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猫物語の超ネタバレ感想その2です。 先に断っておきますと、その1に比べると 当たり前のことを書いてるだけになっているかもしれません。 あと、今回はネットで見かけた「おや?」と思った感想に 反論する形をとっていますので そういった文章に不快感を覚える方は気をつけてください。 ◆猫物語-超ネタバレ感想(2)◆ 4 「僕は下着姿の猫耳女子高生に、欲情してるだけなんだよ」 前々回、一番かっこいいセリフはこれだと書いたことに関して 蛇足かもしれませんが説明します。 011のラスト(259ページ)。 阿良々木くんは忍野に対して 「僕はただ――欲求不満を解消したいだけなんだ」(中略) 「僕は下着姿の猫耳女子高生に、欲情してるだけなんだよ」 と言い切ります。 ここがかっこいい理由について書いていこうと思うですが その前提として最初のギャグパート。 (ギャグパートが無駄に長いという批判が多いですが この部分にも結構伏線があります) ギャグパートのところで阿良々木くんの羽川に対して募る想いは 月火ちゃんによって、欲求不満・リビドー・性欲だ! と断定され、阿良々木くんもこれに納得します。 そのせいで、以降、羽川に対する想いは純粋な想いも含めて すべて性的な言葉に置き換えられていくことになります。 このことを念頭に読むと阿良々木くんの気持ちは分かりやすい。 010のラスト(245ページ)で 阿良々木くんは自らの心境を ‘僕の羽川への想いは、募り過ぎて―― もうとっくに恋を越えていた(中略) 「だって僕は、羽川のために死にたいって思ってるんだもん」’ と語りますが、その後自らこの想いを次のように評価します。 011(249ページ) ‘羽川が基づいていた戒律のように、友達のためなら死ぬことができるなんて、そんな大それた気持ちに殉じることは、僕には出来ないんだ。 僕はあくまで。 羽川のために死にたいという、そんな手前勝手な欲望を胸に抱いているだけなんだ――僕は。 僕は欲求不満なのだ’ さらにさきほどの011のラストの部分。 「委員長ちゃんに対して――阿良々木くんは同情しているのかい?」 という忍野の問いに対して「ちげーよ」と否定した後 「僕はただ――欲求不満を解消したいだけなんだ」(中略) 「僕は下着姿の猫耳女子高生に、欲情してるだけなんだよ」 と言い切ります。 阿良々木くんの言っている性的な言葉は純粋な想いに 読み替えてください。 そして阿良々木くんが011のラストで何が言いたいか こうやって切り取ってみるとハッキリしますよね。 阿良々木くんの言いたいのは、つまりこういうことです。 自分は友達なんだから命を懸けてでも助けなきゃなんて そんな高尚なんてことを言うつもりはないし 同情なんていう美しい感情で行動を起こすわけでもない。 ただ単に、僕は羽川を命を懸けて救いたい!! それだけなんだ。 それが欲望なんだと。 ただただ欲情(イコール愛)から行動を起こそうとしているんです。 「助けなきゃ」なんて義務的な気持ちは一分も入っていない 純粋な100%混じりっけなしの「助けたい」という気持ち。 この気持ちをもって阿良々木くんは欲求不満・欲情だと言ったわけですから これ以上ないかっこいいセリフじゃないですか。 「偽善者」でありながら偽悪的に振舞いたがる 阿良々木くんらしいセリフです。 011のラストが熱いのはこれだけではありません。 猫物語の構造として面白く、そして熱いのが 誰でも助けるので有名な(?)阿良々木くんが この場面では「羽川を」助けたいと言っていることなんですよね。 『化物語』で出てくる他4人のヒロインに関しては あくまで「困っているから」助けた。 のちに恋人になる戦場ヶ原ですらそうです。 困ってるから、助けた。 でも、羽川に関しては「羽川だから」助けた。 「助けたい」から助けた。 もちろん羽川が困っていたという部分はあれど 「自分」が「羽川」を助けたかった。 阿良々木くんの羽川への思いこれほどまでに強く描かれています。 011ラスト、まだ熱いところがあります。 上ですでに引用した部分。 「委員長ちゃんに対して――阿良々木くんは同情しているのかい?」 という忍野の問いに対して阿良々木くんは「ちげーよ」と否定。 そして、012で阿良々木くんの策略にひっかかった羽川と しゃべっているところでも(270ページ) 「阿良々木くんは、私に同情してくれないの?」 「しねーよ」 阿良々木くんは徹底して同情をしないと言っているのですが これはどうしてか。 答えは簡単で、自分が‘そう’されて嬉しかったから。 根拠は猫物語の286ページ。 (偽物語(上)の224ページにもちらっと出てきます) 阿良々木くんが傷物語において吸血鬼になったとき 羽川は阿良々木くんを甘やかしはしたものの 同情だけは一切しなかった。 