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zoom RSS 羽川翼はどうして「本物」なのか-猫物語(白)ネタバレ感想

<<   作成日時 : 2010/12/24 01:52   >>

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猫物語(白)つばさタイガーのネタバレ感想です。



◆羽川翼はどうして「本物」なのか◆


猫物語 (白) (講談社BOX)


正直、ここまでの作品が出て来るとは期待していなかった!

この2ヶ月でつばさタイガーを4回読みましたが
毎回毎回ラストは涙で文字が見えなくなります。

この物語はとてもシンプルな王道のストーリーなんですよね。

これまではアイロニカルな物語で
王道展開かと思いきや結局阿良々木くんにオチがついて終わる
そんな話になっていた。
ストレートな感動の物語ではなく
現実と理想の間に折り合いをつける、諦めを含んだ物語。

この猫物語(白)では
これまでの化物語シリーズと違って奇をてらったような展開がなく
羽川が自らの課題をただ真っ直ぐ克服していく姿が描かれている。
(なぜ本作だけが王道なのかについては機会があれば語ります)


‘シンプルな王道のストーリー’と書きましたが
ではどういう物語なのか。


実は、作中の001(p11)で端的に示されています。

‘私が私と向き合って来られなかった大きな理由は、
 私が自分の名前を自分のものとして認識していなかったから
 なのかもしれない。
 ならば私はまず自分の名前を知るべきだ。
 羽川翼を自分として知るべきだ。’

ここの部分を要約すると
羽川翼を自分として知ることで自分と向き合う話
ってことになりますよね。
(この意味については後で考察します)



さて、この物語は主に3つの軸があります。
家族との関係、②友達との関係、③自分との関係。

ろくに会話もせず、調理器具が別々で、自分の部屋さえもらえない
そんな家族関係(①)。

相手から踏み入られるのを嫌がり、図々しくもなれず
どこかで一定の距離を保ってしまう、そんな友達関係(②)。

つらい現実から目を逸らし、最近では嫌なことを自分から切り離す
そんな自分自身(③)。

この3つをそれぞれ克服していくというストーリーになっています。


いま「それぞれ」と言いましたが、この3つの課題って
実は根っこの部分でつながっているんですよね。

家族という最小単位の社会と接続できていない羽川(①)

自分のアイデンティティというものが確立できず
それ以外の社会(友達との関係)にも深くは入り込めない(②)

自分というものが「世界の外側」にいる状態になってしまう
ある種ゲームの世界を見ているような感じになる

そのため現実を直視しないでいることができる(③)

本当は嫉妬もするし悲しくて泣きそうになることもあるはずなのに
そんな自分を切り離すことができる(③)

だから「本物」でいられる倫理や理想だけを語っていられる
阿良々木くんのように現実と理想の狭間で揺れなくて済む
正しいことを迷わず正しいと言い切れる

そうすると今度は、家族と接続できていないことや(①)
友達との関係に深く入り込めないこと(②)を
客観的に見れて割り切って考えることができてしまい
その①②の状態に安定・安住する

こんなスパイラルが出来ているんじゃないかと思うんです。

分かりにくいと思うのでまとめると・・
家族とつながれていないことが原因で
社会(友達)とつながれていない
そのため人間強度が異常に高い
だからこそ「本物」でいられる
そしてその本物ゆえに人間強度の高さが破られない
(羽川の「本物」性は阿良々木くんの好きな人間強度の話が
 もろに当てはまるのです)

羽川はこのスパイラルによって高みに上り詰めていった。
羽川はこのスパイラルによって家族、友達、自分と
上手く関わることができなくなっていった。


羽川がこのスパイラルを抜け出すには
やはり発端である家族との関係を改善することが鍵。

この世界に根っこを張る、その足がかりとなるのが――家族

ぼくは今回の物語の本質がここにあると捉えました。


このことは、先ほどの001によって裏づけられます。

001には、羽川翼を自分として知ることで自分と向き合う話だ
というようなことが書いてありました。

では、「羽川翼を自分として知る」とはどういうことでしょう?

ヒントとなるのは最初のページ(p10)。
‘そもそも羽川翼という名前が既に不安定だ。
 私は幾度か苗字が変わっている。
 だから名前にアイデンティティを求められないのである’
とあります。

苗字が何度か変わっていて、不安定な名前である羽川翼。

苗字とは――家の名前、家族の名前。
これを彼女は自分のものとして認識できていない。

とすると、‘羽川翼を自分として認識できていない’というのは
すなわち、自分が羽川家の一員であると認めてないということ。

翻って羽川翼を自分として知るとは
羽川が家族とのつながりを獲得するということ
です。

かなり説明を簡略にしてしまいましたが
ぼくの言いたいことは伝わってますでしょうか?

