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携帯電話業界で再び基地局のロケーションを巡る動きが活発になってきた。NTTドコモはマンホール内から電波を吹く基地局という奇策を打ち出した。自営での新規参入が決まった楽天は東京電力パワーグリッド(東電PG)など電力大手各社と組んで全国のエリアを一挙に押さえる作戦を進めている。
耐荷重25トンで電力も透過するマンホールのフタを開発
「動画の視聴ニーズに応えようとアンテナを密に設置したくても、基地局のアンテナを建物の屋上に設置する手法では苦慮するようになっていた」
NTTドコモ 無線アクセスネットワーク部の安藤潤担当課長がマンホール基地局の開発を始めたのは2016年。背景にあったのは、都心部は既に多くのビルの屋上にアンテナが設置され、建物の強度や景観などの面で新設の余地がほとんどなくなっているという厳しい現実だ。
新たな設置場所をいくつか模索するなかで浮上したのが「上がダメなら下から電波を吹けないか」というアイデアだ。一般にはあまりなじみがないものの、同社はバックホール回線の敷設用にマンホールを設置・保有しており、ノウハウは持っているのだ。
同社が保有する複数の周波数帯のうち、音声通話にも使われる基幹バンドの800MHz帯や2GHz帯は、半径数百メートル~数キロメートルのいわゆるマクロセルで全国をカバーしている。マンホール基地局は、利用者が多い都心部や観光地などでこうした基幹バンドを補う「容量バンド」と呼ばれる1.5GHz帯で、半径数十メートル~数百メートルのいわゆるマイクロセルとして設置する方向で検討を始めた。
もちろん新たな試みだけに、技術面で複数のハードルがあった。具体的には、(1)電波を通す材質でありつつ上に重い自動車などが乗っても耐えられるフタの開発(2)至近距離でも人体に影響が出ないようにしつつ周辺の広いエリアをカバーできる出力とアンテナの配置――などである。
フタの開発では、重さ25トンに耐えられることを条件とした。国土交通省が高速道路や幹線道路などを対象に指定する「重さ指定道路」では、消防車や特殊車両など総重量25トンの車両の通行を想定している。現時点ではマンホール基地局の設置場所は私有地を想定しているが、仮にこうした重さ指定道路に設置する場合にも支障がないよう考慮した。