「はじまるよ!本のカーニバル」をキャッチフレーズにスタートした60回目のこどもの読書週間。12日までの期間中、地域の公共図書館を中心に、お薦め本の紹介や読み聞かせ会など、読書の楽しさを伝えるイベントが繰り広げられる。

 ページをめくるたびのドキドキやワクワクは、カーニバルにも負けない読書の醍醐味(だいごみ)だが、叫ばれているのは若者の「本離れ」だ。

 文部科学省によると、1カ月に1冊も本を読まない子どもの不読率は、昨年度、小学生で5・6%、中学生で15・0%、高校生で50・4%だった。

 小中学生は中長期的に改善傾向にあるものの、それでも目標とする数値には届いていない。高校生にいたっては2人に1人という高止まり状態が続く。

 本離れは大学でも歯止めがかからず、全国大学生協連が先日発表した学生生活実態調査で、「1日の読書時間ゼロ」が53%に上った。

 小中高大と進むにつれ、読む力はアップしていくはずなのに、逆に本から遠ざかってしまうのはなぜなのか。

 指摘されるのは、高校・大学までに基本的な読書習慣が身に付いていないことである。受験勉強のため習慣が途切れてしまうことも要因の一つといわれる。  

 毎朝始業前の10分ほどの「朝の読書運動」が小学校で盛んで、成果を挙げている。しかし中学、高校へとつなぐ指導は必ずしも十分ではない。

 鍵は読書習慣を定着させる切れ目のない取り組みだ。

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 スマートフォンなどインターネットの利用が、子どもの読書活動に影響を与えているのでは、との懸念がある。

 内閣府の調査によると、中学生のネット利用は1日およそ2時間半、高校生では3時間半にも及ぶ。

 よほど上手にやりくりしないかぎり、読書に振り分ける時間を確保するのは難しそうだ。

 もちろん電子書籍に慣れ親しむ世代である。読書の楽しみ方は多様化しているのかもしれない。

 ただ子どもを取り巻く情報環境の変化が、読書習慣や読書による自己形成にどのような影響を及ぼしているのか、実態を把握する必要がある。

 本棚のない家庭で育つなど子どもの「読書格差」の問題も気になるところだ。経済的困難が文化的不利につながっているとしたら、子どもの貧困という視点からのアプローチも求められる。

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 児童文学者の吉野源三郎原作の「漫画 君たちはどう生きるか」が大ベストセラーになっている。約80年前に書かれた名著が、現代の若者の心を捉えているのは、生き方の指針となる言葉に出合えるからだという。

 2001年に成立した子どもの読書活動推進法は、読書を「人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」と位置付ける。

 本を読み、考え、行動する。

 生き方が変わるかもしれない体験、してみませんか。