結局、001においても、この物語は
羽川が家族とのつながりを獲得することで自分と向き合う話である
と言っているわけです。

羽川がスパイラルを抜け出すには家族との関係を改善することが鍵
というさっきの話と一致しますよね。

これがつばさタイガーのテーマでしょう。


こういった視点から猫物語(白)を再度読まれてみると
面白さが増すんじゃないかなぁと思います。
各章ごとにテーマに関わるようなセリフが散りばめられてます。
テーマを意識して読めばセリフの意味合いがより明瞭になります。

特に、羽川がどういう過程を経てスパイラルから抜け出せたのか
という点に着目して読むと面白いと思います。
(後日、このあたりのことを記事にしようかと思っています)




さて、化物語シリーズセカンドシーズン。

まずは羽川が「普通」になりました。

阿良々木くんに本物と呼ばれ、戦場ヶ原に化物と呼ばれた羽川が
ブラック羽川と苛虎を統合することで
つらいことがあったら子供のように泣くことができる
普通の女の子になりました(本質的には変わらずに)

これはつばさキャットを読んだときから考えていたことですが
化物語シリーズにおいて「キャラ」というものは
トラウマ(そして怪異)とセットになっています。

ベタにベタを重ねたキャラ。

羽川で言えば委員長の中の委員長というキャラ。
眼鏡でおさげでだれにでも公平、「本物」の優等生。
そんな愛すべき彼女の「キャラ設定」は
彼女のトラウマから生まれたもの

そのキャラ設定が物語を経るごとに
だんだんと(その本質は変わらずに)崩れていきます。

羽川の場合、つばさキャットで眼鏡とおさげがなくなりました。
そして、つばさタイガーの最後で「本物」の部分が
良い意味で変容しました。

おそらくこの先のセカンドシーズン
他のキャラも「キャラ設定」が「普通」になっていくのでは
ないでしょうか。
(戦場ヶ原はすでに「普通」になっているようなので
 ひたぎエンドはどうなるか分かりませんが)

明日は、傾物語まよいキョンシーの発売日です(よね?)。

いま書いた法則から結末を予想すると
1 八九寺が消滅(成仏)する
2 八九寺が他の人にも見えるようになる
のどちらかというところですかね。

いまの浮遊霊という状態が解消されるのストーリーなのか
それとも特定の人としかコミュニケーションできないという
状態が解消されるストーリーなのか。

1と見せかけておいて最終的に2、と言う展開が理想だなぁ。

さすがに猫物語(白)ほどのクオリティの高い物語を
さらに繰り出してくるってことは無いと思いますが
なにげに一番不幸なヒロインであるところの八九寺の物語は
かなり期待していいんじゃないかと思っています。

明日ゲットできるかなー。

~羽川翼はどうして「本物」なのか~




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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
お久しぶり?です!!
Mr.Kidsです~。

今回もレベルの高い考察ありがとうございます!!

>この物語はとてもシンプルな王道のストーリーなんですよね

確かに、今までの化物語シリーズと比べるととてもわかりやすい物語だと思ったし、腑に落ちないことがなかったです。キャラの中で一番まとも(正しすぎる)羽川さんの目線で語られているというのも大きいかもしれません。
そこら辺が猫物語 白の高評価につながったのだと思います(評価の低い偽物語も個人的には大好きなのですがw)。

>そのため人間強度が異常に高い
だからこそ「本物」でいられる

この巻で彼女の人間強度が高い原因(とゆうか所以)がわかりました。
そこで考え直してみると、「阿良々木くんは薄くて弱い」という言葉は「人間強度が異常に高い」羽川さんだから出た言葉ではないでしょうか??(まあ単に阿良々木くんに意地悪がしたかったという人間的な感情なのかもしれませんが・・・・)

僕が腑に落ちなかった一つとして阿良々木くんは別に「薄くて弱い」とは思えないんです。
阿良々木くん視点で物語は進み、彼は自虐的な表現が好きだからそのように見えてしまうだけで。
実際、ファイヤーシスターズや神原にはめちゃめちゃ慕われているじゃないですか。
Mr.Kids
2010/12/26 01:15
続き

まあそんな事どうでもよくなるくらいに(阿良々木くんご(ry)この物語は感動しますよねぇ・・・・・


特に、羽川さんのブラック羽川への置手紙と、P249~250の「頼まれようと~泣きそうじゃにゃいか。」などのブラック羽川の思いがたまらなく心に染みました。

「重いだけのはずの肩の荷が。どうしてこんにゃに心地よい?」

「帰る家があるというだけのことで、何故こんにゃに、にゃんでもできそうにゃ気持ちににゃるんだ。」


この後のP268の「ご主人からお願いされたんだ」を二回言ったところで涙がジワーっとにじんできましたよ・・・・。

オチも本当に綺麗で、正直、西尾先生へのハードルが上がってしまって、セカンドシーズンが若干不安なのですが、変わらずに楽しませてくれると信じています。

なので、神場さんも西尾先生に負けじと化物語シリーズの考察頑張ってください。

長文&駄文失礼しました。
Mr.Kids
2010/12/26 01:17
Mr.Kidsさん、お返事遅れてすみません!