これが阿良々木くんにとってはとても嬉しかったんですね。 なぜって、同情するってことは見下すことにつながるから。 吸血鬼になってしまった阿良々木くんを同情しなかったということは 阿良々木くんのありのままを受け入れて あくまで対等な立場で触れ合ったということなんですね。 (これは偽物語(下)で阿良々木くんが影縫余弦に 一目置いている点も共通) だからこそ阿良々木くんは 化物になってしまった羽川に対して決して同情しなかった。 阿良々木くんもありのままの羽川を受け入れて 対等な立場で触れ合ったということです。 以上のように011のラスト数行には 阿良々木くんの熱い思いが凝縮されているのです。 5 羽川の責任 忍野は、羽川の両親を非難しつつも、両親が歪んだのはそもそも 羽川が正しすぎることに原因があると指摘します。 「委員長ちゃんのせいだよ。槍玉に挙げられるべきは彼女一人だ。」 (258ページ) たしかにこの構造は面白いです。 絶対的な被害者だと思われていた羽川が 実は(無意識的にせよ)絶対的な加害者だという構造。 羽川に責任があるとする忍野の理屈、それは 強者は自らの影響力に自覚的でないといけないのに 羽川は普通の女の子という幻想に縛られて 自らの影響力についてあまりに無自覚だったから悪いのだ! というものです。 ‘被害者っぽいけど純粋な被害者じゃない人’に厳しい 実に忍野らしい理屈です。 でも、読者はこれに素直に頷いちゃまずいと思うんですよね。 ‘結局、羽川が悪いんだよね’ ‘あのあたりで羽川に幻滅した’ って真面目に書いている感想をみると ちょっと危険だなーと思ってしまいます。 (以下、ラノベに真面目に反論するというKYなことをしますね) だって考えてみてください。 まず、忍野の理屈、すなわち、羽川の両親擁護論をまとめると ――羽川は父親にタコ殴りにされ、母親はそれを黙認していた。 両親は悪いがそもそも両親が歪んだのは羽川が正しすぎるからだ。 強くて正しすぎる人間はそれを自覚して振舞わないといけない。 だから、責任は羽川にある―― とまぁ、こんな感じですね。 この理屈は、殴った側が例えば同級生であれば 一応通用する理屈(屁理屈)であると思うんですよ。 羽川が正しすぎるがために そのそばにいた同級生が自分の誤りを意識させ続けられ その結果歪んでしまい羽川のことを殴るに至った、というケース。 このケースならなんとかギリギリ同級生を擁護できなくもない。 でもですよ、ここは親と子の関係です。 羽川はいつから「強者」(正しすぎる人間)だったんでしょうか。 少なくとも、「つばさ」という漢字が書けない頃から 強者だったってことはないですよね。 だったら両親は羽川がただの子供から 強者になっていく過程を見ているわけです。 そのときに一度でも「正論は人を傷つけることもある」と しっかり教えれば聡い羽川は自らスキを作ることもしたでしょう。 「正しすぎるお前と一緒に生活するのはつらい」という愚痴でも 羽川は自ら気付くことができたでしょう。 道義的にも法律的にも羽川を監護する立場にある両親が こんな簡単な努力すら怠っているのに 娘のせいで歪み、結果として娘を殴るに至ったって 言ってるわけですよ(実際に言っているのは忍野ですが) いわゆる「弱者の傲慢」もいいとこです。 忍野の理屈のうち 強者は自らの影響力に自覚的でないといけない、という部分は 同意の余地が大いにあります。 ただ、その先の理屈は羽川に厳しすぎるといえるでしょう。 物語としては「被害者が加害者」って構造を楽しむのが読み方として 正しいと思いますが、真面目に考察するのであれば 「忍野って中立を気取ってるけど羽川に厳しすぎ」 って感覚を持つのが公平なんじゃないかなーと思います。 ぼくの中では羽川はやはり愛すべきキャラです。 6 阿良々木くんの想い、羽川の想い ・阿良々木くんの想い 阿良々木くんが羽川と付き合わなかった理由はなんでしょうか? この点について ‘猫物語読んで阿良々木くんが羽川を選ばなかった理由が分かった。 羽川は怖すぎる。殴られて笑ってたしなめるとか異常’ ‘羽川のことを同属嫌悪したから恋愛対象じゃなくなったんだ’ といった感想を見かけました。 阿良々木くんが羽川と付き合わなかった理由は 羽川が怖いからでも嫌いだからでもないですよね? つばさキャットにおいて ブラック羽川から羽川の想いを伝えられた阿良々木くんが 「母の日以前なら、多分、応えたと思うよ」(376ページ) と言っていますから。 阿良々木くんが羽川と付き合わなかった理由は 阿良々木くんが失恋したからです。 最終ページのラストの1行前。 ‘阿良々木暦の初恋ではない何かは、失恋した。’ とあります。 ‘初恋ではない何か’って言ってるけど これは紛れもなく恋、というか愛。 