでがOMTMの説明
書籍『Lean Analytics』では、自分たちがいまどのステージにいるのかの理解、自分たちのビジネスモデルの理解、それらをシンプルに考えよ、注力する指標も一つであるべき、と書かれています。
物事は複雑に考えるほど複雑になり、追うべき指標を挙げ始めればいくつも挙げられます。しかし、指標を10個も挙げてしまえば、それはKPIではありません。
極力シンプルに絞り込んで、そして「質の指標」か「量の指標」かを意識することで、KPI設計での大きな選択ミスは減らせるはずです。
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このコラムは、2018年4月23日発行のニュースレター「真摯レター」のコラムを再編集したものです。ニュースレターの購読はこちらから。