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 「5月3日にヘアカットの予約をできますか」「何時がいいですか?」「12時は?」「12時は空いていませんが、近い時間なら1時15分が空いています」「10時から12時までの間は?」――。電話で店員と自然な会話をして、ユーザーに代わって予約をする。米グーグルは2018年5月8日(米国時間)、開発者会議「Google I/O」を開催し、会話AI(人工知能)の「Google Duplex」など最新のAIを相次ぎ発表した。

 Google Duplexは、「Googleアシスタント」などでも使われている合成音声がレストランや美容院に実際に電話をかけて、店員と会話をしてサービスの予約をする会話AIだ。Google I/Oの基調講演では、実際にAIが店舗に電話をかけた際の音声を披露。ユーザーから「火曜日(5月3日)の午前10時から12時までの間に、ヘアカットの予約をして」と依頼されたAIは、美容院に電話をして、店員と以下のようなやりとりをした。

店員:どうされましたか?
AI:もしもし。私のクライアントが、女性向けヘアカットを希望しています。5月3日に予約できますか。
店員:何時がいいですか?
AI:12時は?
店員:12時は空いていませんが、近い時間なら1時15分が空いています。
AI:10時から12時までの間は?
店員:サービスの内容によりますね。
AI:女性向けのヘアカットだけです。
店員:分かりました。それなら10時はどうでしょう?
AI:午前10時でお願いします。
店員:分かりました。それではお客様の名前を教えてください。
AI:リサです。
店員:パーフェクトです。それではリサさんで、5月3日午前10時に予約を承りました。
AI:OK、ありがとう。

 AIは定型文を話すのではなく、店員の話した内容に応じて反応を変化させる「会話」をしていることが分かる。レストランの予約では、もっと複雑な会話をした。

AI:水曜日、7日(5月7日)にテーブルを予約したいのですが。
店員:7人ですか?
AI:4人です。
店員:4人ですね。何時ですか?今日ですか。今夜ですか?
AI:水曜日の午後6時です。
店員:実は当店は、5人以上であれば予約を受け付けています。4人でしたらお店に直接来てください。
AI:席に案内されるまで、普段ならどれぐらい待ちますか?
店員:明日ですか?週末ですか?
AI:来週の水曜日、7日です。
店員:その日でしたら混んでいません。4人でお店にお越しください。かまいませんか?
AI:分かりました、ありがとう。

 レストランの予約はできなかったが、予約が不要であるということまでAIは店員から聞き出している。AIが非常に高度な文脈理解力を備えていることがうかがえる。

 Google Duplexを発表したグーグルのスンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEO(最高経営責任者)は「規模の小さい個人経営の店舗にとって、予約システムの導入は依然として難しい」と指摘。店舗側が予約システムを導入しなくてもAI側で対応することで、ユーザーは電話不要の予約が可能になるとのビジョンを示した。グーグルは2018年夏からGoogle Duplexの評価版によるテストを開始する予定。同技術はGoogleアシスタントに搭載される。

写真●グーグルのスンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEO(最高経営責任者)
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