>ブラック羽川の思いがたまらなく心に染みました。
羽川が意地悪で言ったというのはきっとそうなんでしょうね。それに、阿良々木くんの行動はかっこいいです。あれだけ人のために行動できてるのにけなされてしまうのは可哀想です。
一方で、阿良々木くんが薄くて弱いというのもある角度から見ると納得できるものであり、また物語のテーマにも直結する部分だと思っています。コメント欄では中身を書ききれなかったので記事にしてみました。傾物語の感想の「2」のところです。よかったら読んでみてください。

>ブラック羽川の思いがたまらなく心に染みました。
ですよね。「そこまで描くか!」と驚きました。まさにMr.Kidsさんの挙げられたセリフが心に直撃しました!

>セカンドシーズンが若干不安
そうなんですよね。3ヶ月ペースで刊行してあのレベルの物語は作れないだろうなーと思っちゃいますね。個人的にはゆっくりでもいいからクオリティを上げてもらいたいです。
傾物語を読む限り、かなり質の高いものを提供してくれそうですね!

>西尾先生に負けじと・・・
ハードル上がりすぎです(笑)
でも、化物語シリーズの考察はなかなかハードなので、励ましの言葉大変ありがたいです。
神場@管理人
2010/12/31 13:20
最近気づいたんですけど
猫物語(黒)で話された
「障り猫」の話って本当に羽川とかぶってるんですよね

猫物語(黒)でのブラック羽川は、
ほとんどが羽川の意識だったのに
あんなに感情的に行動していたじゃないですか。
あれは羽川が自分の記憶を背負っていて、
なおかつブラック羽川と羽川自身を
うまく分け切れていなかったからと言えますよね

そしてゴールデンウィークのその後は
つばさキャットなどを通して
徐々に人間らしい、本来あるべき姿に
成長、もとい退化していったわけですよ。

そして最後に、猫物語(白)で羽川は
完璧で無傷であることよりも、
不完全で傷つく人間らしくあることを求めて、
自分の記憶を背負い続ける事をきめたんです。
そして羽川は「本当の羽川翼」になった訳じゃないですか。
でも羽川は「記憶を背負う」というのを
ゴールデンウィークのときにやっていましたよね。

そう、ゴールデンウィークの羽川は、
ある意味、「本当の羽川翼」だったんですよね
大根
2012/02/10 19:03
大根さん、こんにちは!

まず、怪異に憑かれたから人を襲うようになったのではなく、羽川自身の気持ちから人を襲っていたのだった、というのが、作中で明確に語られている‘障り猫のエピソード’との共通点ですよね。
大根さんの考えは、ここからさらに進んで、GWのときの羽川が無意識ではなく意識的だった。その意味でも‘触り猫のエピソード’との共通点だ、ということでしょうか。

羽川が記憶を背負っていたんでしたっけ??
都合の悪い記憶はブラック羽川が引き受けていたという記述があったような気がするんですが、最後に猫黒を読んだのがだいぶ前なので、ちょっと忘れてしまいました。

ぼくの理解では、羽川は無意識であったものの、ブラック羽川の行動は羽川の意志に基づくものだった、といったところです。

神場@管理人
2012/02/16 00:33
お久しぶりです。
僕が思うには、GWの羽川は全部
意識的に行動してたんじゃないか、と思うんですよ。
だからこその、あの「ごめんなさい」なのかなって。

障り猫が離れてから、障り猫を取り込むまでの行動は忍野の言ってたように、普段抑えられてたものがなくなったから、つい…、というのが大きくて、
ブラック羽川になってからは、今までの嫌な記憶を全部思い出して、正しさとかどうでもいいや…、になったんじゃないかなと思ってます。
羽川はという人間は、”忘れる”事以外は
ただの、両親から虐待に似たものを受けてきた女子高生なんだから、道を踏み外す事もあると思うんです。
そして、羽川は猫物語(黒)から猫物語(白)までで
自分の記憶と向き合えるだけ成長したんではないでしょうか。阿良々木暦率いる阿良々木ハーレムとの関わりで。
まあ、すくなくとも後々に出てくるブラック羽川には羽川の無意識が関わっているはずだから、根拠の薄い意見なんですけどね(^^;)

話は変わりますが、そろそろファイナルシーズンですね。神場さんの感想は、新刊が出るときの楽しみの一つなので、余裕が出来たら、書いてくれると嬉しいです。応援してます!!!!!
大根
2012/09/13 00:52
大根さん、お久しぶりです!

記憶がもう壊滅状態です。。
羽川の意識とブラック羽川の関係は、この作品中屈指の難しい論点なので、あらためて読み直して検証しないと意見がなにも言えないです。申し訳ない。

ついにファイナルシーズン開始ですね。
このシリーズの感想をいまの忙しさの中で書けるのかかなり不安ですが、できれば書きたいです。

神場@管理人
2012/09/16 02:44
すばらしい
なた
2014/11/06 19:53
なたさん、ありがとうございます!

神場@管理人
2014/11/10 23:41
はじめまして。
物凄く今更ですが、まよいキョンシーの予測1と2両方とが物凄く的中していたので物凄く感動したのでコメントしてみました。
たじ
2015/07/21 10:25

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