「米離脱でもイラン核合意への努力維持」 英が表明
テリーザ・メイ英首相は8日夜、エマニュエル・マクロン仏大統領、アンゲラ・メルケル独首相の両首脳と共同声明を発表し、世界を「より安全な場所」に保ち続けてきたイラン核合意への努力を英国は維持すると述べた。
メイ首相は共同声明で、2015年のイラン核合意から離脱するとのドナルド・トランプ米大統領の決定は残念だとし、3カ国は核合意が「我々の共同安全保障にとって重要であり続ける」と語った。
声明は「我々は全関係者に、イラン核合意実施継続への努力維持と責任感ある行動を要請する」としている。
一方、英労働党はトランプ大統領の「無謀で無分別で不道徳な外交的妨害行為」を非難した。
イランは、米国のほか中国、ロシア、欧州連合(EU)3カ国と締結した核合意を継続するべく努力すると表明している。
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メイ氏とメルケル氏、マクロン氏は8日夜に3者会談を行った。3氏は会談終了後に共同声明を発表し、公式には「包括的共同作業計画(JCPOA)」と呼ばれるイラン核合意を放棄しない方向性を明らかにした。
3首脳は声明で「英仏独3国の政府は核合意の維持を確かなものにするための努力を維持し、残る全当事者と共に、核合意と関係する経済的利益のイラン国民に対する保証を含む合意条件の確保に取り組む」と述べた。
「過去数カ月に及ぶ完璧な米政権との連携に続き、我々は米国に、核合意の主要な構成要素の継続的実行によってJCPOAがもたらした、核不拡散への前進を保つために出来る全てを行うよう要求する」
画期的だった核合意の条件に基づいて、イランは経済制裁の解除と引き換えに核開発の制限に同意した。
しかしトランプ氏は核合意を「欠陥品」と呼び、核爆弾を得ようとするイラン政府の野心を妨害するどころか、「衰えて腐った」核合意のせいでイランが今や核兵器を得る寸前の状態にいると非難した。このため、核合意はむしろ中東の軍備競争をあおることになると、トランプ氏は主張した。
トランプ氏はイラン政府に最高レベルの経済制裁を科す方針を示し、イランの経済制裁回避を助ける国はいずれも罰を受けることになると述べた。
大統領はまた、決断を下す前には英国や他の同盟国、友好国と連携をとったと強調。「イラン核合意からは離脱するが、我々はイランの核の脅威に対する実質的で、包括的で、持続的な解決策を見つけ出すために同盟国と共に取り組む」と話した。
英労働党「影の外相」のエミリー・ソーンベリー氏は、米政府の決定が中東を「より深い破壊、混沌、対立」に押し込める危険にさらしたと述べた。
ソーンベリー氏は「核合意が破棄されれば、未来の前進のためのプラットフォームを破壊するだけでなく、中東における急速な核軍備競争の引き金を引き、イランの強硬派神権政治家による全権掌握の危険高まる。そして、イランとの想像もつかない紛争に突入する危険が高まる」と述べた。
<解説>外交の失敗――ジェイムズ・ランデイル BBC外交担当編集委員
ドナルド・トランプ米大統領によるイラン核合意離脱の決定は、英国と欧州による外交の失敗を表す。英国も欧州も、トランプ大統領に翻意するよう説得することができなかった。
しかしトランプ氏の決定は、核合意の残り部分をいかに保全するかという作業の始まりを意味する。その方がもしかすると、難しい作業になる可能性もある。英仏独の3カ国はいずれも、JCPOAの頭文字で呼ばれるイラン核合意に留まると断言した。
3カ国は核合意を維持するため、残る当事者とも協働すると約束した。重要な問題は、英国と他の欧州各国が、イランで事業展開する自国の銀行や企業を米国の経済制裁から守るための体制や準備がどれほど整っているかだ。
(英語記事 Iran nuclear deal: UK says it remains committed despite US exit)