恋になるかならないかの段階から一足飛びに愛に発展し そして、勝手に失恋した。 阿良々木くんにとっては、羽川が窮地に立たされているときに 自分に助けを求めてくれなかったことで 気持ちに区切りがついてしまったのだと思います。 ・羽川の想い アニメの方のつばさキャットOP曲『SUGAR SWEET NIGHTMARE』 前に聞いたときはメロディも歌詞も 微妙に羽川の想いからずれている気がして ピンと来なかったんですが 猫物語を読んで(あと、前に紹介したネットラジオを聞いて)から あらためて聞き直したら羽川の気持ちにドンピシャな曲だと実感。 あまりにドンピシャでゾクッとしました。 ぜひ(聞いたことある人はもう1回)聞いてみてください。 >YouTube 感想は以上です。 あと、しつこく宣伝してますが 前から紹介しているネットラジオ(の録音)みなさん聞きました?? 何十分も聞くの面倒かもしれませんけど 化物語シリーズの理解が数倍深くなりますよ。 ぼくの記事なんか足元にも及ばないくらいレベル高いことを 噛み砕いて分かりやすく説明してる音声データです。 特に羽川ファンの方は絶対に聞いた方がいいです。 (猫物語のお供に) ↑ネットラジオの紹介記事を書いてます。 ラジオ自体はぼくとは全くかかわりのない方がやられています。 ~猫物語-超ネタバレ感想(2)~ ←前の記事:猫物語-超ネタバレ感想(1) 次の記事:猫物語のお供に→ 当ブログの化物語シリーズのほかの記事 ⇒[化物語シリーズ感想記事一覧] トップページへ |
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フェラガモ アウトレット
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フェラガモ アウトレット 2013/07/03 09:55 |
VISVIM サンダル
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VISVIM サンダル 2013/07/10 05:53 |
内 容 | ニックネーム/日時 |
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今更ながら猫物語 黒を読み、「阿良々木くんが羽川と付き合わなかった理由」がどうしてもわからなくて、様々なブログを読んだのですが、ピンとくる答えがなくて、このブログにたどり着きました。 |
Mr.Kids 2010/12/14 03:40 |
Mr.Kidsさん、はじめまして! |
神場@管理人 2010/12/15 01:06 |
化物語関連のブログ記事を一通り読ませていただきました。 |
ありんこ 2011/01/22 12:42 |
ありんこさん、はじめまして! |
神場@管理人 2011/01/24 00:29 |
レスありがとうございます! |
ありんこ 2011/01/28 03:04 |
ありんこさん、こんにちは! |
神場@管理人 2011/01/29 23:40 |
ブログ読ませていただきました。 |
颯爽登場 2011/02/20 14:06 |
颯爽登場さん、はじめまして! |
神場@管理人 2011/02/22 00:14 |
|
さ 2013/01/01 02:01 |
ささん、はじめまして! |
神場@管理人 2013/01/01 13:26 |
忍野が羽川に厳しいのは、 |
そら 2013/05/31 15:49 |
そらさん、こんにちは! |
神場@管理人 2013/06/04 01:29 |
考察、とても面白いです。物語シリーズを読み返す時のポイントとして、使わせてもらってます。 |
ササクベ 2013/06/29 23:33 |
ササクベさん、はじめまして! |
神場@管理人 2013/07/04 01:54 |
はじめまして、夏休みだったんで化物語シリーズのアニメを初見で見てます。 |
ペペロンチーノは猥語です 2013/08/14 16:49 |
で、羽川翼も偽善だとありますが、偽善ではないんじゃないですか。 |
ペペロンチーノは猥語です 2013/08/14 16:50 |
ペペロンチーノは猥語ですさん、はじめまして! |
神場@管理人 2013/08/26 00:27 |
初めまして。 |
旧バファローズファン 2014/01/07 22:55 |
(コメント続き) |
旧バファローズファン 2014/01/07 22:56 |
(コメント続き) |
旧バファローズファン 2014/01/07 22:58 |
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